2023年3月 21日 に第21回目の創作同人電子書籍 いっせい配信企画 「創作同人2021年3月」 に今回は現時点(3 月24日)で12名の作家さんによる14書籍がエントリーしました。
togetter.com
私と砂虫さんの本を発行している「 まるかふぇ電書 」からの今回のエントリー作品はこちらです。
画像クリックでサンプルページが見られます
今回も他の作家さんによるエントリー本の紹介文とレビューを書いてみたいと思います。
2023/3/24
UMIN
発行:UMIN'S CLUB
内容:10p
110円
<紹介> 「主様の匂いだ!」 主様の帰りが遅いと寂しがる白兎は、昔はよく主様の袍にしがみついて寂しさをまぎらわせていたことを思い出す。懐かしくなって主様の袍を取り出す彼だが…。
「人喰いの魔物」と「魔物に飼育される少年『白兎』」の暮らしを描く中国風ファンタジー BL「魔物の晩餐」シリーズのほのぼの番外編第1巻。2018年3月開催のJ.GARDEN44にてUMIN'S CLUBより自主発行のコピー誌を電子書籍 化。 (健全BL/本文:モノクロ/8ページ)
<なかせ評> 自分の留守中の少年の行動を覗き見る魔王。ストーリーはオーソドックスながらも、少年のかわらしい言動や表情で読者が寄せる期待を確実に満たした展開。
<蛇足> このシリーズではこの話しか読んでないのですが、最後の魔物のセリフは他の話を読んでるかどうかで印象が違うかもしれません。(私は「ルーとソロモン(三原順 )」の決め台詞のように感じました) シリーズ自体は成人向けな中で、この一編は健全BLなので切り分けたように思いますが、単体の独立した読み物としては少々成り立ちにくいようにも思いました。 2018年にPixivなどで流行した「魔女集会」の創作活動から派生した作品群かな?と思ったのですが、調べてみたらそれ以前から描かれていたシリーズだったので、ちょっとびっくりしました。
魔物の抱擁
2023/3/25
小津端 うめ
発行:千秋小梅うめしゃち支店
内容:42p
110円
<紹介> 「でも、働かないと生きていけないし」 急に映画祭のボランティアをやめた母に代わりその穴を埋めに来た娘の神西妙(じんぜいたえ)は館長たちと意気投合。しかし、母の明菜はエルカンの不法就労 をSNS で暴露。映画祭は窮地に追いやられた。
中東の映画の映画祭を開催する映画館に関わる人たちの4日間を描くシリーズの「3日目」第1部(全3部)。2022年11月開催の新潟コミティア 55にて「千秋小梅うめしゃち支店」より自主発行の冊子を電子書籍 化。(全年齢向け/本文45p)
<なかせ評> 在留外国人の就労問題に言及する今回のお話。ストレートな物言いの妙(たえ)が問題点にダイレクトに切り込みます。さらに彼女が加わることで登場人物たちの対話が進み、個々が抱える諸々の問題の共有されていく過程が面白い。とくに館長の百合に昔の自分を思い出させようと龍太郎がとった行動の一幕が ドラマチックな展開でした。
<蛇足> 作者さんは当初このシリーズを1日=1冊の4日分ストーリーとして計画されてる様子だったので、「この複雑なストーリーを4話でまとめられるの?」と心配していたのですが、3日目を3話構成にする計画に変えられたようで、ちょっと安心。魅力的な人物配置で繰り広げられているドラマなので、あわてずじっくりと取り組んでいただきたい。
14Pでエルカンは「仮出所」と言ってますが、ちょっと気になって調べてみたらこれは刑務所に収容された場合の言葉で、エルカンは多分入国管理局に収容されていたので、この場合は「仮放免」と言うみたいです。ちなみに入管施設に収容された外国人の「仮放免」には保証金(数十万円程度)と身元保証 人が必要のようです。
東の果ての映画祭3日目AM
2023/3/26
<紹介> 「数百個の小型核爆弾を起爆させて前進する」 核パルス推進船「イッパツカマセ」はあらゆる陸地から最も離れた地点から打ち上げられ、搭載質量1万トンの補給物資を軌道上まで送り込む。広報を兼任するせ整備員の私はこの宇宙船に乗り込んでレポートします。
現代技術の延長上で宇宙への大量輸送を可能な「核推進」を紹介する単発読み切りSF漫画。付録コラム「核パルス推進船」も収録。2023年2月に開催のCOMITIA143にて「人類圏」より発行の自主出版誌を電子書籍 化。(全年齢向き/本文:29P)
<なかせ評> 多分日本初の「核パルス推進船」をメインに出した漫画とのこと。核爆弾の起爆で推進するシステムの図解がわかりやすく面白い。描写は絵画的でもあり、いつまでも眺めていたくなる。「核推進」の実用化に際しての最大のネックは技術的な面より「核」に対する現代人の不信感をどう克服するかにあると導く展開も興味深い。中核は技術設定の紹介漫画なのに、かわいい女の子の登場をきっちり組み込む構成は八木まんがファンの期待を裏切りません。 今作には長編ハードSF「人類圏」シリーズの主役の「鎹涼子」も登場するが、設定は「ジャーナリスト」ではないので、外伝というよりパラレルワールド もしくは「前史」かな?
