なかせっとHatena

漫画家「なかせよしみ」がちょっとまとまった文章を公開するためのブログ

第15回いっせい配信企画「創作同人2021年3月」

第15回いっせい配信

2021年3月20日春分の日)に創作同人電子書籍の第15回「いっせい配信企画」=イベント名「創作同人2021年3月」が実施されます。この企画は配信する電子書籍ストアを問わず、作品を自主配信してる作家さんが配信日を揃えて、配信情報を互いに広め合うオンラインのイベントです。

 

https://64.media.tumblr.com/a4ccb0f3a2c14078c957116f15b04120/d37429860dc88c5e-31/s540x810/71422feef56bffb8a375f75ac7a239c4167c6cba.jpg

配信日にあわせて3月16日の現時点で8人の作家さんによる12作品の予約購入および購入用チェック(「お気に入り」指定)が可能です。

 

「いっせい配信」は飛び入り参加が可能です。興味を持たれた作家さんは今からでも企画サイトをご覧ください。  

 

「まるかふぇ電書」の新刊は3冊

私(なかせよしみ)と砂虫さんの本を配信する「まるかふぇ電書」は今回計3冊の本を配信します。

 私の「なぞかれ」と砂虫さんの「竜飼い18」は、奇しくも同じ「2010年」制作の作品です。電子化の作業中は11年前にこの作品に取り組んだ頃のことがしきりに思い出されました。お読みになる方も、できれば「東日本大震災」の前年の空気感を思い返しながら読んでいただければ、と思います。    

 

「創作同人電子書籍」と「いっせい配信」

今回配信の「創作同人電子書籍のススメ2021年」では昨年11月に私が週刊連載でtwitter投稿したマンガを中心に、昨今の電子自主配信にまつわる情報を盛り込みました。

twitterの連載はこちらのブログでもまとめましたので、すでにオンラインでご覧になれますが、「オフラインでの購読」や「電子蔵書としての保管」をご希望の方は今回の配信をご活用ください。

y-nakase.hatenablog.com

私が「いっせい配信」企画を実施するに至るまでの経緯を紹介する漫画ですが、
読んでいただければ創作同人電子書籍(作家が主体となって出版社を通さず電子配信で自主販売するオリジナル作品)の活動においての いっせい配信」の意義活用メリットをご理解いただけると思います。

 

コロナ禍の中での「創作同人電子書籍」活動

 「創作同人電子書籍のススメ」シリーズは昨年5月の2020版、今回の2021版でたてつづけ発刊。私の新作発表は昨年2月以降はこのシリーズに傾倒しています。

これはコミケコミティアが以前のような形で開催されないことにはどうしても私が展開している他のシリーズものが出しにくいから、という理由もあります。しかし、それ以上にこのシリーズの情報がいま一番世の中に「必要」だと感じているからでもあります。

 コロナ禍が少し沈静化するとやたらと耳にする「経済を回す」という言葉ですが、本来は2つのアプローチがあるはずです。

  1. 感染増大の可能性をはらみながら「従来の経済活動」に戻す
  2. 感染増大させない「新たな経済活動」を開拓する   

もちろん「新たな経済活動」が「従来の経済活動」に市場規模で追いつくのはなかなか難しいです。 しかし「従来の」の市場規模が縮小した状況下では、その下支えするくらいの役目を「新たな」が担えるはずです。「新たな」市場への参入、その市場での欲しいものの購入、あるいはそこにただアンテナを張り自らの興味の発信。そのような行動が「新たな」市場を開拓し、「従来の」市場の維持につながるのです。

先日、5月開催予定でしたコミケ99の「延期」が発表されました。次は12月開催の可能性を探る形になるものと思われますが、これもワクチンの行き渡りタイミングを睨んだ検討となるでしょう。まだまだ、数万人クラスの即売会イベントが「通常開催」にこぎつくのは難しい思われます。

いまは「従来の経済活動」の復活に力を入れるフェーズか、あるいはその消滅回避のために可能な別手段に力を入れるフェーズか。その時節、時節で考えながら、私たちはこの局面を乗り越えていくべきではないかと思います。

