2025年11月3日に第29回目の創作同人電子書籍いっせい配信企画「創作同人2025年11月」に今回は11名の作家さん&編者さんによる14作品がエントリーしました。
私と砂虫さんの本を発行している「まるかふぇ電書」からの今回のエントリー作品はこちらです。
画像クリックで作品詳細が見られます
今回も他の作家さんによるエントリー作品の紹介文とレビューを書いてみたいと思います。
<紹介>
いわみゆうこさんの個人誌「銀花シリーズ」の4冊目。 家庭料理店「どんぐり亭」を営む姉妹マーリ&ココを描く「どんぐり亭シリーズ」の第19話「flower smile」、近況のトークやカラーイラスト、2019年にうどん会に寄稿のレポ漫「タコvsイカ」「真冬のほぼ貸切BBQ♪」「2019年ラグビーワールドカップ観戦記at熊谷」の3編を収録。2025年8月のコミケ106にて「雪待月」より発行の冊子を電子書籍化。
(全年齢向け/本文フルカラー(漫画部分モノクロ)/24p)
<なかせ評>
「どんぐり亭」はニナとマーリの開店準備時間のおしゃべりエピソード。テーブルを飾るお花を話題にガールズトーク。マーリの期待に応えようとはりきるニナがかわいらしい。
BBQ回のレポ漫に出てくる材料とレシピが別人に任された「ハンガリー料理」の味がとても気になりました。
淡い色使いのイラストともども、ほっこりしながら読める一冊でした。
<蛇足>
うどん会に寄稿のレポ漫の話題はいずれもコロナ以前のお話でしたが、コロナ以降のアウトドアライフには変化があったのか、相変わらずなのかが気になりました。
<紹介>
「どうだ 私の術は強さまで写し取れるのだ!」
野良之介が対峙する二人の忍び。片方が変わり身の術で野良之介に変身し、野良之介と互角に戦って見せているところで、もう片方も変わり身の術を用いるが…。
主人公が「野良之介」であること以外は一切ルール不要の超展開2ページ構成の時代劇(?)ショートギャグ漫画集の第5弾。 2023〜2025年のイベント参加ペーパーに掲載の8編と描き下ろし1編(第62〜70話)を収録。2025年9月に開催のコミティア153にて「電脳吟遊館」より発行の冊子を電子書籍化。
<なかせ評>
毎回、2ページ構成なので1ページ目をみてその先の展開を予想するが8割くらいは予想を覆される。イベントで会う度にいただける無料ペーパー配布で新作を読むのを楽しみにしていますが、まとめ本で読むとテンポのいいコメディ集として再度楽しめます。
<蛇足>
個人的に特に好みなのは第62話「変わり身の術」編のようなロジカル展開のネタ。またスマホアプリや偽サイトのネタを時代劇に落とし込んでいる描写も楽しい。
<紹介>
「なんで巨大化してるんだ!?」「ちょっと怪獣退治してて…」
平凡な高校1年生の鎧 直樹(よろい・なおき)君。彼の朝は2階の窓をたたいて彼を起こす幼なじみの巨大ヒロイン「ジャン子ちゃん」の目覚ましではじまる。
幼なじみが巨大化して怪獣や宇宙人と戦って自分を守ってくれる戦闘と生活が交錯する日常を描く特撮バトルマンガ。2025年10月にPixiv及びジャンプ・ルーキー!にて発表の読み切り短編マンガを電子書籍化。(全年齢向け/本文:モノクロ/16p)
<なかせ評>
ウルトラマンを彷彿させるカラーデザインの変身ヒロインがバトル。細かい説明をいっさい省略でシンプルなストーリーを構成しているため、作者の特撮愛とマンガでやりたかったことがより際立って、読者にびしびし伝わってくる快作。
<蛇足>
細かく見るといろいろ疑問が生じる点がありますが、(直樹が宇宙人になぜ狙われているのか?宇宙人と怪獣はどういう関係なのか?ジャン子の頭のヒーローパーツは取れないのか?)そこらはあまり気にならず作品を楽しめました。
ただ、コスモアーマーが直樹の愛の力で装着できるのは理解できたのですが、そのアーマーが直樹自身であることには2度目に読んではじめてきづきました。てっきり、カプセルから直樹がいなくなったのは、ジャン子がダイナマイト・ターックル(「タックール」ではなく「ターックル」なのね)の際に救出したのだと思いました。ここらは誤解が生じないよう、もう少し描き方を工夫した方がよかったです。
Pixivとジャンプルーキー!ではトーン貼り、電子書籍はグレースケールで登録されていましたが、グレースケールの方が目に優しい感じなので、そちらに統一した方がいいように思いました。
<紹介>
「じゃあ お前に任せる お手柔らかに頼むよ」
人魚の漣は「人魚の番」となった朔に抱かれることによって人間の姿になる。その人魚の番としての役目に踏み切れない朔を見かねた玉響は二人を部屋に閉じこめたが…。
漣と朔。不老長寿の人魚とその眷属である「人魚の番」を描いた「人魚泡沫奇譚」シリーズの番外編第3弾。シリーズ第5巻「漂泊の果て」の初夜エピソードを漣の視点で詳しく描く。 2025年3月のJ.GARDEN57にて「UMIN’S CLUB」より発行の自主出版誌を電子書籍化。(女性向けBL/表紙フルカラー:本文モノクロ/16p)
<なかせ評>
タイトル通りのエピソードを緻密に描いたBL「絡み」マンガ。BL絡みだが華奢な漣と骨太な朔の組み合わせは普通に男女のような絵面になるし、漣のびびってるシーンなども納得の自然な流れなので、BLに興味がない読者にも普通にエロとして読めます。
巻末の2ページエピソードはエモい話と思って読んでたら、最後のキャプションで笑い。「判明」したということは、それまで3年、二人とも気づいてなかった…ってことですよね?
