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漫画家「なかせよしみ」がちょっとまとまった文章を公開するためのブログ

「創作同人2021年11月」レビュー

2021年11月3日に第17回目の創作同人電子書籍いっせい配信企画「創作同人2021年7月」に今回は現時点で16名の作家さん&編者さんによる24書籍がエントリーしました。 

togetter.com

私と砂虫さんの本を発行している「まるかふぇ電書」からの今回「いっせい配信」のエントリー作品はこちらでした。

吾妻こはるの日常2 こねこをひろっただけなのに 竜の飼い方教えます20
画像クリックでサンプルページが見られます

今回も他の作家さんによるエントリー本の紹介文とレビューを書いてみたいと思います。

2021/11/04

<紹介>

「ほう カフェをはじめるのか」
古本屋内で開かずの間になっていた部屋で見つかったコーヒーのパーコレーター。店先で試しにコーヒーを煎れてみると常連客が声をかけてきた。

AR(拡張現実技術)が発展した2064年に廻道巡くん(まわりみちめぐる)が高校卒業の3月から美大入学の9月までの「モラトリアム期間」を古い伝統が残る町「魔都継橋(まとつぎばし)」の古本屋でバイトしながら過ごし、様々な人たちと巡り会う。

漫画の手帖事務局より発行の「漫画の手帖特丸」にて2012年ごろより連載の6ページ読み切りシリーズの16話〜20話、および書き下ろしの20.5話および各話の解説を収録。 2021年9月20日コミティア137にて発行の自主出版誌を電子書籍化。

<なかせ評>

先進的なガジェットと昔の遺産を受け継ぐ町、そして「拡張現実めがね」を掛けた全登場人物が共有するAR情報が入り混じった近未来風景の中で日常的な物語が繰り広げられる。作者のユニークな画風とあいまって独特で完成度の高いフュージョンに仕上がってます。
物語は主人公の男の子がいろんな女の子と知り合って好かれる、いわゆる「ハーレム展開」だが、それぞれの女の子個性的で生き生きとしているので嫌味がない。

<蛇足>

古いARが一方向からしか見えなかったり、どこから見ても同じ面しか見えないARを作れたりするのが面白い。(漫画的表現としての古いARの見せ方もよかった)

デーツ(ナツメ)って中華街でよく見かけるけど、あんまり皆んな知らないものなの?

見開き状態でページを繰っていくと、いきなり現れる66-67pの見開き大画面に心を打たれる。反面40−41pの見開きは真ん中にコマ枠の太い柱が入ってちょっと残念な印象が残りました。 34& 36pの各話解説では34pの話内の絵を用いているが、同じ絵が色違いで同じ位置に(多分偶然)配置されていて、ページを繰っていくと「お!?」と目を引きました。こういうページの使い方を意識的に増やすと電子書籍の面白さが増すように思います。

対象年齢層のレーティングが違う「湯気増量版=全年齢向け」と「湯気薄版=15禁」の2種類が発行されていましたが、なるべくBOOK☆WALKERで買いたかった私は全年齢向けの方を方を選びました。

「魔都継橋4 雨中の沙漠」

 

2021/11/05

<紹介>

「兄さん…本当に戦うつもりなのかい?」 いつかジワゾス帝国が地球に迫る時に戦う予定の「ビッグ・チャレンジャー」。その巨大ロボットは搭乗予定の乗鞍一家の家に7年前から置かれていた。次男の乗鞍駆(14歳)は時を経て戦うことに疑問を呈するようになるが…。

父母兄弟妹の家族5人が地球を守るために戦う。戦隊ヒーロー・アクション漫画のシリーズ第1話。電子書籍描き下ろしオリジナル作品。

<なかせ評>

ヒューマンサイズの敵に変身戦隊ヒーローが直接戦い、敵が巨大化するとロボットに搭乗して戦う「ニチアサ特撮戦隊もの」を踏襲した展開。調べてみたら本作はどうやら作者が4年もかけて制作、漫画としては「はじめて一般読者の目に触れる形で公開する漫画」である模様。作者が特撮ヒーローに向ける愛の深さを伺えます。

<蛇足>

敵がやられるシーンはコメディ調なので、作品全体の狙いがシリアスな特撮戦隊ストーリー描写なのか、あるいは特撮ものに根ざしたギャグなのか判別に悩みます。シリアスだとするなら銃や剣で敵の戦闘員を容赦無くなぎ倒す一家(年齢50〜13歳)の存在はなかなか物騒です。

父の乗鞍斬馬は白衣姿だが、巨大ロボは彼1人で制作したものなのか?
次男駆は7歳、妹あぶみは6歳という幼い時期からロボの搭乗員としてカウントされていたのか?
7年間の待機の間に長男は鍛錬励む一方で、次男は戦いに疑問を持ち始めるが、その差はなぜ生じたのか?
普段は普通に暮らしている一家のようだが、巨大ロボットを保管できるということはどんな家に住んでいるのか?
…細かいところにいろいろ疑問をはさんでしまいます。

「爆烈戦隊チャレンジャーズ」

 

2021/11/06

<紹介>
「どうか…泊めてください!」
スプリング・フィールド島の星祭の夜に夢で死んだ人に遭えるとの伝説がある。ホテルマグノーリアはその伝説が本当になる場所だった。

心優しい女主人メリッサの一夜をホテルの「看板猫」の視点で描く。 スプリング・フィールド島のに住む魔女と竜のコメディシリーズファンタジーのスピンオフ読み切り短編。

2021年9月21日のCOIMITIA137にてUMIN'S CLUBより発行の自主出版誌を電子書籍化。

<なかせ評>

シリーズの他の巻で星祭や夢見草のジャムについて読めば更に奥深い物語に感じられそうそうですが、他の巻を未読で、この一作を単体で読んで十分にほっこりできます。まとまりがよく、完成度の高いお話。

<蛇足>

夜半に訪れた小さな女性客の様相がとてもいじらしい。 メリッサはとても心優しいが、そうでなくてみこの来客にはほだされ、その要望を無下には断れないと思う。

「ホテルマグノーリアの黒猫」

 

2021/11/07

<紹介>

「ところでお客さん 幽霊って信じますか?」
雨の中で女性客を乗せたタクシーの運転手。 行き先は青山墓地と指示されるが…。
各話4〜6ページの短編怪談漫画オムニバス。

1998年〜2000年にかけて大学漫画研究会の会誌に掲載された13編に描き下ろしの1編を加えて構成。
2021年9月20日のCOMITIA137にて電脳吟遊館より発行の冊子を電子書籍化。

<なかせ評>

よく知られている怪談設定でミスデレクションした上で意外性のある結末やオチに流れるように導く展開の連続が読んでてクセになります。
主に大学時代に描かれた作品とのことで、徐々に派手な「アクション」や「見せ絵」そして、ほとんど何もしない「ヒーロー」などが加わり、現在の同作者の「野良之介」シリーズに通じる作風が確立する過程が伺えます。
漫画を描く上で作者さんが元来から何を目指し、何を獲得してきたかを見ることができて興味深いです。

<蛇足>

「満月の夜の惨劇」では状況説明の描写の「やっつけ感」がすごい。ただ、ここまでのスピード感を出すにはこの描写はむしろ「正解」のようにも思えます。

てらてら - Teller of Terror -」

 

2021/11/08

<紹介>

「でも伝えたいことが一杯ある。」
コミティア(オリジナル同人誌即売会)に参加する前日にフリーペーパーをコピー刷りするためにいつも行くコンビニには『天使』がいるが…。
2〜6ページのショート漫画8編とその解説を収録。
2015〜16年に「千秋小梅うめしゃち支店」より発行のペーパー漫画&友人発行合同誌の寄稿漫画を集めた総集本の第1弾。

<なかせ評>

甘酸っぱい気持ちになれるライト恋愛ドラマ&同人作家ドラマと、プチ旅行記と、音楽イメージ漫画が詰め合わされた一冊。
無料配布ペーパー用に作成されたもの中心の作品集とは思えないほど満足感が得られました。 端的な作品を集めてあるので、作者の人となりをよく表しているように感じました。直に交友のある私としては「作者のうめさんって会うとどんな人?」と聞かれたらこの1冊を見せるのが一番早い気がします。

<蛇足>

12p目の一番下のコマを読んでの2人の「面映さ」はすごいですね。似たシチュエーションの恋愛漫画はいろんな作家が様々描いてますが、この2人ほど気持ちが伝わってくる漫画はなかなかない。

うめしゃち丼

 

2021/11/09

 

<紹介>

「頭の中に浮かんだイメージを絵にかけるように…」
「ひすいろうかん」さんは高校生の頃からさかんに絵を描いていたが難しかった。 そこで、まず既成のものマネからはじめることにした。

一般公募で年刊発行の短編叙情マンガ集。
2001年創刊で21冊目の今年号にコマ漫画で22名、イラスト&文章で4名、計26名の作家が参加。 コマ漫画は1〜12Pの短編を28編収録。
2021年10月に関西コミティア62にて「メタ・パラダイム」より発行の紙書籍の電子書籍版。
(参加作家) コマ漫画…はらだなおみ、おがわさとし、よこやまぺん、五月病、鶴弥なこみん、em[真紀]、いちのへみのる、摘草春菜、まのこ魚、ひすいろうかん、秋元なおと、なかせよしみ、くりもとりゅう、驢馬、大樹、田井亮子、小野カロン、つやまあきひこ、小津端うめ、つばめ・ろまん、下里亜紀子、ゆ~すけ イラスト&文章…イタガキノブオ、Vivian Lee、Rita Lee、つるはらかおり