 

 

 

 

『手探り「電子書籍配信」放浪記』

2020年11月12日から12月17日にかけて「電子書籍の配信活動」で私自身がこれまで辿ってきた経緯を紹介する漫画をtwitterで連載しました。以前togetterでもまとめを作成しましたが、専用アプリのフリックではページが飛ぶ等の読みづらいさも確認できましたので、こちらのブログでもまとめました。

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「創作同人2020年11月」レビュー

2020年11月3日に第14回目となります創作同人電子書籍のいっせい配信企画「創作同人2020年11月」に今回は13名の作家による15の書籍がエントリーしました。今回は少なめですが、せっかくなので全書籍についての紹介文とレビューを書いてみることにしました。

 

「作家個人による書籍の電子配信」に興味のある方には、他の作家がどのような本をどう配信しているかという情報は大変参考になると思いますので、ぜひこのレビューだけでも読んでみて下さい。

 

企画の詳細についてはTogetterのまとめもありますので、よければご参照ください。

togetter.com

私と砂虫さんの本を発行している「まるかふぇ電書」からの今回「いっせい配信」のエントリー作品はこちらでした。

5年3組のモジョリーナ 竜の飼い方教えます17 ねこのつめあわせ

画像クリックでサンプルページが見られます

 

以下が他の作家さんによるエントリー本の紹介です。書影以外で各紹介に添えられている画像は主に私の個人的な勉強のために挑戦してみた各作品の「模写」です。 

2020/11/04                                                                                                                                                                                                          

<紹介>
「一体でも多くピグマリオンを狩る 私がセズの作った最高の作品であるために」

残された時間が少ないアークはピグマリオンを狩り続ける。ツィツェーリアに続きミカを捕らえた彼はパンドラの秘密を知るが…。

セズ・デュマ博士が作り出したピグマリオンたち=「人間に近すぎる30体の人工生命体(HYBID)」は博士の遺言で互いを狩り合う。
愛憎交えて生きる彼らを描くシリーズのシーズン2ー第5巻。

2017年冬コミケット93にて「UMIN'S CLUB」より発行の冊子を電子書籍化。

<なかせ評>
個々に多彩な人格を持ち、様々な感情を抱く人口生命体たちが重厚な人間ドラマを演出する。体の限界を迎えて残り時間が少ないアークの焦りが対立に緊迫感を加える。

<蛇足>
第2シーズンは11月末に公開の6巻で完結とのこと。私自身は実はこのシリーズは無料公開の「STAND BY ME」と、このシーズン2ー第5巻しか読んでいないのですが、シリーズを通して読み進んできた読者にとってはこの巻は手に汗を握る納得のラス前エピソードであったと想像されました。

「遠雷」

 

 

2020/11/05                                                                                                                  

<紹介>
「それは小さいながらもてまひまかけるに足る面白さを秘めています」

一般公募で年刊発行の短編叙情マンガ集。
2001年創刊で20冊目の今年号には20の作家が参加。
「風が吹いている」「コロナ禍で」「星空に花束を」等のテーマごとに編集。
「メタ・パラダイム」より紙書籍版と電子書籍版を同時発行。

<なかせ評>
本文138ページに20の作家の短編。
1作づつ読んだ直後に作者のコメントと編者の秋元なおと氏&おかさんの感想が掲載されているので、それを読んですぐに読み返して同じ作品に違う印象を感じることを繰り返しました。本の厚さ以上の読み応えを感じられる一冊。

<蛇足>
私も参加している本ですが、半数以上が私も含め、「夜」を描いたお話。作家によって違う「夜の表現」に特に目がいきました。

「叙情派ひとつ2020」

2020/11/06                                                                                                               

<紹介>

「たまには体を動かして遊びましょ」

伊月と鏡夜の双子姉弟は方舟学園リベライアへの入学を1月後に控えて早い目に入寮。
その前日、鏡夜に朝稽古をつけるべく伊月はキリエとも傀儡を駆使して戦闘を繰り広げるが…。