<蛇足> たまたま今回の「いっせい配信」で私も八木さんと同様に「一つの科学技術を中核にした読み切り漫画」をエントリーさせていて、双方とも「その技術をとりまく社会や情報のありよう」に話がシフトしていたのでびっくりしました。それぞれの題材を双方がどういう漫画に昇華させたか、という観点で見るのも面白いかもしれません。
個人的には核への不信感を「核アレルギー」と記述してる点が少し気になりました。核の安全性不信は論理を超えた域にあるという評は確かに否めませんが、その不信感を掻き立てた過去の「事故」は現実に起きてますし、不信感を払拭するための関係者側からの過干渉や情報隠蔽 も明るみになっています。これらは不信感を抱く側の一方的責任とは言えないので、それを「精神的な拒絶反応」のように揶揄する用語には少々抵抗を感じます。
核推進の実用化が人類にかけるであろう負荷は「たとえば現代の自動車技術によるものに比べても軽微」という論理はわかります。ただ核推進の場合は「最もうまく運用できた」際の「理想論理値」であり、実際には大幅な誤差が生じ得ること、他方では自動車技術における「理想論理値」は「将来交通事故死亡者数0」であることを考えると、少々ずるい論法のようにも思いました。
<蛇足の蛇足>
私個人は核技術は将来的には人類にとって大きな躍進の要になると思っています。ただ、情報処理技術の発展との兼ね合いなどを考えると、核技術の進展には人類のとっては「100年ほど早かった」のではないかと感じています。
ポイント・ネモ
2023/3/27
Kurobokuya
発行:クロ僕屋電書
内容:102p
599円
<紹介> "Why isn't this lovely book selling?" Riding the Inter-”Id” Railway that connects floating cities "Id"s, Miu continues selling her boyfriend Kagero's doujinshi at various comic markets. However, as the books fail to sell, her journey continues.
A fantasy manga series of interconnected stories that depicts Miu's encounters with various people and places during her railway travels while she continues to sell her deceased boyfriend's final work alongside his former friends. The book includes two story manga, a four-panel comic version, and commentary.
Originally published from "Kurobokuya". "Kagero" (32 pages, Comitia110, November 2014). "Fancy meeting you here " (42 pages, Comic Market 88, August 2015). four-panel comic ( 7pages ,Comitia112, May 2015). This is the English version of a Japanese e-book released in November 2015. Manga in right-to-left reading format. (Suitable for all ages/ Main text : monochrome 102-page)
<上記の英文は以下の和文 をChatGPTに英訳させたものに修正を加えて作成> ーーーーーーーーーーーーーーーー 「なんでこんな素敵な本が売れないの?」 浮遊都市「異土」をつなぐ異土間鉄道を乗り継いで美雨は影郎の同人小説を即売会で売り歩く。本は売れないので彼女の旅は続く。
