11月3日に創作同人電子書籍の第1回「いっせい配信」企画(創作同人2016年11月)が実施されて12日経ちましたので、そろそろ企画についての結果をご報告したいと思います。
この企画は漫画同人即売会などに参加して、漫画、ライトノベル、イラスト等のオリジナル作品の冊子を発行する活動をされている日本全国で総勢4桁の人口にも上る作家さん(創作同人作家)が「電子書籍」も活動の範囲に取り入れられることを推奨する目的で実施しました。具体的には、電子書籍をいっせいに配信する日程を定めることで以下の効果を期待するものでした。
- 創作同人誌の電子書籍配信活動をはじめるのに良い機会を作ること。
- 配信には必須な作家自身による広報活動を集約して発信力を高めること。
この企画に先立ち、今年の8月21日には東京で開催の創作漫画即売会「COMITIA117」にあわせて「紙&電子同時発行」企画を実施しました。今回の企画はその8月企画に対する反省点等を踏まえて新たに立ち上げたものでしたが、主だった改変は以下の通りです。
- 紙冊子の発行時期を問わず「はじめて配信される電子書籍」を対象とした。
- いっせい配信日は一回きりにせず、間隔をおいて連続的に設定することにした。
- 配信日を1日間に限定せず、前後1〜2日の誤差を許容可能とした。
以上より、作家は各人の都合のいい時期に、自由度の高い日程で電子書籍化にのり出せる企画になりました。
企画のエントリー状況
エントリーした書籍の一覧は企画サイトで見られます。>http://sousaku-doujin-epub.jimdo.com/企画参加書籍/
概要をまとめるとつぎの通りです。
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企画エントリー本(登録確認順)
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著者 |
発行元 |
配信先 |
1 |
RED&BLUE5 |
WEB MANGA ZUIZAN |
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2 |
草原を行く風 |
いわみゆうこ |
雪待月 |
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3 |
創作同人電子書籍のススメ |
まるかふぇ電書 |
BOOK☆WALKER |
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4 |
そぞろ寒 |
smison |
す |
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5 |
MP-ML1 |
川太郎 |
MP-ML |
BOOTH |
6 |
時空救助隊うさぎレスキュー完全版 |
十野七 |
ミニマムセンチュリー |
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7 |
applesongs |
しょうじ ひでまさ |
appleorchard |
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8 |
かっぱとせ |
斉所 |
斉所 |
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9 |
みひらき。 |
ハチマキ |
ハチマキ球団 |
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10 |
もぐもぐ米 |
砂虫 隼 |
まるかふぇ電書 |
BOOK☆WALKER |
11 |
食べ物漫画の舞台裏 |
砂虫 隼 |
まるかふぇ電書 |
BOOK☆WALKER |
12 |
うひょねこ団10 |
大空真紀 |
まるちーず |
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13 |
Woldirous Sin 9 |
報沢 |
M2BRAND |
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14 |
Woldirous Sin 10 前編 |
報沢 |
M2BRAND |
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15 |
Woldirous Sin 10 後編 |
報沢 |
M2BRAND |
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16 |
大江戸七十七夜 |
クロ僕屋 |
クロ僕屋電書 |
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17 |
十月の不死者の回想 前編 Woldirous Sin |
報沢 |
M2BRAND |
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18 |
十月の不死者の回想 後編 Woldirous Sin |
報沢 |
M2BRAND |
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19 |
ロンドンの佳き日 採録 5 |
BELNE |
アート |
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20 |
ロンドンの佳き日 採録 6 |
BELNE |
アート |
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21 |
ロンドンの佳き日 採録 7 |
BELNE |
アート |
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22 |
春陽 |
BELNE |
アート |
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23 |
レゾンデートルへようこそ |
保スカ |
e-comebook |
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24 |
でっかいちゃん Giantess DEKKAI-CHAN 1 |