<なかせ評>

今回は「創作家の主人公」もしくは「作者自身」が「自分と創作」について振り返る作品が多い目。 コロナで作家が自らの創作姿勢を問い直す機会が増えたことを改めて伺えました。
昨年号から作品の直後に「作者自身のコメントと近況」そして「編集サイドの感想トーク」が収録されてる編成。 今読んだ作品を複数の視点ですぐ読み直せるので、作品のみを連ねて載せる雑誌とは一味違う読み心地を楽しめました。
私自身も参加作家だったで紙本の献本をいただいて、紙版とB☆W入手した電子版をとっかえひっかえ読みました。
特筆すべだったのは、作品後コメントページを見て作品ページを繰り直す時はコメントページにひょいと指を挟んで作品ページをパラパラできる紙本の方が便利だと思ったこと。そして、まずはモノクロ版の紙本で読んだ作品が電書ではフルカラーだと気づいてあわてて開いたひすいろうかんさんの色鉛筆使いが綺麗で感激したこと。

<蛇足>

私の作品についての感想トークで、主人公がお茶を注ぐシーン2つの「ポットの高さの違い」が指摘されていましたが、実は2シーン目は私の「描き間違え」で、本来、お茶を注ぐ時は「ポットの蓋に手を添えている」はずでした。
ただ、そのことを私自身が忘れていて、途中で気がついたものの「まあ、このままでもいいか…」と放置して原稿を完成させたのには、もしかすると私自身も気づかなかった「感想トーク」通りの心情が自分の中にもあったのかもしれない、と考えさせられました。

叙情派ひとつ2021

 

2021/11/10


<紹介>
「人間はごみを造る動物である。」
猿から進化した人は道具を使うようになり、火を獲得し、文明を築いた。
しかし、その進化とともに人が捨てるゴミ(塵芥)は驚異的な量となった。
…塵類(じんるい)誕生。
環境問題について描いた1コマ漫画に解説を加えてテーマごとにまとめた作品集。
1982年に開始された月刊雑誌「廃棄物」(日報)に連載の「ゴミック」から厳選した作品を収録。

(テーマ)
1.ゴミック名作集 2.温暖化問題 3.ごみ問題 4.生態系の保全 5.水問題 6.プラスチック問題 7.食品ロス問題 8.環境教育・学習 9.ライフスタイル 10.コロナ禍

<なかせ評>
親しみやすい描画でカラフルに描かれた社会派1コマ漫画集。
表紙には「面白くって、わかりやすい!」と銘打たれてますが、
…申し訳ありません、この電子書籍を一冊の本として通して読むのは私にとっては大変な苦痛でした。

苦痛になった理由を考えましたところ、以下の通りです。
1.厳密に見ると必ずしも正しくない記述、現代人の生活や産業活動に対する過度な批判、リサイクル活動を否定する内容の作が含まれていました。
2.解説ページを読んでも読者のどういうリアクションを期待しているのか読み取れない作がいくつかありました。また、解決の糸口を示唆されない問題や、そもそも解決しようがない問題の提起が含まれていました。
3.テーマカテゴリーが複数ある作品については該当するテーマ章に重複収録されていました。一見、300ページ=漫画150作の書籍ですが、重複を除けば漫画は100作以下ではないかと思われます。ページを繰ると何度も同じ作が表示されるので「くどい」と感じました。

確認するとこの本は作者のサイト上ではリンク分岐で紹介されているデータ集でしたが、そちらの方が見やすかったです。この本はサイトの掲載データを1冊の本に綴じ直した仕様のようですが、パソコンでのサイト閲覧ができる方にはそちらの方をむしろおすすめします。電子書籍にするなら内容や解説を電子書籍の読者視線でもう少し練り直し、整理しなおすべきだと思います。

<蛇足>
作者ハイムーン(本名:高月)氏は元・京エコロジーセンターの館長であり、京都大学の名誉教授とのことで、長年この分野に携わってきた方だとお見受けします。しかし、多分これらの一コマ漫画は難しい問題を論じるページがつづく雑誌の中に掲載され、読者にとってはユーモアと安堵感を与える「箸休め」として有用な役割を果たしたのではないかと思われます。
雑誌で読んで共感した読者、あるいは作者に興味を持った読者がまとめて読むのであればこの本はその目には楽しい作品集に映ると思われます。しかし、これらの作品がこの本で初見で、環境問題について必ずしも作者と同意見ではない読者にとってはこの本は一方的な考えの羅列、しかも何度も同じ話の繰り返しにしか見えません。 タイトルは「環境問題を学ぼう」となっていますが、このままの形で単体の教科書として一人歩きさせる内容としては難があると思いました。

私が気になった「必ずしも正しくない」部分
1.コロナ禍でもゴミ分別が必要という論
リサイクル目的の分別よりウイルス汚染の可能性の有無による分別が優先されます。一見ゴミが分別されていないように見えても感染拡大防止のためなら問題はないはずです。
2.使い捨てカメラを否定している部分
「使い捨てカメラ」は古い呼称で、いまは「レンズ付きフィルム」と呼称されます。本体は回収の上で再利用されます。廃棄物の発生量はデジタルカメラに比べれば多いですが、フィルムカメラとの差はほとんどありません。

一番気になった部分
本作では「自動車」や「エスカレーター」等を「人が楽するためだけの非エコロジカルなもの」として痛烈に批判しています。しかし、それはあくまで普通の生活を送れる健常者の視点です。そのような機械の助力等があってはじめて社会参加できる人は世の中にはかなりいて、「そういう人の足がかりになり、また健常者の生活を楽にできる」システムとして視ればそこまで批判できないのではないかと思います。

マンガで環境問題を学ぼう!

 

2021/11/11

<紹介>

「科学者は自然を愛し その心(真理)の探求に命をささげる者だそうですね」
稀代の天才青年:関サダハルは今世紀最大の科学者。そんな彼が取り組んでいた難問を初対面で年下の女の子があっさり解き明かすが…。

ボーイミーツガールで科学の苦悩を描くコンバセーションSFファンタジー読み切り短編マンガ。

2021年9月のコミティア137にてサークル「す」より発行の自主出版誌を電子書籍化。

<なかせ評>
ライトな恋愛ドラマかと思って読み進めるとズブズブと深みに引き込まれました。
…え?これは哲学書!?(困惑)

難解ですが、これはこれで幸せな物語です。(多分)

「過去現在未来全宇宙のすべての事象を知りそれを自在に操ることができる女の子」の性格がこんなにほわほわしてていいのか?いいや!だからこそいいのだ!(自己完結)

<蛇足>
彼女がペテン師でないことを確認するために「パソコンで生成したUUIDを3回連続であてさせる」という手段が独特。そんな小ネタを交えつつ、可愛らしい描画でこんな奥深い掌編を作り上げる作者さんはすごい。

philo-

 

2021/11/12

  • <紹介>

「この惑星のあなたが作ったこの文明について何か妙だと思ったことはありませんか?」

涼子たちが宇宙船の修理のために文明を急ごしらえで作り上げた惑星「デイジー」。 その後も美由は惑星に止まったが、彼女らが作った両性人類たちは宇宙を目指しはじめた。

「無限工作社」の謎を追い宇宙を駆けるジャーナリスト鎹涼子を描く長編ハードSF「人類圏」シリーズの「氷の惑星」編の第15編。付録「惑星デイジー地形図」「雑草とは何か」も収録。

2021年6月コミティア136にて発行の自主出版誌を電子書籍化。

<なかせ評>
「50年の休暇」の惑星にとどまった(もう一人の?)美由のお話。 これを起点に涼子たちにもう一波乱が起きそうですが、果たして…?

すみません…シリーズにいくつもの分岐が生じ、なかなか難解なお話なので、私も全体像がつかめているとはとうてい言えません。ただ、美由が手に取った本から別の世界につながっていく流れと「想像の外側」についての講釈がとても面白かったです。また、巻末の「雑草」のお話もとても興味深かったです。

<蛇足>
せっかくですので「カントール対角線論法」についても紐解いてみました。これは本来は「実数が自然数よりも多く存在する」と証明する論理なんですね。ただ、この話の例を借りて言えば、美由が「無限」に続く数字をすべて「書き終えた」時点でそれは「無限」ではないですよね。カントールへの反証を示すとするなら、そういうアプローチになるのではないかと思いました。

雑草のごとくに

 

2021/11/13

<紹介>
「火星あたりがピカッと光ったら俺が戦ってるって思って下さい」

クラスメイトの穂積君はそう言い残して「戦争」に行った。
「戦争」には中学生たちが何人も呼ばれ、帰ってこないらしい。
そして、わたしにも呼び出しが来た。

現代の普通な中学生たちが謎の戦争に駆り出される世界の少女を描いたシチュエーション短編少女漫画。

2021年9月のコミティア137にて「突撃蝶々」より発行の自主出版誌を電子書籍化。

<なかせ評>
具体的なことは何も伝えられない、しかし、逃れることができない「戦争」に少年少女たちは絶望するのではなく、視線を「火星」にむけて立ち向かう…。
ん…?何かいつもの山名作品のポップ&リリカル路線とちょっと違います。しかし、画面を通して文学の香りが漂います。

<蛇足>
商業掲載を念頭に起こしたがお蔵入りしていたネームを20年越しに描き上げた作品とのこと。もしかして、いまこれを掘り起こしたのは新型コロナで「現在の死と隣り合わせた世界」を山名さんも垣間見たからでは?…などと邪推しました。

火星

 