恋人のかつての友人たちに同行して彼の遺作本を売る鉄道旅をつづけるヒロイン。その道中に訪れる場所やすれちがう者たちとの出会いを描くファンタジー 連作漫画。ストーリーマンガ2編と4コマ版と解説文を収録。 初出一覧 「クロ僕屋」より発行 「かげろう」32p 2014年11月 Comitia110 「合縁奇縁」42p 2015年8月 コミックマーケット 88 4コマ版 7p 2015年5月 Comitia112 2015年11月に配信開始の電子書籍 を英訳。 右綴じマンガ/ (全年齢向け/本文モノクロ102p) ーーーーーーーーーーーーーーーー
<なかせ評> 作品自体は地方の同人誌即売会 遠征の道中記をファンタジー 世界に置き換え。その設定の上で展開する人間ドラマです。売れない本を抱えての行脚の悲哀や道中の待ち時間をつぶすのに使ううらぶれた施設の描写は現実を如実に 反映しています。また、8年前のまだ描画スタイルを模索中の作者のこの時期の筆致も、挑戦的で力強く、色あせることはありません。思いもよらないストーリー展開は何度読み直しても面白いです。 8年ごしに改めてこの作品に向き合って英訳された意図は理解できました。
<蛇足> ただその結果できた英訳版が果たして英語圏 読者に届くかどうかについては、ちょっと厳しいものを感じました。文法の間違いや前置詞の誤用が頻繁にあり、英語的な理解が随所で阻まれていました。 AIの自動翻訳を用いれば文法間違や用語誤りはクリアできますので、こういう新しい技術の活用をお勧めしたいところです。
Hawkers' dead stock
2023/3/28
白架
発行:すとれいきゃっと
内容:28p
200円
<紹介> 「恐ろしい夢を見て目が覚めた。」
八尋瞳治は友人と二人だけの空間で対話しながら脈略もなく急に彼の首を絞める。そのさ中に八尋は目を覚まし、それが夢であることに気づく。
多重の夢の中での友人との対話を経て主人公の内心を解明していく短編読み切り小説。 2023年3月に開催の九州コミティア 7にて「すとれいきゃっと」より発行の文庫本をPDF化。 (全年齢向け/本文30P)
<なかせ評> はじめから4〜5ページを読み進めると読者は八尋が夢から「覚めて」別の夢に移行しているというストーリー構造に気づきます。夢の中の「友人」との対話で八尋の暴力的な衝動と彼が抱える閉塞感の関係が解明されます。ただ最後まで閉塞感の理由解明はなく、もしかするとそれは作者自身もかかえる「漠然とした閉塞感」なのかもしれません。
また主人公たちがいる「場所」が特定できない部分もあるので、何回夢を移行しているかは少々不明瞭。一度だけ「目を閉じる」ことで次の場面に移行しているので、その部分は「現実」だったという解釈もできますが、確信できません。そのために、最後の場面も夢なのか、現実世界で夢を再現したのか識別できません。
もしかするとこのお話は最後まで主人公の夢の話で「夢オチ」なのかもしれません。
<蛇足>
「他人の夢の話を聞かされるほどの苦痛はない」と言われますが、あえてそれを地で行く小説。話の中では主人公は自分を理解してもらうために「友人」に苦しみを与えてますが、それと相似形の苦しみを再現するために作者は読者にこの文章を読ませているとすれば、その企みは成功です。
ただ、その企みに最後までつきあってくれるのは、よっぽどの理解者か、あるいはそれこそ「職務的に付き合う立場に置かれたカウンセラー」しかいないかもしれません。
夢堕落な日々
2023/3/29
小杉あや
発行:daywreath
内容:41p
330円
<紹介> 「みかんがおいしいので色々かいてみました」デコポン ズ、柚子、金柑、レモン、晩白柚 、フィンガーライム 。柑橘類をテーマに描いた少女絵。
2022〜2023年に開催の創作同人即売会 にて「くだん書房出張所」よりで発行のテーマイラスト折本を5冊合本のうえ電子書籍 化。(全年齢向け/本文フルカラー40p) 収録タイトル 「シトラス ガールズ 〜柑橘少女〜」2022年2月20日 COMITIA139 「Silent Flowers」2022年5月5日 COMITIA140 「Ribbon oRibon リボン折本」2022年6月12日 MGM2-37 「Magic mushrooms」2022年11月27日 COMITIA143 「とけやつぼみの花の紐 母校制服あれこれ」2023年3月19日 MGM2-39