Kindle |
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25 |
でっかいちゃん Giantess DEKKAI-CHAN 2 |
Kindle |
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26 |
夜のでっかいちゃん Giantess DEKKAI-CHAN of the night |
Kindle |
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27 |
姉とでっかいちゃん Giantess DEKKAI-CHAN and sister |
Kindle |
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28 |
クリーム e.p. |
舞村そうじ |
RIMLAND |
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29 |
サンタクロース・イズ・カミング・スルー・ザ・バスルーム・ウィンドウ e.p. |
舞村そうじ |
RIMLAND |
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30 |
Finland Switch+ |
樹港 |
nekoism |
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31 |
Finland TravelII |
樹港 |
nekoism |
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32 |
星子島区レポート |
秋元なおと |
メタ・パラダイム |
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33 |
みかげ |
大空真紀 |
まるちーず |
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34 |
ハーメルンの幻燈師 01 OPENEND JUNCTION |
樫居晶 |
空風館 |
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35 |
たかみ弌 |
ein |
BOOTH |
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36 |
突発性ヘマトフィリアの憂鬱 |
樫居晶 |
空風館 |
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37 |
保スカ |
e-comebook |
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38 |
でもくらちゃん book3 |
まるかふぇ電書 |
BOOK☆WALKER |
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39 |
夜のとばりに向かって 体験版 |
著者:野浦湘 イラスト: 南風麗魔 |
野浦書院 |
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40 |
きぃのお迎えとジューシーズ |
ちえぞー |
バードマン |
Paboo |
エントリーした作家数は8月の企画で29人だったのに対して今回は24人で、幾分の減少ですが、作品数は8月が34作に対して、今回は40作で増加。ただ、8月はエントリーとしてカウントしない新刊以外の同日配信を含めると49作ありましたので、その数量と比べると今回はエントリー作品数も減です。ジャンル的にも、8月は文芸や成年向けの作品も数点エントリーがありましたが、今回はそれらはなし。つまりは全体的に8月よりエントリー数と内容の幅が幾分縮まった形となりました。
ただ、今回の企画は一回きりのものではなく、この先長く続けるもの初回です。そう考えれば、これはこれで「そこそこよい立ち上がり」と言えると思います。
企画の販売状況
企画の販売実績については、私自身が販売しているものの売れ行きで企画の全体状況を類推するしかないですが、…今回の販売結果を一番物語るのは多分、私が運営している「まるかふぇ電書」から出している私(なかせよしみ)と妻(砂虫隼)の作品のAmazon Kindleでの販売総数の推移だと思います。8月と今回の企画で重ねて表示したのが以下のグラフです。
配信日直後は8月と今回は同程度のピークを示していますが、その後は今回の企画の方が数割増しで推移しています。「読者へ配信の情報を訴えかける」という企画の意図から考えた場合、8月の企画より今回の企画の方が有効性が高かったと判断できます。
8月の企画では5月から7月にかけて、企画広報のチラシを数千部を全国のコミティアで配布しました。また8月は数千人が参加する漫画イベントである「COMITIA117」に絡めた実施でした。今回の企画にはそのような物理的な広報はほとんどありませんでした。せいぜい10月23日の「COMITIA118」で私がサークルの新刊として頒布した冊子「創作同人電子書籍のススメ」だけです。
むしろ、今回の企画で広報の中心となって読者へのアピール力を高めたのはツイッターを中心とするネット上の広報活動だったと思われます。
ネット上の広報活動
今回の企画では企画サイト側も、企画参加作家さんも、またBOOK☆WALKERもネット上での「企画広報」に力を入れてられました。
まず、企画サイトは8月の企画ではエントリー作品一覧を配信日の数日後に作成しましたが、今回は配信日に先立って作成し、エントリーが確認され次第、作品情報を逐一追加していきました。
また、企画のツイッターアカウントでは企画に関する「#創作同人電子書籍」のハッシュタグ付きツイートを満遍なく拾い、再配信しました。このハッシュタグのツイートは企画参加の作家のみなさんも多く再配信して下さいました。
BOOK☆WALKERは8月の企画にひきつづき今回の企画のため特設ページを用意して下さった上に、今回はインディーズ専用ツイッターアカウントでかなりの頻度でそのリンクのツイート発信を今もつづけてられます。
創作同人2016年11月の作品リストはこちらです!