2021/11/14

<紹介>
「ていう感じで幽霊になったんでした」

熱を出して寝込んでいた枕元に天井から蜘蛛が垂れ下がっていた。
蜘蛛に指を触れた瞬間「しきみ」は…。

女子高校生の幽体離脱体験の半日を描く読切短編マンガ。

道教室を営む凪(なぎ)と高校生の樒(しきみ)の二人姉妹を描く『calm』シリーズ番外編。電子書籍書き下ろしオリジナル作品。

<なかせ評>
夢か現実か定かでない不思議な体験を描いたお話。
幽霊になった主人公目線で描く世界の空気感がリアルで面白い。周りのとの関わり合いの中で生きていることを再認識できた感がある。

友人1名を除いては誰にも見えない姿がカラスの目には映っている描写が秀逸でちょっと楽しげ。

<蛇足>
必ずしも「calm」シリーズで描く必要はない話のようにも思えるが、この作品の空気感が面白いと思った方は是非とも「calm」及び、作者さんの他の作品に手を伸ばしてほしい。

Ghost in the World

2021/11/15

<紹介>
「ぼくたち、『四人』だった。もう一人いたんだよ。」

数日前に忍び込んだ廃屋にヨダカを置き去りにしていたことを急に思い出したカナリア
その時一緒だったクロウ、カケスと一緒に3人で再び廃屋を訪ねるが…。

孤児院の少年たちが森の奥の洋館屋敷で繰り広げる怪奇サスペンスを描く短編小説。

2021年10月に開催の第七回文学フリマ福岡にて「すとれいきゃっと」より発行の文庫本をPDF化。

<なかせ評>
「幽霊屋敷に置き去りにした仲間のことを数日後に思い出したので迎えに行く」というシチュエーションではじまるホラー。 それぞれの過去を抱えながら鳥の名前で呼び合う少年たち。黄昏れた陽光が常に差し込む洋館廃屋。焼け焦げた白いドレスを介して少年に憑依する少女の霊。
多くの読者の琴線に触れそう要素をからめた「オカルトかくれんぼ」ストーリー。

<蛇足>
シチュエーションを楽しむ読み物としては面白いですが、数多く散りばめられた謎の答えが明確にはでないまま終わることを気にする読者も多いのではないかな?
描写の記述が少々足りないため具体的に何が起きたか、その台詞を誰が言ったかを読者的に断定できない部分もありました。たとえば、玄関扉が台詞途中に開くシーンは「誰も触れてない扉が勝手に開いた」とも「他の子の制止を聞かずにクロウが開いた」とも取れます。取りようによってどの時点で屋敷での超自然現象が始まったかを読み違えることになるので、物語全体に大きくかかわってきます。

ハイドアンドシーク

 

2021/11/16

<紹介>
「私は先輩だから。大事な後輩君が困ってたら助けないと、ね」

マネキン人形アンドレ君殺人事件に解決の決め手がなく、推理に窮した橘川君。彼に手を差し伸べてたのはさっきまで「本当の殺人事件じゃない」と言って意気消沈していた鷹城部長だった。

連続殺人が校内で起きることを声高に切望する発作を時々起こす「凶事渇望症候群」のミステリー同好会(みすど)部長が黒咲高校の事件や謎の解決に乗り出す推理コメディ小説の第2巻。

第2章の解決編、第3章の導入編、おまけイラストを収録。 「小説家になろう」にて2016年2月より連載開始のweb小説を編集して電子書籍化。

<なかせ評>
物語描写が主人公の橘川(きっかわ)君の視線で一貫され、軽快なトークのキャッチボール中心に進む物語が読んでいてとても快適でした。声を出して笑ってしまう場面も多々ありました。
登場人物が意外に多いので巻頭に主要人物一覧があるのがとても助かりました。要所々々に解説図を挿入している配慮もよかったです。
ただ「かっこ書き」がない橘川君の心理描写までが会話の中に含まれている場面がかなりの頻度(2ページに一度のピッチ)であり、ときどき首をひねりました。直後に橘川君自身が「思ったことを口に出してしまっていた」と付け加えられている場合もありましたが、ほとんど場合がセリフとして発した風情は一切なし、「顔にでていた」という解釈も難しい場面がほとんど。
2冊目の終わりまで読んだころには「まあ、これはそういう小説なんだ」と慣れましたが、読者にとってはちょっと「とっつきにくさ」になってしまうのが惜しい気がします。

<蛇足>
橘川君はうだつの上がらない主人公のように描かれているが、どうも彼は彼のことを気にかけてくれる大勢の女子に囲まれすぎてはいないか?しかも、どの女子も一癖二癖あってちょっと魅力的。
「解決編」を次巻に回すという出版形態がなかなか上手い。2巻の導入編では主人公たちが何を見落としたか、何が正解かは私は多分わかったので、その答えあわせに3巻目を読むこと来年の楽しみにしてしまいました。

鷹城先輩はある意味、不治の病におかされている2

 

2021/11/17

 

<紹介>
「小さな立方体 これが我が国の領土の全てだ!」

国土は宙に浮く50センチ角の立方体。国の王はアルガン。国民はアルガン。
完璧なる国家…アルガン王国。

魔法使いのルーコが様々な人々と出会って対話する連続4コマ漫画シリーズ「魔法使いのお時間よ」の第97話。

2021年1月に開催の関西コミティア60にて「まり王」より発行の自主出版誌「魔法使いのお時間よ9798」の収録作を電子書籍化。 

<なかせ評>
様々な価値観の者との対話を繰り広げられる魔法使いルーコの物語。今回出会ったのは「修身斉家治国平天下」を地でいく国王アルガン。自らの足元の国土をしっかり治めることから世界とかかわる彼女の姿勢は好ましい。その上に可愛らしい。
「戦争」をはじめる展開で一瞬ハラハラするが、すぐに終結する理由が…なるほど?

<蛇足>
巻末に作者さんは国について小さくして考えてみたと書かれているが、その考え方、考えの展開のしかたが毎度々々独特で面白い。表紙のカラー使いもポップで美しい。

魔法使いとアルガン王国

 

2021/11/19

<紹介>
「しかし、噂に聞いていたが ここまで人が多いとわ」

主人公「犬」(キャラ名)は新型コロナのワクチン接種の予約を取るためにインターネットの中にダイブする。 しかし、そこは想像以上に苛烈な戦場だった。

接種予約の獲得から接種後の副作用までの「犬」の日々を「俺好み電波のじゃロリババア」(キャラ名)と「yPadさん(タブレット)」が見守る。

妄想美少女と会話しながら身の回りの出来事を綴るドット絵(ピクセルアート)描写のエッセイ漫画シリーズ第6話。英訳版も収録。電子書籍書き下ろしオリジナル作品。2021年11月に開催のコミティア138にて発行予定の自主出版誌を先行配信

<なかせ評>
予約が取れた先は主人公が子供の頃に世話になったいた医院。その思い出と、医院の変化に対する感慨、その医院の老医師(思いかけずの名医)との邂逅が面白い。
副作用で主人公が倒れている間は彼の体内に妄想美少女たちがダイブしてワクチンの作用原理を解き明かすメディカル教養漫画仕立て。接種した人の大部分は理解していないであろうワクチンが作用する仕組みが簡単には説明できない複雑難解な防疫システムであることが分かります。
副作用で倒れた主人公の不調を同時期に重なったバイクの不具合と重ね合わせて語る総括も見事。

<蛇足>
2021年の夏から秋口にかけて日本は新型コロナのワクチン接種が一気に進みましたが、感染拡大の第5波ピークに間に合わなかったのは接種に対する主に若い世代の意識不足のように報道されていました。しかし、実際にはこの漫画が描いたような「接種したくても簡単に予約が取れない」という実態がありました。そのことをちゃんと漫画の形で残していることは大変な偉業だと思います。

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2021/11/19

<紹介>
「今日もアルマのリング(心)は静かだ」

何もない星の上で宙を見あげる二人の少女「アルマ」と「私」。 昔はあふれんばかりの感情をもてあましていたが、いつしか退屈がアルマから感情を奪ってしまった。

SF、ファンタジー、日常等様々なテーマで1p〜25pの作品を9編収録した読み切り短編マンガ集。

2021年6月のコミティア136にてサークル「す」より発行の自主出版誌を電子書籍化。

<なかせ評>
どの話もほっこりできる作品集。読んでいてすこし微笑んだり、ちょっと考え込んでうなずいたり。 一番の長作(25p)「ヴォイドたゆたう」の「アルマ」と「私」の「輪っか」が秀逸。
感情によって変化したり、溶け合ったりしながら物語の終わりをビジュアルに昇華させる設定には驚くばかりでした。

<蛇足>
コロナ禍で不定期になったイベント開催の中でもコンスタントにこの読み心地と分量の作品集を発信しつづける作者さんは「すごい」と思う。どの本もチェックからはずせません。

珊瑚樹

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私のレビュー中の<紹介>の部分には、それぞれの本の電子書籍ストアでの「内容説明」の文章を「私ならこういう書く」と思った内容で書かせていただきました。電子配信をされている作家さんはよければご参考にして下さい。

 

第17回いっせい配信企画「創作同人2021年11月」

第17回いっせい配信

2021年11月3日文化の日)に創作同人電子書籍の第17回「いっせい配信企画」=イベント名「創作同人2021年11月」が実施されています。この企画は配信する電子書籍ストアを問わず、作品を自主配信してる作家さんが配信日を揃えて、配信情報を互いに広め合うオンラインのイベントです。

 

https://64.media.tumblr.com/082bb8167a259626778cf7b5f0e8d93b/d37429860dc88c5e-9f/s1280x1920/df47c349eb703eaaa4a4f4f3419eca384097cca0.png