<なかせ評> 自由奔放な発想をカラフルでかわいい少女絵で繰り出すイラスト集。テーマのくくりかたラインアップの並びが楽しい。 母校制服がテーマの巻の注釈やトーク も興味深い。作者が女子高生時分に参加されていた商業雑誌の愛読者だった自分としては、当時のご本人の日常の一端が伺えて感慨深かった。在校時はださいと思っていた校章入りアイテムを卒業後に惜しがったり、セーラー服にあこがれていたのに着れなかったりというエピソードも面白かったです。
<蛇足> 8枚の絵をA4用紙にカラー出力、これを1/8に折ればA7サイズのフルカラー本が完成。 同人イベントでお目当てのサークルスペースにあれば手を伸ばしたくなるが、小さい本は家に持ち帰ってからの 「保管場所を迷う」という難点が。しかし、この本のように電子化されればスマホ でいつでも持ち歩ける、印刷とほぼ同じサイズで鑑賞できるので、コレクターにとっては嬉しいはず。 小さい本のもう一つ難点は、イベント会場で存在がついつい見落とされること。実は今回の電子化ではじめて小杉あや先生がこういう本を毎回出していたことに私は気づきました。次回以降のイベントでは見逃さないよう注意したいと思います。
折り本合本
2023/3/30
山田サカミチ
発行:山田サカミチ
内容:95p
200円
<紹介> 「現在 反天府軍による全気環規模の攻撃が行われています」 天府側の惑星級「星霊」をつづけさまに2体退けた「人類、動物、幽魔」連合の反天府軍。天府は「声(テレパシー放送)」を使って民衆の間に反天府軍への反感を広めるという手に出る。しかし、天府のこの企みは民衆にまぎれて暮らしていた幽魔「泣く赤鬼」の「呪い」を呼び覚ます。天府の姑息な攻撃は反天府軍の結束でつぎつぎと跳ね除けられる。
天府が支配する死後の者たちが集まる世界で目覚めた少年 ギンガは反天府軍に加わり戦う。数話ごとのまとめ本を描き下ろし電子書籍 配信にて展開するSFテイストの長編ファンタジー ・バトル漫画シリーズ。今巻は第31話〜第36話を収録した第6弾。(全年齢向き:本文94p)
<なかせ評> めまぐるしく展開する天府と反天府の攻防。天府側はプロパガンダ を広めたり、不意打ちを狙ったり、人質をとったりとつぎつぎ姑息な手段を取る。しかし反天府側はそれらの策をはねのけて天府を徐々に追いつめていく。今巻では主人公ギンガも圧倒的なパワーを発揮してで反天府の反撃の一助となります。
天文学 的スケールの「星霊」からの多様な攻撃も「ものともしない」反天府軍の面々が頼もしい。特に全身の中でコアを移動させて致命傷をさけて再生を繰り返す「天王星 霊」を打ち倒すステップマンモスのディーバの戦い方が圧巻。天府側の総指揮 をつとめる星系長の悪役ぶりが徹底しているので、それだけに反天府軍に鼻を明かされた時の表情が痛快で笑えます。
天府側は惑星霊の残りを全部投入してきたので、戦いもいよいよ大詰めかな?
<蛇足> この分量の原稿を描き下ろしで発表し続ける執筆体制には毎度圧倒され、敬服します。
第5巻は昨年7月に「Kindle インデイーズ」の無料マンガでの公開でしたが、9月にこれを通常のKindle 販売に移行させ、今回の第6巻は通常Kindle 販売で公開されている模様。勝手が想像ですが、Kindle で専売されているようなので、価格を200円を250円あげた上で「セレクト」を選択して「Kindle Unlimited」登録にした方がむしろ作家さんが望む購読が得られるのではないかと思います。
ちょっと気になったのは天府軍の人数が多く、もはや名前のあるキャラク ターがどれだけの人数いて、誰が誰でどこにいるかを把握するのが難しいレベルになっていること。そんな中なので主人公ギンガが今回活躍があったのにもかかわらず存在感がすこし薄らいでいる気がします。むしろメガロドン の「ブルー」やゴリラの「ガル」が表情豊かで感情をあらわに登場するシーンが多く、存在感が強くて、主人公に代わりにストーリーを牽引している感じですが、それはそれでいいのかもしれません。
MYMYTH 6 ーマイミス 6ー
2023/3/31
<紹介> 「私の楽しみに 水をさす思春期の『私』」 もらったチケットで行ったライブをきっかけにアイドルにハマる会社員の越高さん。会場で買ったペンライトは彼女の心を支える「魔法の杖」になる。しかし魔法の杖は「悪魔」をも呼び覚ました。その「悪魔」とはアイドル嫌いだった「昔の自分」だった。