<蛇足>
細かなツッコミですが、人魚の姿で下半身が魚の漣は排泄孔が前後のどちらについてるのかが気になりました。実は「クジラは体の構造上、後尾の際には正常位になる」という記事を最近読んだばかりだったので。
<紹介>
「さて 買ってからが本番だ」
身長が同じ150cmの二人の女の子、百花(ももか)と五十羅(いそら)は恋をした。服のお買い物に行くのも二人一緒。そして二人で市販服を買った後は…。
創作同人漫画即売会「コミティア」の開催150回を記念に発行した「150」がテーマの合同誌。
執筆陣:山名沢湖、水寺葛、ほしのゆりか、片倉あおい、石井美凛、zama36、二条都、村上リコ、李えるざ、さまこ、しましま
2024年11月のコミティア150にて「突撃蝶々」より発行の冊子を電子書籍化。
(全年齢向け/本文モノクロ/52p)
<なかせ評>
「150」という難しい数字のテーマに挑む11人(?)のコミティア作家によりストーリー漫画、4コマ漫画、短編小説、旅行記、イラストを詰め合わせた合同誌。テーマに沿わせるため参加作家さんたちが150をどう解釈するか苦労して頭を捻った形跡がうかがえて面白い。結果として作家さん各自が自分の作風にあわせて150を年数にしたり、回数にしたり、身長にしたり、テストの点数にしたり、語呂合わせにしたりと工夫を凝らした作品が出揃っている。
個人的にとくにすごい、この人ならでは!と思ったのは「150年前のイギリス」がテーマのフォトエッセーを寄せた村上リコさん(英国執事やメイドなどについての解説著書を出されているライター)でした。
<蛇足>
自分がこのテーマを振られたら「150」という数字をどう使うか考えて「…温度150°はどうだろう?摂氏?華氏?…華氏150°なら摂氏65°で低温サウナくらいの温度になるが」などと想像を巡らせれました。
<紹介>
「亀 なんだよ」
商店街で人間くらいの大きさの二本足で歩く亀を見かけた男は、妻に教えてやろうと走って帰った。しかし、妻は…。
小説家の北野勇作氏がTwitter(現X)で毎日発表のマイクロノベルより選り抜きで構成の「ほぼ百字小説」シリーズの各話を内海まりお氏が1話1ページでコミカライズ。2025年9月のコミティア153にて「まり王」より発行の冊子を電子書籍化。収録全30話(全年齢向け/本文モノクロ/40p)
原作出典
ありふれた金庫 (シリーズ百字劇場)
納戸のスナイパー (シリーズ百字劇場)
ねこラジオ (シリーズ百字劇場)
かめたいむ (シリーズ百字劇場)
交差点の天使 (シリーズ百字劇場)
<なかせ評>
わずか100文字前後で、なにげない日常描写や状況描写から書き出した文章がで不思議な世界へと読者を導いたり、予想を裏切って笑わせたりする北野氏の原作。その感覚をそのままに1作1ページ(2ページ、4ページのものもあり)で無国籍画風の内海氏がマンガ形式にビジュアライズ。そのシリーズを30作まとめて綴じたこの冊子は高密度な哲学書とも呼べる重みを訴えかける。
北野氏の原作は最後の一言で世界観をひっくり返す展開のものが多いですが、それを時にはダイナミックに、時にはするっと最後のコマにまとめる内海氏の采配に唸らされます。
<蛇足>
個人的には私は内海さんが描く狸や亀といった動物が大好き。人間とは別の価値観で生きている雰囲気を漂わせながら、どこか人懐っこさを感じられるコミカルな描写が秀逸です。
<紹介>
「コレクションノートも実際に作りました!」
2023年2月に東京卸売りセンターにて開催の第2回文具マーケットに出展者として参加した作者。文具づくしの自スペースに並べたオリジナル文具にはずっと作りたかった「入手した文具とかをメモしていく専門ノート」も加えた。
もと文房具店員でもある作者が思い出や昨今の文具界の動向をつづる文具コミックエッセイ。Webマガジン「文具のとびら」にて毎月3ページ連載のシリーズの選集(2020.12.5〜2025.9.5)第4弾。「メルプのお部屋」より2025年11月に開催の「おもしろ同人誌バザール@神保町2025秋」に発行の自主出版誌を電子書籍化。
(全年齢向け/本文一部フルカラー/44p)
(収録リスト)
#58 「手描きで工夫してまんがを描こう!」
#40 「年末は文房具の整理整頓をしたい!」
#61「「本」が作りたい子ども時代!」
#66「イベントにオリジナル文具を出品したいぞ!」
#67「文具マーケットに参加したぞ!」
#71「ペンケースを求めて行列に並ぶ!」
#96「山形駅・文具店めぐりの旅」