配信日のである本日11月3日の現時点で15人の作家さん&編者さんによる23作品が入手可能です。

 

「いっせい配信」企画は配信日より1〜2日の誤差内の期間(11月1日〜5日)は随時「飛び入り」可能です。まだ電子配信されていない自作のオリジナル作品があれば参加費無料、事前申請不要、「漫画」「小説」「イラスト集」「全年齢向け」「成人向け」等々のジャンルは不問なので、興味のある作家さんは企画サイトをご覧ください。 

「まるかふぇ電書」の新刊は3冊

私(なかせよしみ)と砂虫さんの本を配信する「まるかふぇ電書」は今回計3冊の本を配信します。

砂虫さんのネコ漫画&イラスト本は… 実は7月の「第16回いっせい配信」の準備を重ねていた頃にわが家は子猫を新たに一匹拾いました。そして4ヶ月後の今回に砂虫さんはその子猫についての本を出すという「スピード執筆」です。お読みいただければリアルタイムな猫との暮らしを楽しんでいただけると思います。
「竜飼い」シリーズは20巻目となりましたが、これまで明かされなかった「半月村」やそこでのMC(ムーンチャイルド)たちの役割が明らかになります。これまでの長編シリーズ全般を解き明かす鍵が含まれている巻ですので、どうぞ読み逃しはなく。
私は前回に続いて「吾妻こはる」のシリーズを描き下ろしました。日常の中のエロチズムを追求するシリーズで、今回はコロナ禍の「新日常」を描いてみました。

成人向け作品の模索

前回の「第16回いっせい配信」から私の新たな試みとして手がけています「成人向け」作品。主なターゲットはDLsiteやFANZA等の「同人ダウンロード」系のサイトで購入する読者層で、そちらの需要に合わせた作品を目指しました。

しかし、蓋を開けてみると、その本はそれらのストアで購入される数よりBOOK☆WALKERKindleの方が多い。また、それらのストアでは成人向けの「18禁本」より同時に出した「全年齢向け本」の方が5倍の売り上げを記録しました。

https://64.media.tumblr.com/ac64fde45bf2622ff4d43b21f52ab8d6/d37429860dc88c5e-3d/s540x810/5e3f4d44841e064ce7be91351a1a420100254499.jpg


その本が「成人向け」の需要に達してなかったことは明らかです。それについては何が悪かったのかを検討して、思いつく様々な要素を盛り込み、第2作として作ったのが今回の本です。
その結果なのか、前回の本ではKoboでの配信登録では問題なかった『一般マンガ』としていたカテゴリー申請が今回は「『エロチック』のカテゴリーを指定してください」という連絡でリジェクトされ、Kindleからも前回はなかった「成人向け作品なのでこういう扱いになります」という通知が届きました。

https://pbs.twimg.com/media/FDBB5snaAAA0sNH?format=jpg&name=900x900

 

前回と違ってちゃんと「アダルト向けコンテンツ」扱いされているということは、とりあえず「さいさき」はいいのかもしれませんが、
…はてさて、ターゲットとするストアでの購入増加に結びつくかどうかは、これからです。

電子自主配信にまつわる昨今

2021年の夏にピークを迎えて新型コロナの感染拡大の第5波も9月には収束の一途をたどり、現在はほぼ「収束」していると言って問題ない状況に入りました。
2週間後にはコミティアが開催され、来年2月には2年振りの「東ホール開催」も予定されています。また今年の12月にはコミケが再開される方向で準備会も動いている模様です。
ただ、まだ感染拡大の第6波 第7波の懸念は拭いきれず、これらのイベントもコロナ前のにぎやかさを取り戻すにはまだしばらく時間がかかるように思われます。
その不足を補うべくなのか、通販や電子販売をベースにしたオンラインのイベントが様々新たに企画され、実施されている模様です。電子書籍の各ストアもロイヤリティ割増期間など設ける等で自主出版の作家を取り込もうと躍起になっている模様です。
中でも特筆すべき動きを見せたのは「Kindle無料マンガ(インディーズマンガ)」。こちらに無料購読作品として登録されている書籍には購読されたページ数によって分配金が作家に付与されます。2021年9月〜11月はその分配金の総合計額を毎月1000万円になるというアナウンスを10月の半ばに発表しました。

https://64.media.tumblr.com/ba3ec071c8dfa54a4a31ce45765db58d/d37429860dc88c5e-42/s500x750/112c707f5341e3ec9bbc850a38b603ef04f419b0.jpg

Kindleのインディーズマンガは読者から代金を徴収しないので、直接収入を生まない事業にこれだけの金額をおしみなく支払うという話です。アマゾンが「いまこそ作家さんたちにはKindle配信に馴染んでもらいたい」と切望いていることが見てとれます。
ただ念のために言っておきますと、分配金の増以上にKindle無料マンガに参加している作家数は増え、さらにそれ以上に現在は読者数が増えているので、無料マンガ全体の講読ページ数が増えている都合上、一書籍の一購読で付与される金額はほんの僅かな額です。
自主配信をされている作家さんは無料マンガに登録して多くの読者を獲得して分配金を狙うか、有料登録して購入読者からの直接的な売り上げロイヤリティを獲得するかは思案のしどころです。

いずれにせよ、創作作品の自主配信活動を取り巻く環境はいまも揺れ動いていて、目が離せない状況は続いているわけです。

「創作同人2021年7月」レビュー

2021年7月22日に第16回目の創作同人電子書籍いっせい配信企画「創作同人2021年7月」に今回は現時点で12名の作家による25書籍がエントリーしました。今回も紹介文とレビューを書いてみます。

 企画の詳細についてはTogetterのまとめもありますので、よければご参照ください。

togetter.com
 私と砂虫さんの本を発行している「まるかふぇ電書」からの今回「いっせい配信」のエントリー作品はこちらでした。 

奈々の夏休み 吾妻こはるの日常1 まいにちねこまみれ 竜の飼い方教えます19
画像クリックでサンプルページが見られます

 

以下が他の作家さんによるエントリー本の紹介です。

2021/07/23                                                                                                                              

<紹介>

「郵便ポストを動かしてみました」

突如出現した郵便ポストは地平を駆け抜け、段差で転がり、宙を舞う。
リズミカルなアクションで展開するフルカラー漫画。
日本語に英訳を併記した仕様で2ヶ国語対応。

「まり王」より2021年7月の描き下ろし作品。

<なかせ評>

本来動かないはずの郵便ポストのアクション(?!)漫画。
動きの流れが楽しく、演出が華やかで最後まで飽きない。
無生物を主人公に据えた作品で読者を46ページもの漫画の最後まで導く内海まりおさんの力量はなかなか類を見ないと思います。

<蛇足>

今回も英語の表現に少々違和感を感じました。
国際的に通用すると思われるコンテンツだけに、ここは他人に頼ってでも改善を検討していただきたく思います。

「ポスモダ: 前世紀のポストモダン

 

2021/07/24                                                                                                                              

<紹介>

「まるまるふくふくのトリさん」

ヤマガラさん、エナガさん、カワセミさん、メジロさん、ジョウビタキさん、スズメさん。冬の山でぷくぷくまるまるになっている鳥たちを描いた着彩イラスト集。

2018年1月21日のMGM2.20にて「三月館」より発行の自主出版誌を電子書籍化。

<なかせ評>

淡水彩イラストに定評あるさえぐさ先生が冬の山で出会う鳥たちを可愛いらしく、コミカルに描く。冬の到来を告げるポストカードを受け取る感覚で読める小編。

「ことりだんご」

2021/07/25                                                                                                                      

<紹介>

「私 さかなを さがしてるの」

フリルドレスをまとった少女はさかなをもとめて畑を訪れ、樹海に導かれ、
同様にさかなを求めていた若者と出会う。
シュールでポエジックなボーイミーツガール漫画。

1994年8月7日のコミックマーケット46にて「卓上噴水」より発行の自主出版誌「水素」掲載作を電子書籍化。

<なかせ評>

北原白秋の詩の引用からはじまり、ファンタジカルなキャラクターたちとのシュールな会話で進み、山村暮鳥の詩の引用でしめくくられている。25年前にはじめて読んだ時にこの謎展開ストーリーと画面の白黒のコントラストやポップなトーン使いにたまらなく痺れた感覚を思い出しました。

<蛇足>

紹介に書きました「シュールでポエジックなボーイミーツガール漫画」の一文は山名さんが書いたこの本の書誌からの引用。…え、ボーイミーツガール漫画!?うん、まあ言われてみれば。25年目にしてはじめて気づくのはちょっと衝撃でした。(^^;)

「さかな」

 

2021/07/25_2                                                                                           

<紹介>

「今はネットとかで売れるんでしょう」

不用になった金のブレスレットを売るよう母親に依頼され、メルベイに初挑戦するた主人公「犬」(キャラ名)。
発生する思わぬ困難や必要な買い出しに立ち向かう。
お供は「yPadさん(タブレット)」「SACHSちゃん(バイク)」 そして、メルベイ出店の二段階認証で必要になって入手した「らくらくモバイルさん(スマホ)」。

妄想美少女と会話しながら身の回りの出来事を綴るドット絵(ピクセルアート)描写のエッセイ漫画シリーズ第5話。英訳版も収録。
2021年4月23日〜7月3日twitterで1日1p公開のウェブ連載漫画に書き下ろしエピソードを加えて電子書籍化。

<なかせ評>

「らくらくモバイルさん」に加えて今回は「メルベイのオクさん」や「配送ポストのBUDOさん」などの新たな妄想キャラも加わってにぎやか。

フリマアプリでの販売の大まかな流れが理解できる上、販売、梱包、発送に必要なマメ知識やアイデアを知ることができる、なかなかの実用書。

「yPadちゃん」とテザリングしたり、財布を忘れた「犬」に「ペリペリ」決済を提案したりと「らくらくモバイルさん」がなかなか有能。一方でスマホスタンドをせがむ時は奥ゆかしかったりと2面性を見せて可愛い。(「犬」もお大尽になって可愛がっている)

<蛇足>

右綴じ漫画なのに吹き出しは横文字なので読む順に迷う部分もあったりしますが、妄想キャラたちとの会話が心地よく、最後まで楽しく読めました。
ところでなぜBUDOさんは関西弁なんだろう? 