— BWインディーズ 文フリ東京 1F63 (@BW_indies) 2016年11月14日
ぜひお買い求めください!https://t.co/vfzEOHho5G#創作同人電子書籍 #BWインディーズ
また、今回の企画広報を一番頑張られたのはなんと言っても企画参加作家さんでした。企画参加の書籍について、あるいは企画そのものについて画像つきのツイートを発信されたものが多くの読者に印象付ける結果となったと思われます。また、幾人かの参加作家さんはこれらの発信を見て企画参加を決意された様子でした。
企画に関して作家さんが出された画像つきツイートも企画サイトの方でまとめました。>創作同人2016年11月広報画像 - 「創作同人電子書籍」いっせい配信企画
今後の展開
以前より、電子書籍はSNSやインターネットとの親和性の強い媒体であることは感じていましたが、今回の企画ではそれがより実証されたと感じます。
実は企画の継続を考える上での「いっせい配信日」の設定については、コミケやコミティアといった大きな同人イベントの日程と絡めていくべきか、あるいは日程を引き離すべきか迷いがありました。しかし、今回の経験でこれは引き離す方が正解だと感じます。
8月の企画はイベント準備に私を含め、多くの作家さんは手を取られ、電子書籍ストアで展開する企画の広報にはあまり手が回りませんでした。また、今回のようなエントリー書籍の情報の総まとめもオフラインのイベント参加の準備かたわらでは困難でした。
今回はさらに「いっせい配信日」を「文化の日」という祝日に設定しましたが、これもいくつかのいい結果をもたらしました。実は、翌日が休日とのことで、前日に思い立って急遽、作品の電子化作業をすすめてエントリーが期間内に間に合った作家さんがおられました。
また、作品受け入れ側としても、BOOK☆WALKERは祝日と土日は書籍の配信手続きは行われないのですが、祝日の前日はそれが稼働しているので、「前日の登録で配信日にちょうど間に合った」という作品も数点ありました。
そんなわけで、今後もこの企画での「いっせい配信日」はなるべく「祝日」で設定しようと考えています。次回は当初の計画通り、来年の3月20日の「春分の日」の「創作同人2017年3月」となります。
この企画のエントリー基準については、今後もひきつづき「はじめて電子書籍化する創作同人誌」の一言のみとする形は継続したいと思います。今後もその内容は「新刊」「既刊やバックナンバーや総集編」「これから紙冊子化して同人イベントに販売予定の本」といった区分は問いません。
一方で、「企画にエントリーする作品のテーマを統一してはどうか?」という意見も多数寄せられました。「いっせい配信」企画自体はなるべく手軽に参加できて、なるべく多くの作家さんが活用できる機会として維持し続けたいと思いますので、テーマの縛りを設けません。しかし、そのような取り組みを否定するものではないので、企画の内外でテーマ統一での電子書籍発信を計画される方々も応援したいと思っています。
実はちょうど今、BOOK☆WALKERが企画している12月の「グルメ同人誌フェア」というものがあります。企画のツイートアカウントではこれにまつわる情報も回していきたいと考えています。
12月初旬から1週間程度グルメ同人誌のフェアを予定しております!食レポやグルメマンガなど自書をお持ちでしたら、BWインディーズにぜひ11月中に配信登録ください!登録はこちら→ https://t.co/VoUJrz6gtz #BWインディーズ
— BWインディーズ 文フリ東京 1F63 (@BW_indies) 2016年11月15日
また、第2回以降のこちら「いっせい配信」企画内で数名の作家さんがテーマを統一したエントリーなどをなされる場合は、企画サイトでもなるべくそういう動きを紹介していきたいと考えています。面白い企画がありましたらどんどん発信いただければと思います。
どうぞ、今後ともよろしくお願いします。
参考情報
ところで、今回の企画に際してちょっと面白いデータが確認できたので、紹介させていただきます。
先にも書きました通り、今回の企画に先立って、8月の企画と今回の企画を紹介した冊子を私はCOMITIA118で発売した後に「第1回いっせい配信」にもエントリーさせました。その販売数の比率を私が配信している5つのストアについて割り出してみますと、以下の結果になりました。
この結果について二つほど特記したい点があります。
ひとつはKindleとBOOK☆WALKERの販売数ですが、双方ともそこそこは「ある」点です。さすが「電子書籍界の王者Kindle」の方が多いのは多分、以前よりAmazonでの買い物経験があり読者がそちらを選びやすい傾向にあることの現れだと思われますが、それでもB☆Wも無視できない読者数を獲得しています。
今回の企画にエントリーされた作家さんの中にはKindleかB☆Wのどちらか一方のみで配信されている作家さんが結構います。作品内容によって個々のストアでの獲得読者数の比率は違ってくるとは思いますが、この2ストアについてはまだ配信されていない方にも今後は出されることをお勧めします。
もう一点はお気づきいただきたいのは、ほとんど読者を獲得していないiBooks、Puboo、Koboの中で、Pubooのみが読者を2名獲得している点です。実はこれはPubooがネット上で一番ストレスが少なくサンプルページを読めることに起因していると思われます。実際に開いてみれば納得すると思いますのでお試し下さい。>パブーのサンプルページ
また、ネット上でサンプルを読ませるのにストレスが少ないストアにはもう一つ「マグネット」があります。こちらも読み心地をご確認下さい。
上方で書きました通り「電子書籍」というものはSNSやネットでの活動と親和性が強い媒体です。ネットにおけるこのようにストレスの少ない購読手段は電子書籍の販売促進にとって大きな武器になります。是非とも活用されることをおすすめします。
どうぞ、ご参考にしてください。