9歳の少女の伊月と彼女を前世から溺愛する最強の吸血鬼のキリエ。2人を中心に皇国の守護たち、自動人形たち、異能者たちが繰り広げるアクション・ファンタジー・ストーリー。
WEB連載の長編小説「ろくでなしの花嫁とひとでなしの吸血鬼」の第104〜116話に加筆の上でまとめた第5巻。 伊月の点描エピソー1編、及び成人後の伊月とキリエのエピソード(口淫描写あり)4編も収録。

<なかせ評>

更夜(傀儡)に憑依したキリエに鏡夜と自分自身の体を預けて、それを他の傀儡とイチイバル(魔弾を撃つ巨大なライフル)で攻撃するという伊月の破天荒な「朝稽古」がすさまじい。 学園の入寮後は課外活動として用意されているメガラニカ(フィールド型プラント)の探索で得られる収入で寮生活を充実させる日常がRPG仕立て。探索にキリエが憑依したスレイブユニット2体を伴わせているのが少しチート。

<蛇足>

この巻は伊月、鏡夜、キリエの3人(および伊月とキリエが操る傀儡)のみが登場で(扶桑も一瞬だけ登場)日常的な目的でのみ行動しているお話なので少し物足りない感がありました。前巻の八坂家を取り巻く一族の諍いや弥姉弟のその後が気になるところ。 今回は全般的に鏡夜の目線で語られていたので幾分わかりやすかったのですが、同じ傀儡に憑依しているのが伊月だったりキリエだったり、いつ入れ替わったのかが分からなかったりで、読んでいて混乱しました。

「プライベイト・ヴァンパイア RE104-116」

2020/11/07                                                                                                               

<紹介>

「今の俺みたいにここで帰るのが、貴方のなりたい人間だよ」

同じクラスの白幡雪姫と氷川世奈。雪姫の弟の白幡恵斗。雪姫と恵斗が街中で出会った在日朝鮮人のイ・ソユン。4人は互いや周りとの関わりのなかで「なりたい自分」を探る。
学校内のコミュニケーション不全や街中での差別問題に直面する若者たちの群像劇。
2020年2月のCOMITIA131にて「千秋小梅うめしゃち支店」より発行の自主出版本を電子書籍化。

<なかせ評>

取り扱いが難しい題材をとりあげながら現在の若者たちが直面するリアルを描写する意欲作。「前編」とのことで、今後4人がどのように影響しあい、どう変わっていくかが気になる。

<蛇足>

警官が差別側に加担するような発言をするシーンを見て「え?こんなことあり得るの?」と思う一方で「いや、あっても誰もが話題にすることを避けるから、ただ自分が知らないだけかもしれない」とも思いました。差別問題は共通コンセンサスが得難いがゆえに取り扱いが難しい、と改めて考えさせられました。

「Relation and Bountary 結び目と境い目 前編」

2020/11/08                                                                                                                   

<紹介>

「どうあれ我々は彼を保護したのだ その体を崩すな」

汎宇連の特別巡察使としてイサギを連れ出したライラ。デア・ヌゥルに流れ着き、過ごしていたイサギの説明に彼女はどこか懐疑的。しかし、彼が「地上種」と意思疎通ができることに異様な興味を示す。

どんな言語もすぐ習得してしまう能力の少年が流れ着いた見知らぬ宇宙域で双子の妹を探し求めるSF冒険漫画第4巻。 2019年12月のコミックマーケット97にて「空風館」より発行の自主出版を電子書籍化。

<なかせ評>

デア・ヌゥルと地球の関係が少しだけ解き明かされるこの巻。しかし、ライラもイサギの世話をしていたルールーも彼に明かしていない情報があることが示唆され、謎は深まる。
妹のアサギはどこでどう過ごしているのか、どう探せばいいのかが気になります。
ライラがイサギを連れて行った先の汎宇連の事務局がまるで別世界。これまでで一番SF的な空間描写が楽しい。