ピクセルデイズ5 Pixel days 5」

2021/07/26                                                                                           

<紹介>

「その言葉は私のプライドを傷つけた」

「可愛い」を代名詞のように聞かされ育った無邪気な少女「まゆ」。
親戚の会社が主催する美少女コンテストに出るよう頼まれた彼女はそこで自分とは正反対な美少女と出会う。

徐々に高慢な闘争心を目覚めさせいく少女の変貌を描く短編。

2001年に宙出版より発行の月刊誌「いちばん怖くて綺麗な童話」に掲載の後、2009年に「藍色劇場」より発行の自主出版誌「クロコキアイ」に収録の作品を電子化。

<なかせ評>

黒い少女が身につけている首輪のようなチョーカーをキーアイテムとして展開する流れが面白い。
一見、白い少女が黒い少女と出会って黒く染まっていく物語。しかし、実はその黒さはもともと白い少女の内面にくすぶっていて、黒い少女はそれを燃え上がらせたにすぎないことがわかる。

<蛇足>

作者は温室育ちの少女がオンナに変わる瞬間を描きたかったように思えるが、黒い少女のバックグラウンドやその後が気になりました。この後、この2人が関わり合いながら展開するような物語があれば読んでみたい。

「美少女コンテスト」

2021/07/26_2                                                                                           

<紹介>

「この映画は現地の人にはわかるんですか?」

中東の映画を特集した映画祭を主催した映画館。
しかし映画の内容が観客たちは伝わらず大荒れ。
騒ぎに乗じて一方的な取材をはじめたテレビクルーがカメラを向けたのは 通りがかりのアラブ人のエルカン、そして同行していた青年、瀬川安樹だった。

トラブル続出の映画祭をとりまく人間たちの4日間を描くシリーズの1日目。

2021年3月開催予定だった新潟コミティア53(開催延期)あわせの作品を電子書籍にて先行配信。

<なかせ評>

異文化や異国人への不理解がうずまき、まとまりに欠けた現場に居合わせた者たち。 それをなんとかしようと力を振り絞って立ち上がった青年たちを取り巻いて事態は動き始める。 弱々しいながらも希望をつなごうとする青年2人と彼らを騒々しく力強く後押しする館長たちの対比が面白い。
双方がこの先、どう絡んでこの事態を収拾していくかが楽しみ。

<蛇足>

アナウンサーや映画館の手伝いの方の異質な者に対する露骨で失礼な言動に少し難を感じました。その方が話が分かりやすいのは理解できるのですが、それらの言動に作品全体の印象を引っ張られる感じが否めず、もう少し控えめな表現でもよかったのではと感じました。

「東の果ての映画祭 Day1」

 

2021/07/27                                                              

<紹介>

「K02b 電脳吟遊館」

同人誌即売会のスペースでのサークル「電脳吟遊館」のスケッチブック看板。
「本日のお品書き」看板と「準備中」看板の2枚1セットでイベント毎にイラストつきで書き起こし。

2018/9/9~2021/6/6までの合計23イベント分をまとめたシリーズ第3巻。
2021年6月6日のCOMITIA136にて「電脳吟遊館」より発行の自主出版誌を電子書籍化。

<なかせ評>

看板を毎回書き下ろす習慣をつけてイベント参加を続ければ自然にたまるタイプのイラスト集。本人にとってはただの活動記録ですが、データをまとめればこれも立派に冊子として公開できるという好例。

自主出版のイラスト集はこういう気軽なものでもいいと思います。

野良之介は描き慣れているせいもあるのかポージングがかっこいい。

<蛇足>

開催中止になった2020年3月のサンクリの分までありますが、看板はイベント開催のかなり前から用意してるのかな?

さらに個々のイベントの印象やイラストの自己評価などが書き添えられていれば、サークル側としてのイベントに参加しつづける感覚を伝えるよいレポートにもなりそうだと思いました。

「スケブポップス vol3」

2021/07/28                                             

<紹介>

「彩花がこんなふうになる前に、どうして助けてやらなかったの」

次元跳躍艦[ハイブラゼル]のロールアウトを見届けに伊月は奈月の体で外出。その足で八坂本家に出向いた。目的は妹の彩花および弥姉弟をひきとり、方舟学園に入学させることだった。

9歳の少女の伊月と彼女を前世から溺愛する最強の吸血鬼のキリエ。2人を中心に皇国の守護たち、自動人形たち、異能者たちが繰り広げるアクション・ファンタジー・ストーリー。

WEB連載の長編小説「ろくでなしの花嫁とひとでなしの吸血鬼」の第117〜134話でまとめた第6巻。成人後の伊月とキリエ、黒姫奈とキリエのエピソード(性交描写あり)およびキリエの点描エピソード、計3編の書き下ろしも収録。

<なかせ評>

今回の話は伊月の視点(半分以上は奈月に入った状態)で描かれた「1日」。1日とは思えないほど次から次にタスクをこなす伊月の八面六臂ぶりがすごい。伊月の体でキリエの発情を誘うことに始まり、彩花たちのためのアミュレットと眷属「日嗣」を作り出すに至るまでの過程と描写が奇抜。

9歳の少女が大の男をいたぶる描写が悩ましい一方で、その後に彼女にふりかかる災とそれを献身的にケアする彼の描写はハラハラさせる。 

<蛇足>

初期に比べて状況説明に「主語」がわかりやすい表記で増えたので読み易すくなっていると感じました。ただ一方で、起こる事象の因果関係や理由づけの説明がまだまだ不足気味。いろいろ推測するか、「そういうものだ」と無視しないと読み進めない部分も多々。

はじめの山場はハイゼブラルのロールアウトですが、なんのための行事なのか、このイベントが伊月たちや方舟学園にとってどういう意味を持つのか、またなぜ鏡夜はそれを『僕たちの艦』と呼称するのか、説明が見当たりませんでした。一応、流れとして、何故かハイゼブラルが出現した後でないと奈月は八坂への転属がかなわなかったと解釈しましたが、この理解で正しいのかどうか。
また物語の後半はキリエの迂闊な振る舞いで伊月に降りかかった災が描かれているものの、その「迂闊な行動」はそもそも伊月がいいようにキリエをいたぶった反動だった、という理解で正しいのかどうか。
物語の要となると思われる情報説明はもっと増やした方がいいと感じました。

「プライベイト・ヴァンパイア RE117-134」

2021/07/29                             

<紹介>

「私は子供の頃から何かおかしかった」

お嬢様育ちの真咲は友人の美雪とともに女2人で雪山を訪れ、カマクラを作って2人とも入り、入り口を雪で塞いだ。2人はここで死ぬつもりだ。

自らの性的志向と境遇の不一致を理由に死に急ぐお嬢様と行動をともにする幼なじみが繰り広げる短編百合漫画。(微エロ表現あり)

2020年4月の名古屋コミティア56にて「でんでんむしむし」より発行の自主出版誌を電子書籍化。

<なかせ評>

どこかノホホンとしたお嬢様と彼女のことが好きでどこまでもついていく忠実な友のコンビが微笑ましい。
ちょっと間抜けな心中の顛末が笑える。 

巻末には次回予告があるのでシリーズ展開する予定だろうか?次巻が出た際は是非入手したい。

<蛇足>

BOOK☆WALKERでは全年齢向け扱い、Amazonでは成人向けの18禁扱いになっているこの作品。これはなんらか作者自身の意図によるものか、あるいは微エロな描写あるいは「主人公が自殺する」という設定のせいでAmazon側が勝手に分類したものか、ちょっと興味が湧くところです。

「お嬢様と心中」

 

2021/07/29_2                      

<紹介>

「彼らにとって私たちは物語の中の登場人物にすぎないけど それでも勝手に動かせるわけではない」

惑星スカラブラエにいるもう一人の自分との合流を果たし、自分たちの行動が「確率操作装置」の影響下にあることを理解した涼子。彼女が次にとった行動は彼女たちを追っていたキネロックスとの通信回線を開くことだった。

「無限工作社」の謎を追い宇宙を駆けるジャーナリスト鎹涼子を描く長編ハードSF「人類圏」シリーズの「氷の惑星」編の第14編。資料メモ「『中越戦争』〜ただ一人のための戦争〜」も収録。  

2021年3月7日のサンシャインクリエイション2021Springにて発行の自主出版誌を電子書籍化。

<なかせ評>

「何もしない」で1対数千万の戦力差をひっくり返して「箴言執行者キネロックス」と「ドラコーの血法団」を撃退する涼子の策が奇天烈。

「確率操作装置」については半信半疑ながらも、その操作を自ら直接行い、結果にビビってるリカオンがかわいい。

<蛇足>

今回は「もう一人の涼子」が全然出てこなかったのですが、どうしてたんだろう?

