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漫画家「なかせよしみ」がちょっとまとまった文章を公開するためのブログ

第17回いっせい配信企画「創作同人2021年11月」

第17回いっせい配信

2021年11月3日文化の日)に創作同人電子書籍の第17回「いっせい配信企画」=イベント名「創作同人2021年11月」が実施されています。この企画は配信する電子書籍ストアを問わず、作品を自主配信してる作家さんが配信日を揃えて、配信情報を互いに広め合うオンラインのイベントです。

 

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配信日のである本日11月3日の現時点で15人の作家さん&編者さんによる23作品が入手可能です。

 

「いっせい配信」企画は配信日より1〜2日の誤差内の期間(11月1日〜5日)は随時「飛び入り」可能です。まだ電子配信されていない自作のオリジナル作品があれば参加費無料、事前申請不要、「漫画」「小説」「イラスト集」「全年齢向け」「成人向け」等々のジャンルは不問なので、興味のある作家さんは企画サイトをご覧ください。 

「まるかふぇ電書」の新刊は3冊

私(なかせよしみ)と砂虫さんの本を配信する「まるかふぇ電書」は今回計3冊の本を配信します。

砂虫さんのネコ漫画&イラスト本は… 実は7月の「第16回いっせい配信」の準備を重ねていた頃にわが家は子猫を新たに一匹拾いました。そして4ヶ月後の今回に砂虫さんはその子猫についての本を出すという「スピード執筆」です。お読みいただければリアルタイムな猫との暮らしを楽しんでいただけると思います。
「竜飼い」シリーズは20巻目となりましたが、これまで明かされなかった「半月村」やそこでのMC(ムーンチャイルド)たちの役割が明らかになります。これまでの長編シリーズ全般を解き明かす鍵が含まれている巻ですので、どうぞ読み逃しはなく。
私は前回に続いて「吾妻こはる」のシリーズを描き下ろしました。日常の中のエロチズムを追求するシリーズで、今回はコロナ禍の「新日常」を描いてみました。

成人向け作品の模索

前回の「第16回いっせい配信」から私の新たな試みとして手がけています「成人向け」作品。主なターゲットはDLsiteやFANZA等の「同人ダウンロード」系のサイトで購入する読者層で、そちらの需要に合わせた作品を目指しました。

しかし、蓋を開けてみると、その本はそれらのストアで購入される数よりBOOK☆WALKERKindleの方が多い。また、それらのストアでは成人向けの「18禁本」より同時に出した「全年齢向け本」の方が5倍の売り上げを記録しました。

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その本が「成人向け」の需要に達してなかったことは明らかです。それについては何が悪かったのかを検討して、思いつく様々な要素を盛り込み、第2作として作ったのが今回の本です。
その結果なのか、前回の本ではKoboでの配信登録では問題なかった『一般マンガ』としていたカテゴリー申請が今回は「『エロチック』のカテゴリーを指定してください」という連絡でリジェクトされ、Kindleからも前回はなかった「成人向け作品なのでこういう扱いになります」という通知が届きました。

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前回と違ってちゃんと「アダルト向けコンテンツ」扱いされているということは、とりあえず「さいさき」はいいのかもしれませんが、
…はてさて、ターゲットとするストアでの購入増加に結びつくかどうかは、これからです。

電子自主配信にまつわる昨今

2021年の夏にピークを迎えて新型コロナの感染拡大の第5波も9月には収束の一途をたどり、現在はほぼ「収束」していると言って問題ない状況に入りました。
2週間後にはコミティアが開催され、来年2月には2年振りの「東ホール開催」も予定されています。また今年の12月にはコミケが再開される方向で準備会も動いている模様です。
ただ、まだ感染拡大の第6波 第7波の懸念は拭いきれず、これらのイベントもコロナ前のにぎやかさを取り戻すにはまだしばらく時間がかかるように思われます。
その不足を補うべくなのか、通販や電子販売をベースにしたオンラインのイベントが様々新たに企画され、実施されている模様です。電子書籍の各ストアもロイヤリティ割増期間など設ける等で自主出版の作家を取り込もうと躍起になっている模様です。
中でも特筆すべき動きを見せたのは「Kindle無料マンガ(インディーズマンガ)」。こちらに無料購読作品として登録されている書籍には購読されたページ数によって分配金が作家に付与されます。2021年9月〜11月はその分配金の総合計額を毎月1000万円になるというアナウンスを10月の半ばに発表しました。

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Kindleのインディーズマンガは読者から代金を徴収しないので、直接収入を生まない事業にこれだけの金額をおしみなく支払うという話です。アマゾンが「いまこそ作家さんたちにはKindle配信に馴染んでもらいたい」と切望いていることが見てとれます。
ただ念のために言っておきますと、分配金の増以上にKindle無料マンガに参加している作家数は増え、さらにそれ以上に現在は読者数が増えているので、無料マンガ全体の講読ページ数が増えている都合上、一書籍の一購読で付与される金額はほんの僅かな額です。
自主配信をされている作家さんは無料マンガに登録して多くの読者を獲得して分配金を狙うか、有料登録して購入読者からの直接的な売り上げロイヤリティを獲得するかは思案のしどころです。

いずれにせよ、創作作品の自主配信活動を取り巻く環境はいまも揺れ動いていて、目が離せない状況は続いているわけです。