<蛇足>

イサギの漂流仲間のプルートの登場シーンが衝撃的。しかし彼の存在もどうやらこの物語の核のひとつである模様。
巻末のおまけカットに登場するアサギの様子を見る限り「彼女は一応無事らしい」ので、少し安堵。

「CHAOS×COSMOS - LOST CHILD in the ASTROVEIN 04」

2020/11/09                                                                                                              

<紹介>

「今日は何の店なんですか」「んー、おもちゃ屋?」
お姉さんから日曜日の待ち合わせに誘われたわたし。 連れて行かれたのは雑居ビルの3階のあるお店だった。
1995年の中学生「わたし」と大学生「お姉さん」が当時のサブカルホビーを交えてデートする 「平成レトロホビー百合」シリーズの第3話を収録。「孟夏賦」の続巻。
2018年11月4日の九州コミティア2にて「うなぎむら」より発行の自主出版本を電子書籍化。

<なかせ評>

1995年のホビーの紹介が、当時を知っている読者なら「マジック:ザ・ギャザリング?」「ニフティー?」「PC-VAN?」等と想像を巡らせられますが、知らない読者にとっては未知の創作のように感じるでしょう。主人公も「お姉さん」がそれを楽しそうにやっている点でしか魅力を感じていない模様で、「紹介」としては少々物足りません。
文章自体は読みやすいですが、「百合好き」&「95年代のサブカルを知っている」読者限定の読み物…という感がありました。

<蛇足>

「お姉さん」が「わたし」を誘った理由、互いに「相手のどこを魅力的に感じるているのか」「どう好きなのか」は語られず、「わたし」が「お姉さん」に付き合う理由も「好き」の一言だけ。読者が2人をどのように「魅力的」と感じるべきかが見えないので「恋愛小説」としても少し物足りません。

「雨月風」

2020/11/10                                                                                                              

<紹介>

「なぜあのおっさんは一人なのに 二人の美少女にじゃれつかれてるような芝居をしているの?」
灼熱の太陽の下、気温36℃。主人公「犬」(キャラ名)は日が暮れるまで過ごせる涼しい場所を求めて目指したのは遠方の超大型スーパー。道連れは二人…ザックスちゃん(バイク)とiPadちゃん。
妄想美少女と会話しながら身の回りの出来事を綴るドット絵(ピクセルアート)描写のエッセイ漫画シリーズ第4話。英訳版も収録。 2020年11月23日のエアコミティア(COMITIA134)にて発行の冊子に収録予定のエピソードを電子書籍で先行配信。

<なかせ評>

酷暑の中で自力で修理した軽量バイクと熱暴走するタブレット端末に翻弄されながら過ごす苦難の道中。「妄想美少女」との会話とそれへのツッコミで作者の考えや心情が細やかに描かれた半日譚だが、楽しい読み物としても成立。

<蛇足>

ドット絵で描かれているのにコストコの店内や開発が頓挫したニュータウンのスケール感がダイレクトに伝わります。電子書籍ならではのカラー絵の挿入に心が震えました。

ピクセルデイズ4The day of hot as hell」

2020/11/11                                                                           

<紹介>

「フューロン分隊とジャムジイの名はさらに轟きそうだ」

猫巫女コルネーリアの予言では霧魔の出現に対応しきれず、戦線は拡大した。しかし、要所要所で霧魔の出鼻をくじき、本隊到着まで時間を稼いでいる部隊があった。

猫剣士たちの戦争と平和を描く長編ファンタジー電子書籍版:第10巻。 自主出版の冊子として2018年8月19日のCOMITIA125にて発行の5章(7)と2019年5月12日のCOMITIA128にて発行の5章(8)を合本の上、注釈などを加筆して電子書籍化。

<なかせ評>

2002年より書き続けられている大河ファンタジー漫画の最終章でこれまでの伏線が回収されはじめ、いよいよその佳境に突入。
多数の人物たちがそれぞれの立ち位置で選ぶ身の振り方がリアル。ちょっとした言動やそのほころびが大きく歴史を左右する事態へ連なる展開が見事。