この前の巻の「非思考ゲーム」から作者さんは巻末にシリーズの一覧リストを掲載されていました。(昨年11月に 私が書いたリストには一部誤りがありました)

「人類圏」シリーズの「氷の惑星」編は「氷の惑星にて」以後のこちらだそうです。

01氷の惑星にて
02 生物粘土
03 自由機械
04 漂流船ステアパイク
05 人工大陸にて
06 50年の休暇
07 人類の品種改良事業団
08 星間地政学
09 宗教デザイナー
10 惑星スカラブラエ
11 第2の入口
12 地中式太陽光発電所
13 非思考ゲーム
14 保護領域
15 雑草のごとく(近日刊行予定)

「「保護領域」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私のレビュー中の<紹介>の部分には、それぞれの本の電子書籍ストアでの「内容説明」の文章を「私ならこういう書く」と思った内容で書かせていただきました。電子配信をされている作家さんはよければご参考にして下さい。

 

第16回いっせい配信企画「創作同人2021年7月」

第16回いっせい配信

2021年7月22日海の日)に創作同人電子書籍の第16回「いっせい配信企画」=イベント名「創作同人2021年7月」が実施されます。この企画は配信する電子書籍ストアを問わず、作品を自主配信してる作家さんが配信日を揃えて、配信情報を互いに広め合うオンラインのイベントです。

 

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配信日にあわせて7月20日の現時点で9人の作家さんによる20作品の予約購入および購入用チェック(「お気に入り」指定)が可能です。 

「いっせい配信」企画は配信日より1〜2日の誤差内の期間(7月20日〜24日)は随時「飛び入り」可能です。興味のある作家さんは企画サイトをご覧ください。 

「まるかふぇ電書」の新刊は4冊

私(なかせよしみ)と砂虫さんの本を配信する「まるかふぇ電書」は今回計4冊の本を配信します。

 

成人向け作品に挑戦

今回の私の配信に「成人向け」作品が含まれていることに驚かれている方もいるのではないかと思います。実はエロをテーマにした成人向け作品を本格的に手がけるのはほぼ初めてです。

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以前より電子作品の自主配信をする作家は「全年齢向け」をやる場合と「成人向け」をやる場合で「見える風景がだいぶ違う」のではないか、という印象がありました。双方を実際にやってみないことには現在の「電子自主配信」の実情はつかめないと、思い切って未踏の領域に踏み入れた次第です。

ただし、やるからには、いい加減な作品でお茶を濁すつもりはありません。ちゃんと「成人向けエロ作品」として需要を満たしつつ、自分の作品としての独自性が見せるものを狙いました。

普段の全年齢向け作品とは大きく勝手が違い、製作には時間がかかり、この方面に関しての自分の至らなさを痛感しつつの完成となりましたが、とりあえず、今の自分の力量いっぱいのものはできたと思っています。
年齢制限を超えてられている方は、ぜひご購読をお願いします。 

マンガ図書館ZBCCKSの活用

3月の「いっせい配信」以降の私の電子配信活動の近況を記しておこうと思います。

まず配信中の電子書籍の数点をマンガ図書館Zに登録してみました。
マンガ図書館Zは基本的には「廃刊になった商業単行本を電子化」するサイトで、読者は無料購読もしくはPDFファイルの購入でダウンロードができます。作家は読者によるPDFデータの購入代金もしくは無料購読した際に表示される広告料を得られます。もはや出版業では利益を出しにくい過去の資産を再びマネタイズの舞台に載せることが目的のサイトです。

このサイトではまた、商業単行本を出していない作家も自作品を直接投稿して掲載することができます。こちらはPDFデータの販売はできませんが無料購読時の広告収入の方は得られます。簡単に言うと「誰でも購読収入が得られる漫画投稿サイト」としても機能します。

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私もこの直接投稿枠に電子書籍で配信している初期の作品をいくつか載せてみました。すると一ヶ月で総計1000以上の閲覧を得られたので、収入の方もちょっと期待しました。しかし、2ヶ月後に計上された広告料の分配金は100円足らず。同様に無料購読で作品を発表して分配金を得られる「Kindle無料マンガ」に比べると購読数に対する収入はかなり少ない。

Kindleの無料マンガで「納得のいく収入を得る」のはなかなか難しいですが、マンガ図書館Zでは更に輪をかけて難しいのでは…?と思いました。

もう一つ最近試した電子配信活動はBCCKS
作家が「自身の手で作品を登録して販売」できる電子書籍&電子配信のストアは「全部で14個ある」ととらえている私ですが、いままで活用していたのは13ストアで、唯一このBCCKSだけを使ってませんでした。

https://64.media.tumblr.com/82e9ca13cbf203ff108123fbfc36bff8/d37429860dc88c5e-e8/s540x810/23b891d2711c5d0ca9d75503e6eed928ca07b556.png

使ってみてわかったのは書籍のデータを登録するシステムの「クセが強い」こと。基本的にBCCKS側が用意した本の体裁の「台紙」に作品データや情報を落とし込むことで書籍を作成します。慣れると要領がつかめますが、自由な書籍構成はできません。特に困ったのは本の縦横比がいくつかの選択肢から選ぶしかなく、余った余白は一色選んだのベタ塗りを入れて体裁を整えるくらいしかないことでした。

他に気づいたBCCKSの特筆すべき仕様は次の3つ。
1. 書籍販売時の最低価格は220円(無料本の登録は可能)
2.無料でのBCCKS利用で登録できる書籍数は50冊
3.毎月540円を払うと登録できる書籍数は300冊

無料で使っていた私は実は上限50冊に達してはじめて上限に気づきました。とりあえず、ストアに書籍登録するのに費用をかけたくない私はこの時点で新たな登録をやめましたが、以降このストアをどのように使うかを今も思案中です。

 

 

 

 

「創作同人2021年3月」レビュー

2021年3月20日に第15回目の創作同人電子書籍いっせい配信企画「創作同人2020年11月」に今回は13名の作家による17書籍がエントリーしました。今回も紹介文とレビューを書いてみます。

 企画の詳細についてはTogetterのまとめもありますので、よければご参照ください。

togetter.com

 私と砂虫さんの本を発行している「まるかふぇ電書」からの今回「いっせい配信」のエントリー作品はこちらでした。

なぞかれ 創作同人電子書籍のススメ 2021年手探り電子配信放浪記 竜の飼い方教えます18

画像クリックでサンプルページが見られます

 

以下が他の作家さんによるエントリー本の紹介です。

2021/03/21                                                                                                              

<紹介>
「野良乃介 覚悟!」

今日も襲い来る刺客を野良乃介は迎え撃つ。
主人公が「野良乃介」であること以外は一切ルール不要。
2ページ構成の時代劇(?)ショートギャグ漫画集の第5弾。

2019〜2020年のイベント参加ペーパーに掲載の8編と描き下ろし1編を収録。
2021年1月に「電脳吟遊館」より発行の冊子をイベント販売に先行して電子書籍化。

<なかせ評>

作者の日常的な思いつきをストレートに漫画に落とし込んだ感がいい。

「素浪人」のはずの主人公はこの巻では岡っ引きや切腹介錯といった役職についていたりしている。そもそも侍なのに内容が「時代劇」でないこともある(銀魂?)。毎回ネタもオチも自由奔放でなどんな展開になるか予測不能
その分「漫画の面白さ」の純度が高いとも言えるシリーズ。

<蛇足>
描画的にオチがわかりづらい回もあるが、頭をひねって作者の意図を読み解けば、「ふふ」と笑えるのがこの漫画のすごいところ。
MGM2.0(参加者50人くらいの小さい即売会)でほぼ毎回新作が出されるが、私にとっては実はMGM2.0に参加する際の大きな楽しみの一つ。参加せずに留守番している砂虫さんもこのお土産を楽しみにしています。

「素浪人・野良之介 巻之五」

 2021/03/22                                        

<紹介>
「悟りは開けませんでした」

水上を滑って遊ぶ魔王と魔法使い。
魔王使いに衝突され、サーフボード扱いされた魔王は勢い余って空のかなたへと飛ばされる。

現実とも夢ともつかない世界を掛け回る魔王たちを描くリズミカルなアクション漫画シリーズのフルカラー版集の第4弾。

「まり王」より2020年5月エアコミティアにて発行の「魔王の予言」(本編モノクロ)、2020年9月関西コミティア59にて発行の「マオーフカシギ〜救済の技法〜」(本編モノクロ)の2編を収録。2021年2月に発行のフルカラー版冊子を電子書籍化。

前半は日本語版、後半は同内容の英訳版で2ヶ国語対応。

<なかせ評>
絵画としての鑑賞にも耐えるページも多し。コミカルでテンポよく、ビビッドな色使いで、読めば確実に楽しくなれる一冊。「マオーフカシギ」に登場する怪獣のデザインは「コワ美しい」。

「魔王の予言」のモノクロ版は昨年5月にKindle無料マンガにて公開されてましたが、そちらを読んだ読者も今回のカラー版は必見の完成度。

<蛇足>
後半に英訳版を入れてますが、微妙に英語圏の人間には伝わりづらい。
「彼は言ったよ …明日は晴天なり」が「He said that …Fine Tomorrow」となってますが「He said …Tomorrow will be a fine day」「…Tomorrow’s gonna be fine」「…Tomorrow’s weather is fine」の方がいい。
また急停止で「ザザー」という擬音が書かれているコマにはカタカナ表記の横に「Brake」と書かれているが、それよりカタカナ表記の横に「Screech」と書くか、あるいはカタカナ表記の横には「Zazar」と書いて欄外の注釈として「Brake」と書いた方が伝わりやすい。
海外の読者も読めば絶対納得する作品だと思うので、ここらの拙さをとても惜しく感じました。