大人になってから「推し活」にハマった社会人が、過去の自分と対峙する「心象ファンタジー 」の読み切り短編少女マンガ。2022年11月開催のCOMITIA142にて「突撃蝶々」より発行の自主出版誌を電子書籍 化。(全年齢向け/本文32p)
<なかせ評> アイドルの「推し活」がテーマの作品は方々でちょくちょく見かけるようになりましたが、これはその中でも群を抜いてよくまとまった掌編だと思います。
ペンライトを「魔法の杖」に見立てた描画を盛り込みつつ、同時に「魔法」をキーワードにストーリーを展開させる巧みには圧倒されました。主人公をとりまく「アイドル好きな同僚」や「おたく仲間の若者」といった人物配置や彼らとの会話も絶妙。エンディングの着地点も見事で「王道の少女漫画」を読まされた気分です。
<蛇足> 商業誌用に手掛けられたネームなのに掲載には至らなかったとのことですが、複数の編集部にかけあってくださった編集者さんの気持ちがよくわかります。「商業雑誌」の限界(?)を感じるとともに、この作品に日の目を見る機会を与えた「創作同人」の世界があったことがよかったと思いました。
大人になるにつれ、何かしらの「若気のいたり」や「やらかし」を見た際に、それがかつての自分だと気づく機会は誰しも増えてくるのではないかと思います。批判的な目で見ようにも、当時の自分が真剣だった記憶もあり、「今」と「当時」の板挟みになって、のたうちまわります。そんな「大人になる(必ずしも「成長」ではない)」ドラマを端的に描き上げた作品だと思います。
<蛇足の蛇足> 2023年第一季に深夜放送されていた女子柔道アニメ「もういっぽん! 」のOP曲で「邪魔しないでよメモリー 、暇じゃないから」というフレーズが「聴いててやたらに心に刺さるなぁ…」と思ったのはこういうことだったのかもしれないなぁと、思い出しながら読んでました。
まほうのつえ
2023/4/1
<紹介> 「来訪回数が千回を超えると辿り着く、 それが裏京都です」 久々に京都を訪れた魔女のルーコは歩いてるうちに異様な光景に囲まれている自分に気づく。訝しがっていると「案内人」が現れ、ここは「裏」の京都だと教えてくれた。「裏京都」では「地面を無限に埋め尽くす賀茂茄子」や「全長10kmを超える無限の森」などが見られる。
魔法使いのルーコが様々な人々と出会って対話する連続4コマ漫画シリーズ「魔法使いのお時間よ」第101話。2023年1月に開催の関西コミティア 66にて「まり王」より発行の自主出版誌「魔法使いのお時間よ〜裏京都とまれびと〜」の前編を電子書籍 化。(紙版は後編の第102話も収録) (全年齢向け/本文モノクロ(一部フルカラー)18p)
<なかせ評> 現実の京都とはかけ離れた「幻の京都」。そこで見られる風景の「発想」と「描写」が楽しい回。
表の京都から裏に通じる通路配置や経路描写がなかなかのファンタジー (「キングクロス駅9と4分の3番線」みたい)。京都の四季を堪能できる「裏糺の森 」は「お得感」がある上に圧巻の光景。「初心者にはキツくてヤバい」場所があると聞けば速攻で行ってしまうルーコには共感しかない。
この京都に行ってみたいが、京都を千回訪れないと行けないらしいので、なかなか厳しい(笑)。
「前後編」の「前編」のようで、どういう「後編」に続くのか、とても気になります。
<蛇足> 「京都の町並みとか描くのが面倒臭い」から「裏」にしたとのことですが、いやこっちの方が描くの大変では?と思う。でも「これなら描写のミスなど指摘されることもない」という考えにはなるほど納得。
<蛇足ついでの校閲 情報> 16pのあとがき文 関西コミティア の開催日が「2月」になっています。→「1月」キンドル の英語綴りが「kidnel」になっています。→「kindle 」
魔法使いと裏京都 魔法使いのお時間よ
2023/4/2
舞村そうじ
発行:RIMLAND
内容:135p
0円
<紹介> 「鏡かと思ったら他人だったってパターンは初めてだ」 級友とファッション誌のキャミを見て「カワイイ」とはしゃぎ、通販でそれを取り寄せて、週末の待ち合わせに着て行くと、級友も同じものを着て来てドッペルゲンガー の出来上がり。でも、せっかくだから…髪型もメガネももっとお互いに寄せて遊んじゃえ!