<蛇足>

自主出版ベースでこれだけの広がりのある作品を展開している作家さんを私は他に知らない。この巻で電子書籍化が紙版の最新刊に追いついたとのこと。電子版でこの作品に出会いった読者はその膨大な配本ペースに慄いたと思われるが、この先は舞村氏の制作ペースにあわせて楽しめると思う。

「フューチャーデイズ5(7+8)」

2020/11/12                                                                           

<紹介>

「タコだって、宇宙へ行く夢をみます。」

海の中、海の生物にまつわるファンタジーイラスト集。 アナログイラスト31枚の一枚毎に短文と筆具紹介と作画解説を添えて構成。

2020年10月にinstagramtwitterで公開の1日1枚イラストのネット投稿をした#inktober作品を電子書籍化。

<なかせ評>

アナログ画材ならではの表現とメルヘンな文章が楽しい1冊。 ボールペンやサインペンのみならず、ホールパンチや綿棒なども繰り出して独特な表現を編み出しているのが面白い。

<蛇足>

「inktober」という活動がネットで広がっているのを私が知ったのは10月下旬で乗り損ねましたが、世界中で多くの人が参加した模様。藤村さんのようにそれを電子書籍化する方も増えればさらに訴求力の高いイベントになると思う。
当書はepubデータが非固定のリフロー型のため、文字の表示サイズによっては絵と文が見開きになったり、めくり返しになったりするのが少し残念。めくり位置指定のepubを簡単に作成できるツールの登場を期待したい。(BCCKSで購入すると作者の意図したページ配置で読める模様)

「神無月に絵を、三十一枚」

2020/11/13                                                             

<紹介>

「月の光にさらした水は毒薬になるのですって」

少女のままに美しく死のうと思い、黄色い月の下に瓶を置いた。
しかしできあがったのはレモネエド

浪漫チック短編漫画集。

1995年4月のCOMITIA32にて「卓上噴水」より発行の合同誌「カルピス」に掲載の表題作と2000年12月のCOMIKET59にて「まるちぷるCAFE」より発行の合同誌「Replicant Dream」に掲載の「真珠海岸」の2作を収録。

<なかせ評>

「はかなさ」を「死」と隣り合わせに語る「少女」性を描いた2作。 とりとめなく、着地点が曖昧なのにちゃんとまとまっている感があって面白い。

<蛇足>

わずか5年で変化した山名さんの顔の描写を見比べるのも興味深い。
「真珠海岸」…「なんかやたらと懐かしいな」と思ったら、私自身が発行した合同誌の収録作だったよ!(^^;) 

y-nakase.jugem.jp

「月とレモネエド

2020/11/14                                           

<紹介>
「じゃあなんでこんなもんを貼って回ってるんだい?」

「ドラコーの血法団」は惑星スカラブラエに潜入した涼子とリカオンをもう捕まえたも同然。しかし、「地下の青空市場」にプシケたちをつれて遊びにきたニュートは「血法団」が涼子の手配書をばらまいていることを知る。

「無限工作社」の謎を追い宇宙を駆けるジャーナリスト鎹涼子を描く長編ハードSFシリーズの第23編(多分)。衛星兵器の設定解説を収録。  
2020年5月のコミティア132にて発行予定だった冊子を6月に書店委託で発行後、11月に電子書籍配信。

<なかせ評>
表題の「地中に作られた『太陽光』発電所」の構築理由が面白く、わけがわからない。「血法団」と涼子(2人)たちのにらみ合いで緊迫した空気にもかかわらず、恋愛映画をみてふにゃけてるプシケが可愛い。

<蛇足>
涼子が2人いるのややこしいが、一緒にいるのがリカオンなのか美由なのかで見分けるような感じになっている。
長編シリーズですが、電子書籍の単話配信でこれが何作目になっているのか確認できる資料がどこにも見当たらなかったので、試しにリストアップしてみました。(これ以外にスピンオフ的な作品や解説本などもあります)