「魔王のホライゾンシネマ 4: 救済の技法」

 

 2021/03/23                                          

<紹介>
「僕と彼女は森の中にいた」

異様な静けさの森をさまよう2人が行き着いた先は…。
少女の思考を閉じこめた世界を描く短編漫画集。

「卓上噴水」より1994年8月のコミティア29に発行された自主出版誌「水素」の「コップ」と「突撃蝶々」より1995年4月のコミティア32に発行された自主出版誌「カルピス」の「バレリイナ」の2編を収録。

<なかせ評>

とらえどころのない少女の思考のような描写を連ねた作品2編。パッキリと描かれた画面構成と散文のようなストーリーが読者を独特な世界に引き込む。

本編の絵と四半世紀後である現在の描き下ろしの表紙&巻末イラストとの対比も面白い。

<蛇足>

正直言うと、この2編の漫画を個々に読んで山名さんが読者に何を伝えたいのかを読み解く能力は私にはありませんでした。ただ、確か私が1996年の新潟コミティア13で手にしたCOMITIA実行委員会制作の山名沢湖作品集「ミズタマ」が私にとっての山名作品との出会いでした。「コップ」と「バレリイナ」は2編ともこの本に収録されていました。多分、その気になれば山名さんはこの「ミズタマ」と同じ構成、あるいは原本の「水素」「カルピス」と同じ構成で電子書籍を出すことも可能だったと思われます。
それなのに、この2編のみで1冊の本にまとめられました。その2編の共通点を考えて私が導き出した答えが上記の<紹介>で書いた「少女の思考を閉じこめた世界」です。これが正解かどうか…、全然自信がありません。
ただ、ページ数が自由に組める電子書籍を「どう構成するか」も作家の裁量で自由にできることも自主配信の魅力であることに、改めて気づかされました。

「コップとバレリイナ」

 2021/03/24                                            

<紹介>

「…中学の時の後輩よ。ものすごく仲が良かったわ。」

世奈が態度を少しずつ和らげ、仲良くなってくれたれたことを雪姫は喜ぶ。
しかし、ソユンと会っている時に雪姫が世奈の名を出すと、ソユンの顔色は変わった。

クラスメイトの白幡雪姫と氷川世奈、雪姫の弟の白幡恵斗、雪姫と恵斗が街中で知り合ったイ・ソユン。「差別意識」が存在する学校や社会の中で「自らの過去」と向き合いつつ「これからの自分」を模索する4人の若者たちの群像劇の後篇。

2020年9月の新潟COMITIA52にて「千秋小梅うめしゃち支店」より発行の自主出版本を電子書籍化。

<なかせ評>

「社会的な差別」や「学内の不和」と向き合う若者たちが同時に「自らの性格」や「過去の行い」に悩み葛藤する描写がリアル。自分の力ではどうしようもないことや取り返しのつかないことに突き当たりながらも、前向きに明るい未来を目指す姿勢に好感。

<蛇足>

後編ではじめて雪姫が昔の事故で足に後遺症があるという情報がでて、びっくりしました。改めて前編を読み直すと随所に足の動きに「ひょこひょこ」と書かれていましたが、これは「引っ込み思案」な雪姫の性格を表すものだと思って読み流していました。この情報は物語を動かすキーのひとつでもあるので、もっと前に出すか、情報として伏せたい場合は足の不自然さをもっと読者に印象付けた方がよかったように思います。

また、前編を読んだ時点ではまだ出会っていないソユンと世奈が後編でこの大きな問題にどう絡み合って行くのだろう?と想像していましたが、後編冒頭からソユンの元「友人」が世奈だったと明かされ、物語の主軸がこの2人の関係性に修まってしまったのが少々拍子抜けでした。若者たち葛藤のドラマとして申しぶんない仕上がりですが、問題の核の在処を前編のうちに明かしておいた方がよかったように思いました。

「Relation and Bountary 結び目と境い目 前編」

 2021/03/25                                        

<紹介>

「あと一日だけ預けておくわ 明日時間がある?」

よほろ の旦那のバイクのネジをもらうわけにはいかないと、返そうとする こばこ。しかし、よほろ はあと一日ツーリングに付き合うよう こばこ にお願いする。よほろ が案内する先は…。

10年間放置していたバイクを修理する男(こばこ)と作業に付き合う10年前の女友達(よほろ)の物語第6話。

「クロ墨屋」より2021年3月のMGM2−33にて発行の冊子を電子書籍で先行配信。

<なかせ評>

バイクの修理過程が中心の漫画なのにわくわく。主人公が面倒に思っていた修理作業も気付けばそれ自体が楽しく、終わらせたくなくなる気持ちがよく伝わる。 物語はいよいよ佳境で、人間ドラマとしても読み入れる展開。

<蛇足>

過去の行程をたどる道中の描写で、現在と過去を同じコマ内に描く表現が面白い。過去の心理にどんどんシンクロする感覚が伝わり、いいアイデア。ただ、読んでいて混乱する箇所も多々あり、過去と現在を見分けやすくする工夫を何か加えた方がよかったのでは、と思いました。

ロイヤリティを統一するためと思われる各ストアの値段設定がまちまち。最高値はDLSiteの220円、最安値はBOOTHの154円。私自身はいっせい配信エントリー作品をなるべく少数の電書本棚に揃えたくてBWの187円で買いました。

モペットを直す男6」

 2021/03/26                                    

<紹介>

「あそこでホッチキスを買ったよ 誕生プレゼントとして…」

帰省した作者が父親とともに昔は文具屋だった店舗跡を見て思い出す。 小学生の頃に作者が欲しがったのはゲームソフトより高価な「事務用ホッチキス」だった。

もと文房具店員でもある作者が思い出や昨今の文具界の動向をつづる文具コミックエッセイ。
Webマガジン「文具のとびら」にて毎月3ページ連載のシリーズの選集第2弾。
「メルプのお部屋」より2021年3月に発行予定の冊子を電子書籍で先行配信。

(収録リスト)
#14「文房具セールで売れたのは人気の"アレ"!?」
#17「同人誌は『文房具』で作る!」
#18「子どものころ憧れた文房具!」
#20「国会図書館で文房具の本を探してみる!」
#21「ハーバリウムボールペン作りに挑戦!」
#22「試し書きにも個性が出る?」
#27「いちばん欲しかったペン立てはこれ!」
#30「漫画の道具は文具店でそろう!」
#32「閉店セールで買った文具、買えなかった文具」
#37「『名入れ筆記具』にあこがれる!」
#38 「オリジナル文房具づくりはほどほどに!」
#13「鉄道文具の記事に便乗しちゃうよ!」
#39 「令和2年、昭和の文具を買いに行く!
書き下ろし・こことこのわたし

<なかせ評>

選ぶ!探す!試す!集める!売る!作る!本を出す!
ありとあらゆる角度から文具にせまる文具愛あふれるエッセイ漫画。
ペン立ての紹介では様々な魅力アイテムを紹介しながら、それより作者が欲しがったの文具販売用に店舗におかれた什器、という展開は…うん、わかる!

<蛇足>

勢いのある漫画で作者の情熱がよく伝わる一方で、情報漫画としてはもうすこし説明があった方がいいのではと感じる部分が方々に。(「ニーモシネ」とは?3本の「メトロのはさみ」はどう違う?)

また、この本のepubデータはクリスタで制作された模様で目次がありません。「選集」のようなので、どの話を収録したかわかるリストがある方がよいと思いました。(なのでこのレビューで収録リストを作りました)

ところで、銀座駅で「銀座線」のハサミだけ買わなかったことを駅員さんはどう思ったか、作者さんは気にしていましたが、多分、駅員さんは「前に銀座線を買った人が他の2つも欲しくなって再訪してくれた」と思ったんじゃないでしょうか?

「お楽しみは文房具 2巻」

 

 2021/03/27                                    

<紹介>

「オレにはずっと嘘をついていたの…?」

アサギが通り抜けてくるはずの竜は、小さい竜のアサを吐き出してからは倒れたままだった。漂着者はもう訪れないかもしれないことを世話役のルールーがずっと黙っていたことに気づいたイサギは…。

どんな言語もすぐ習得してしまう能力の少年が流れ着いた見知らぬ宇宙域で双子の妹を探し求めるSF冒険漫画第5巻。 2021年に「空風館」より発行予定の自主出版本を電子書籍にて先行配信。

<なかせ評>

周りが発する言葉が「日本語」ではないはずなのに日本語に聞こえていることにイサギは気づき、謎はさらに深まる。

「宙脈」のつながりを推察したイサギは思い切った行動にでるが、その結果は…。 

イサギの心を落ち着かせるためにライラが用意した「遊歩道」が魅力的。

<蛇足>

宙脈の謎に迫るイサギだが、彼とライラたちの行動目的とどう絡んで来るか気になる。

物語の時間軸が前後しているので、前回までの状況を思い出すのに2〜4巻までを読み直しました。

「CHAOS×COSMOS - LOST CHILD in the ASTROVEIN 05」

 2021/03/28                                           

<紹介>

「つらいときは食って寝ちまうことさ」

鍛冶屋で邪険にされていた幼子のカイを魔女のラナは買取った。しかし、ラナは王国に対して恨みを抱いている魔女。彼女は恨みを晴らすためにカイをたくましく育てあげる。

3章構成で計14編のショート漫画をつらねた絵巻ファンタジー漫画。

「魔女が子供を拾い、成長後の子供が魔女を愛する」という題材で2018年2月にSNStwitter、pixiv)で流行したハッシュタグ「#魔女集会で会いましょう」にあわせてツイッター公開の漫画をリライトして電子書籍化。