街中、学校、家庭内、ファンタジー 世界などで展開する人間模様マンガ、大阪万博 公園「太陽の塔 」訪問レポート漫画、参議院選 あわせの「投票奨励マンガ」など2〜8pの短編マンガを合わせて22タイトルを収録。2016年、2018〜2020年初頭の創作同人即売会 にて「Rimland」よりで発行ペーパー掲載用に毎回描き下ろしの漫画等を集めて電子書籍 化。 (全年齢向け/本文135p) -収録作品初出一覧- 「コンストラク ション・タイム・アゲイン」2016年1月31日 コミティア 115 「リヴァイアサン 」2019年1月20日 関西コミティア 54 「むずかしい雨」2016年8月24日 みちのくコミティア 2 「ダディーズ・オールライト」2016年6月12日 新潟コミティア 45 「まちのあかり」2016年10月2日 関西コミティア 49 「風が吹くとき どき。」2016年10v23日 コミティア 112 「運命の人」2018年2月11日 コミティア 123 「OK,GO.」2018年5月5日 コミティア 124 「ドッペルゲンガー 」2018年7月1日 新潟コミティア 49 「コード進行を変えてみる試み」2018年8月19日 コミティア 125 「太陽と太郎と無理と無謀と」2018年11月25日 コミティア 126 「『たった一票』じゃない話。」2019年7月14日 みちのくコミティア 5 「屋上の姫」2019年2月17日 コミティア 127 「憂悶の魔法おじさん」2019年3月24日 名古屋コミティア 54 「泳げない人魚」2019年6月30日 新潟コミティア 51 「その指のかたちで。(目が覚めたとき君がそばにいてほしい)」2019年5月12日 コミティア 128 おまけ(をの1)(その2)描き下ろし 「エコロジー バッカーズ」2019年8月25日 コミティア 129 「10月12月」2016年11月3日 名古屋コミティア 46 「彼女と彼女と酒と古本と彼女と。」2018年10月21日 新潟コミティア 50 「私が元・魔法少女 と知ったうえでの無茶ぶりですか!?」2019年9月29日 関西コミティア 56 「松本REVISITED」2019年11月23日 コミティア 130 「Answer」2020年2月2日 第2回一次創作エア同人誌即売会
<なかせ評> 多彩な人物たちがあたかも実在で生きているように言葉を交わし、想いをぶつけ合う。リアリティのあるドラマ1シーン「切り取り」のショートストーリーが「これでもか」というほど詰め合わされてます。「1シーン」では物足りない読者へは同じ人物たちが活躍する別の「本編ドラマ」への誘導がある話もあり。 個人的には「泳げない人魚」のショートヘアの子の「勢いの止まらなさ」が好き。
<蛇足> 64pの欄外に記されている「ニコチン依存症の仕組み」について私が描いた漫画はこちらです。 「タバコはどうしてやめられない?」 https://www.pixiv.net/artworks/6716170 「ニコチン・ラプソディ」 https://www.pixiv.net/artworks/6712915
www.pixiv.net
短い作品がいっぱい詰まってるのは嬉しいですが、作品ごとの切れ目が認識しづらいのを少し難に感じました。「この続きはこの先どうなるの」と思いながら読み進めたら「さっきのページで終わってて、次の話に入っていた」という状況が何度も発生。個々の話の終わりにはエンドマークをつけた方がいいです。
また作品の付加情報や解説が数編分作品の前にまとめて書かれていますが、読者的にはこれは作品を読んだ後で読みたいですし、一個ずつが個々の作品の直後配置されている方が「どの作品の情報か」を確認するのにページを行ったり来たりしなくて済むので、ありがたいです。電子書籍 はいくらページ数を増やしても読者の負担にはならないので、最初からずっと同じ方向にめくって最後にたどり着く読み方での印象を大事に考えることをおすすめします。
サブタイトルのカタカナ表示に迷っている記述がありましたが 「EcologyPackers」なら→エコロジー パッカーズ 「EcologyBaggers」なら→エコロジー バガーズ …になると思いますが、レジの詰め作業の話なので 「EcologySackers」→エコロジー サッカーズ が一番適切だと思います。
<蛇足の蛇足> 「『たった一票』じゃない話。」では「JUST DO IT」と「投票」奨励していますが、 選挙について私は個人的に若干の異論があります。
基本的に国民の大多数は「政治に興味がない」「興味がないから知らない」。 誰に投票すべきかわからない者の票は「周りが推す候補」「悪目立ちする候補」に流れます。 むしろ彼らの票はいいように利用され、かえって政治を悪化させます。 また、有力な候補とその対抗馬を見抜いて投票しないと「死に票」になります。 選挙についてはまずは「政治に興味を持つ」こと、 興味を持つにはまずは自分と意見が異なるものと「対話する」ことを私は勧めます。
RIMpack2016・2018・2019±
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私のレビュー中の<紹介>の部分には、それぞれの本の電子書籍 ストアでの「内容説明」の文章を「私ならこういう書く」と思う内容で書かせていただきました。電子配信をされている作家さんはよければご参考にして下さい。