「人類圏 鎹涼子さんシリーズ」
01 ツォルコフスキーハイウェイ
02 幸運発生機
03 病院惑星
04 鞭打たれる星
05 囚人惑星
06 隕石落下なう
07 鳩の餌を作っている会社だけど何でも質問に答えます
08 星を見る顔
09 ワイルドファイア
10 受動的知性体
11氷の惑星にて
12 生物粘土
13 自由機械
14 漂流船ステアパイク
15 廃墟の住人たち
16 人工大陸にて
17 50年の休暇
18 人類の品種改良事業団
19 星間地政学
20 宗教デザイナー
21 惑星スカラブラエ
22 第2の入口
23 地中式太陽光発電

(2021/7/29注:リストの一部に誤りがありました。正しいリストはこちらでご覧ください)

「地中式太陽光発電所」

2020/11/15                                 

<紹介>
「はじめて同人誌を見た。そして自分で作れることも知った。」

マンガを描くことが好きなだった作者は自主出版の即売会を知り、一般公募による漫画集の制作に至る。短編叙情マンガ集「ひとつ」の編纂までの経緯を語る9ページのカラー漫画。

2020年9月のエアコミティアにてその日一日でかきあげるチャレンジ制作の作品を電子書籍化。

<なかせ評>
この仕上がりのカラー絵を9枚も1日で描き上げた作者の力量に感服です。
いきなりの展開といきなりのラストという感じもありますが、同人活動を開始したころの作家心持ちや大阪市の中央公会堂でのイベントの空気感がよく伝わります。 表題の文言は「自分も『たぶん』そう」と思ってられる作家さんも多いと思う。

<蛇足>
短編叙情マンガ集「ひとつ」には私も創刊から欠かさず参加させていただいてます。
私自身が作者の秋元氏と出会ったのは90年代半ばの「COMITIAin大阪(現:関西コミティア)」で、その頃の氏は同人活動で10年の先輩である上に偕成社のコミックFantasyで連載漫画を描かれている「プロ作家」というイメージでした。さらに氏は白井弓子さんと結婚されていて2人サークルで参加で他方、私はまだ独身(^^;)。
なのでラストページのちょっと寂しそうに描かれたイメージはちょっと不思議な感覚でした。

「自分の表現をしないと死んでしまうマグロのようななにかだ、たぶん。」

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以上が今回のエントリー本の紹介です。

私のレビュー中の<紹介>の部分には、それぞれの本の電子書籍ストアでの「内容説明」の文章を「私ならこういう書く」と思った内容で書かせていただきました。電子配信をされている作家さんはよければご参考にして下さい。

 

第14回いっせい配信企画「創作同人2020年11月」

第14回いっせい配信

2020年11月3日文化の日)に第14回目の創作同人電子書籍の「いっせい配信企画」=イベント名「創作同人2020年11月」が実施されます。この企画は配信する電子書籍ストアを問わず、作品を自主配信してる作家さんが配信日を揃えて、配信情報を互いに広め合うオンラインのイベントです。

 

https://64.media.tumblr.com/3f626ac2eb40865bcebe5a6d3718d03b/d37429860dc88c5e-e3/s540x810/c1bfa04e359d893f1500145361c9a6a843988033.jpg

  配信日にあわせて現時点で11人の作家さんによる11作品の予約購入および購入用チェック(お気に入り指定)が可能です。

「まるかふぇ電書」の新刊は3冊

私(なかせよしみ)と砂虫さんの本を配信する「まるかふぇ電書」は計3冊の本を配信します。

 

「ねこのつめあわせ」はねこ好きには多分納得いただける「ねこ漫画読本」です。「竜飼い17」は宗一郎とMC(ムーンチャイルド)たちの間に起きた出来事のお話、「5年3組のモジョリーナ」はひとつの出来事を2つの視点から描いたお話です。

現段階(11月1日)で実は「竜飼い17」は砂虫さんがまだ制作途中で配信登録は到達していません。なんとか間に合いそうですので、まずはサンプルページだけ見られる状況を用意しました。

 