#97「無くしたノート、戻ってきて!」
【描きおろし】無くしたノートの手がかりを求めてネットで検索したら……
#88「ひとつの電卓が冬の時代を暖かくする!」
#94「やりたいことを100個書くぞ!」
#90「完売していた年賀スタンプとは?」
#89「2025年はこの手帳といっしょにがんばる!」
【描きおろし】2025年の手帳、その後……
<なかせ評>
「喜怒哀楽」満載の文具コレクションライフを送る作者の日々を存分に詰め込んだ第4巻。
ただのコレクターではなく、さらにアクティブに活動を広げている様子が伺えます。特に今回は文具コレクターの痒いところに手が届く記録用のオリジナルノートを作成したという話がかわいい表紙デザインと相まって興味深い。またコレクターとしての収納の悩みも興味深く、その悩みの解決をやはり文具で図っているのは「さすが」だと思いました。
<蛇足>
思い入れのあるノートを無くし、それを取り戻したというエピソードでも作者の心情描写が心に響きました。描き下ろしページに書かれたその途中のエピソードにも大笑いしました。
<紹介>
「もう300年ほど前だけど化石燃料時代の終わりを象徴するビルなんだよ」
21世紀の「過去」から来たトスカ姫とジョーカーを連れてトキ、フーちゃん、サリさんが訪れた「循環ビル」。そこは雨水と生活廃水を循環させて下階では魚を養殖し、上階では反射板で太陽光を取り入れた畑や田んぼの作物を育てている。ここでは家畜も養われ、温室ではバナナやコーヒーまでもが栽培されている。
地球環境問題や未来のことをテーマに一般公募して制作された一般公募マンガ同人誌の「第10号」。年2回ペースで紙&電子にて定期発行。
発行:「みらいみたいなマンガ集」制作部会 http://hitotu.main.jp/MMM/
(全年齢向け/本文:フルカラー&2色カラー/101p)
収録作品:執筆者
どすこい未来!: 秋元なおと
ハロー!未来風景 (1)星を継ぐ生き物 :いくろん
ハロー!未来風景 (2)未来ヨガ :いくろん
カカ島区物語 9話 循環ビル :秋元なおと
ゴミック新作集18-1~12 :ハイムーン
里山どんぐり 鏡開き編 :つやまあきひこ
終末時計から地球時間へ :くりもとりゅう
ああ憂鬱なる環境漫画家 03 さあ賞レースへ :秋元なおと
天皇陛下の1.5℃ :秋元なおと
可視化する気候変動 1~2 :秋元なおと
気候変動ニュースピックアップ:秋元なおと
音楽アルバム「KIKO=KIKI」:秋元なおと
本の紹介:秋元なおと
再生環境カレンダー2026の紹介:ハイムーン
<なかせ評>
エコロジカルでサステナブルな世界に変貌した未来を描く「カカ島区物語」シリーズに今回描かれたのは田畑が何層も重なるビル。外部からの資源供給を必要とせず、ビル内に住む住民によって維持管理され、あらゆる食料を自給で賄うことができる。その屋上ではビル オリジナルの土産物が売られ、来客からの現金収入も得られる…と微に入り細にわたる設定の作り込みに唸らされました。
タワーのようにそびえ立つビルの周辺は一面の緑が広がる平野の中を低層の建物が点在するエリア。一つ気になったのは、もとともそのような周辺エリアの中でこのビルは象徴として目立つよう、際立った構造で作られたのか、あるいはもとは高い建物に囲まれててなんらかの災害で唯一残されたのか。それによってこのビルの印象は大きく変わるように思いました。
<蛇足>
継続的に考えねばならない「エコロジー」や「SDGs」の問題に対してこの定期発行誌がちゃくちゃくと活動を続けているのは大変意義深いです。これを通じて現代社会に潜む危機感が読者に共有されれるのは望ましいと思います。ただ、一方で危機感を共有した読者がその不安を解消するための具体的アクションへの示唆などがあまりないことが気に掛かります。
その点については、最近私も自身のマンガ表現で取り組みはじめたものがあるので、もしかすると次回以降のこの誌にまた関わるかもしれません。
--------------------------------------
これから数日かけて、他のエントリー作品の紹介とレビューをこのブログ記事に書き足していく予定です。
私のレビュー中の<紹介>の部分には、それぞれの本の電子書籍ストアでの「内容説明」の文章(=書誌)を「私ならこういう書く」と思う内容で書かせていただきました。電子配信をされている作家さんはよければご参考にして下さい。














