<なかせ評>

「魔女集会」でもあり「眠りの森の美女(マレフィセント?)」でもある。たくましい青年のカイ、4姉妹の魔女たち、優しい国王、聡明な姫、使い魔の犬たちが60ページのストーリーで互いに絡み合い2時間の映画作品にも匹敵する重厚なストーリーを構成。

意外なセリフが物語のキーとなっているのが面白い。

モノクロ漫画だが刷り色をセピア、藍色、深緑と場面の切り替えごとに変えることでわかりやすくする工夫がうまい。紙なら印刷費に響くが、デジタルなら手軽にできるのでもっとこの手法を使う作家が増えてもいいと思いました。

<蛇足>

「#魔女集会で会いましょう」の流行に対してその解釈を後発的に投じた作品と作者自身は評しているようですが、言われなければ「魔女集会」作品であったことも気づかなかったかもしれない。

ハッシュタグは流行当時に私も興味をもっていろいろチェックしてましたが、この本を読んではじめて舞村さんも参加されていたことに気づきました。ツイッター掲載だけで「公開済み」として放置されていたら、舞村さんと結構交流のある私でさえこんな力作を知らずに終わったかもしれないと思うので、感慨深い。

ツイッター掲載当時の絵と見比べるとかなり手間をかけてリライトされているのがわかります。(無料にしてるけど、これ有料販売にしてもいいヤツだよ!)

「百年の眠り」

 2021/03/29                        

<紹介>

「奴らの薄汚さを甘く見てたよ」

反天府組織の人類勢は都市部での爆発の濡れ衣を着せられた。
さらに続く爆発を止めるためにギンガたちは宇宙へと向かうが。

天府が支配する死後の者たちが集まる世界で目覚めた少年 ギンガは反天府軍に加わり戦う。
電子書籍配信にて描き下ろしのSFテイストの長編ファンタジー・バトル漫画の第4巻。

<なかせ評>

反天府組織の人類勢、動物勢、幽魔勢が全集合。
この巻ではこの大勢の個性豊かな面々が一人一人紹介されます。
「人類派のルーキー」ギンガがこの中でどんな活躍を見せるかがたのしみ。

<蛇足>

この作者はKindleでのこのシリーズをの公開以外は創作活動をされている様子が一切見当たらないが、今回の「いっせい配信」で各巻100ページ以上の3巻と4巻をまとめて配信されている。会社勤め傍らの創作活動のようだが、作者のツイッターを確認すると4巻の終盤のコマを昨年4月ごろに制作されていた模様。

5巻も本年中に配信されのではないかと思われます。ストイックに一つの作品をハイペースで制作されている様子が伺えて、その情念に頭が下がります。

「MYMYTH 4 ーマイミス 4ー」

 

 

 2021/03/30                        

<紹介>

「100年先、1000年先に思いをはせる」

90年代よりエコロジーは社会問題として注目されてきたものの、大きな社会変化はなし。昨今、ようやく地球環境に踏み込んだ国内外政府からの発言がでるように。いまこそ日本と世界は持続可能な循環型社会に向けて大きく舵を切るべき。

地球の温暖化防止と生態系との共存への気運を高めるべく制作された「自由闊達に未来に思いをはせた」マンガ作品集。年1~2回ペースで紙&電子にて定期発行予定の一般公募誌「第1号」。

執筆陣:つやまあきひこ、ハイムーン、なかせよしみ、はらだなおみ、wyocka、秋元なおと
発行:「みらいみたいなマンガ集」制作部会 http://hitotu.main.jp/MMM/ 

<なかせ評>

私自身も「にぎやかし」として参加させていただきました。
「ちょっとだけ未来が出てくる漫画をいま描いてるけど、この原稿使います?」と秋元さんに尋ねたら、二つ返事で収録が決まりましたが、…まさか巻頭とは(^^;)。

大変な題目と目的意識で作成された本ですが、肩肘はらず楽しむ読み物として手軽に読んでみるといいと思います。

<蛇足>

秋元さんの縦スクロース漫画のコマを読む順番に迷いました。(縦スクロールと頭でわかってもつい横に視線がいく)ページの真ん中に白い太線を入れた方がいいかもしれません。

秋元なおとさんが「叙情派『ひとつ』」に続いて新たに出された2つ目マンガ集企画。「ひとつ」は2001年に「叙情派って何?」と「よくわからない」まま年1刊行誌として創刊され、20年たった今も「よくわからい」ままながらそれなりにまとまりのある作品集として定着しました。 この「みらいみたいなマンガ集」もどのように成長していくのか見るのが楽しみです。

「みらいみたいなマンガ集2021春号」

 

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私のレビュー中の<紹介>の部分には、それぞれの本の電子書籍ストアでの「内容説明」の文章を「私ならこういう書く」と思った内容で書かせていただきました。電子配信をされている作家さんはよければご参考にして下さい。

 

第15回いっせい配信企画「創作同人2021年3月」

第15回いっせい配信

2021年3月20日春分の日)に創作同人電子書籍の第15回「いっせい配信企画」=イベント名「創作同人2021年3月」が実施されます。この企画は配信する電子書籍ストアを問わず、作品を自主配信してる作家さんが配信日を揃えて、配信情報を互いに広め合うオンラインのイベントです。

 

https://64.media.tumblr.com/a4ccb0f3a2c14078c957116f15b04120/d37429860dc88c5e-31/s540x810/71422feef56bffb8a375f75ac7a239c4167c6cba.jpg

配信日にあわせて3月16日の現時点で8人の作家さんによる12作品の予約購入および購入用チェック(「お気に入り」指定)が可能です。

 

「いっせい配信」は飛び入り参加が可能です。興味を持たれた作家さんは今からでも企画サイトをご覧ください。  

 

「まるかふぇ電書」の新刊は3冊

私(なかせよしみ)と砂虫さんの本を配信する「まるかふぇ電書」は今回計3冊の本を配信します。

 私の「なぞかれ」と砂虫さんの「竜飼い18」は、奇しくも同じ「2010年」制作の作品です。電子化の作業中は11年前にこの作品に取り組んだ頃のことがしきりに思い出されました。お読みになる方も、できれば「東日本大震災」の前年の空気感を思い返しながら読んでいただければ、と思います。    

 

「創作同人電子書籍」と「いっせい配信」

今回配信の「創作同人電子書籍のススメ2021年」では昨年11月に私が週刊連載でtwitter投稿したマンガを中心に、昨今の電子自主配信にまつわる情報を盛り込みました。

twitterの連載はこちらのブログでもまとめましたので、すでにオンラインでご覧になれますが、「オフラインでの購読」や「電子蔵書としての保管」をご希望の方は今回の配信をご活用ください。

y-nakase.hatenablog.com

私が「いっせい配信」企画を実施するに至るまでの経緯を紹介する漫画ですが、
読んでいただければ創作同人電子書籍(作家が主体となって出版社を通さず電子配信で自主販売するオリジナル作品)の活動においての いっせい配信」の意義活用メリットをご理解いただけると思います。

 

コロナ禍の中での「創作同人電子書籍」活動

 「創作同人電子書籍のススメ」シリーズは昨年5月の2020版、今回の2021版でたてつづけ発刊。私の新作発表は昨年2月以降はこのシリーズに傾倒しています。

これはコミケコミティアが以前のような形で開催されないことにはどうしても私が展開している他のシリーズものが出しにくいから、という理由もあります。しかし、それ以上にこのシリーズの情報がいま一番世の中に「必要」だと感じているからでもあります。

 コロナ禍が少し沈静化するとやたらと耳にする「経済を回す」という言葉ですが、本来は2つのアプローチがあるはずです。

  1. 感染増大の可能性をはらみながら「従来の経済活動」に戻す
  2. 感染増大させない「新たな経済活動」を開拓する   

もちろん「新たな経済活動」が「従来の経済活動」に市場規模で追いつくのはなかなか難しいです。 しかし「従来の」の市場規模が縮小した状況下では、その下支えするくらいの役目を「新たな」が担えるはずです。「新たな」市場への参入、その市場での欲しいものの購入、あるいはそこにただアンテナを張り自らの興味の発信。そのような行動が「新たな」市場を開拓し、「従来の」市場の維持につながるのです。

先日、5月開催予定でしたコミケ99の「延期」が発表されました。次は12月開催の可能性を探る形になるものと思われますが、これもワクチンの行き渡りタイミングを睨んだ検討となるでしょう。まだまだ、数万人クラスの即売会イベントが「通常開催」にこぎつくのは難しい思われます。

いまは「従来の経済活動」の復活に力を入れるフェーズか、あるいはその消滅回避のために可能な別手段に力を入れるフェーズか。その時節、時節で考えながら、私たちはこの局面を乗り越えていくべきではないかと思います。

 

 

 

 

『手探り「電子書籍配信」放浪記』

2020年11月12日から12月17日にかけて「電子書籍の配信活動」で私自身がこれまで辿ってきた経緯を紹介する漫画をtwitterで連載しました。以前togetterでもまとめを作成しましたが、専用アプリのフリックではページが飛ぶ等の読みづらいさも確認できましたので、こちらのブログでもまとめました。

その1_P1
その1_P2
その1_P3
その1_P4
その2_P1
その2_P2
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その2_P4
その3_P1
その3_P2
その3_P3
その3_P4
その4_P1
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その5_P1
その5_P2
その5_P3
その5_P4
その6_P1
その6_P2
その6_P3
その6_P4
その6_P5
その6_P6