創作作家の「電子配信」活動

今回の「いっせい配信」のエントリー書籍数も、まだ飛び入り参加で増える可能性は残っているものの、少ない目で現時点で11冊です。まだまだ新型コロナの影響下での創作ペースを多くの方はつかみそこねている状況のようで、毎回参加されている作家さんが「今回は間に合わないので見送り」とツイートされているのも見かけました。

私自身も実は当初「創作同人電子書籍のススメ」の新刊を今回配信予定だったのですが、やはり制作が遅れて、現時点でようやくネームがほぼ揃ったという段階。内容は電子配信に興味のある人に向けて「電子配信について自分自身の現在に至るまでの経緯」をまとめた本になる予定です。

実はこの本に収録予定で斉所さんにも今までのご自身の「電子配信」活動経緯を描いた漫画を作成していただき、先日ツイッターインスタグラムで紹介させていただきました。

 私の方の漫画はこれからゆっくりネットに公開しながら仕上げていき、まとめ本という形で次回の第15回に配信する予定です。

 

カタログサイト移転と配信ストアの追加

なかせと砂虫さんの本を扱う「まるかふぇ電書」は全書籍の発行情報をまとめて見られるカタログページをGooglesitesに設けていました。ところが、Google側のシステムのリニューアルに伴い新しいシステムにこのページを移転させてみたら、これは非常に見難い表示になってしまい、閉口しました。

今回のいっせい配信に伴い、思い切ってこのページをGoogleからJimdoに移転。以前よりかなり見やすいページができ、ついでに、なかせと砂虫さんが通販しているオンデマンド生産のグッズも紹介するページも整いました。

mulcafe-densho.jimdofree.com

 また「まるかふぇ電書」は前回7月の以降、新たに2ストア「AliceBooks」と「GooglePlay」からの配信もはじめました。うちで配信中の本は合計100点に及びますが、それを1日1点ずつ100日間毎日2ストアに登録していき、今週中にその作業も終了する見通しです。

一気に100点分の登録を数日で済ませることも可能ですが、あえて100日間もかけた理由は3つ。

  1. 一点ずつ丁寧にチェックしながらの登録ができること
    (それでもたまにミスが生じます)
  2. 作業を毎朝行う習慣にすることで生活のリズムが生まれること
  3. 長い時間をかけた方が個々のストアの性質が把握しやすいこと

この「3」で把握した情報で2ストアの紹介漫画も描きましたので、ご参考にどうぞ。

https://pbs.twimg.com/media/EkzZZvQVcAEN2_O?format=jpg&name=large

https://pbs.twimg.com/media/EkzZbJ8UUAEGnhK?format=jpg&name=large

https://pbs.twimg.com/media/EkzZcP6VMAEVFGT?format=jpg&name=large

https://pbs.twimg.com/media/EkzZdv-VoAcl1ku?format=jpg&name=large

 

 

 

 

「創作同人2020年7月」レビュー

2020年7月23日に第13回目となります、創作同人電子書籍の「いっせい配信」企画が無事に執り行われました。企画の詳細についてはTogetterのまとめもありますので、よければご参照ください。

togetter.com

 

私と砂虫さんの今回のエントリー作品はこちら。  

https://pbs.twimg.com/media/Edbr6umU8AM7kAT?format=jpg&name=medium
クリックで詳細を見られます

 

これらを含めて今回の「いっせい配信」では14人の作家による21の作品が新たに電子配信となっています。今回もまたこれらのエントリー本のいくつかについて紹介文を書いてみようと思います。

 

2020/07/24                                                                                                                                                                                   

 <紹介>

「もう4年も経つんだ あいつはもう死んでるんだ」

斎に想いを寄せる妹の花耶。その兄は今は亡き友人の市ヶ谷隆行にいまだに想いを寄せている。兄妹と友人同士の想いが三角関係に重なり合った現代物恋愛譚。2編で構成。 

「ダイヤモンドの針」…隆行の亡き後に残された2人の風景を描くショートマンガ。
「フラジャイル」…斎、花耶、隆行の3人が互いの想いを重ねるに至る顛末を描くストーリーマンガ。

2008年8月のコミックマーケット74にて「UMIN'S CLUB」より発行の冊子を電子書籍化。

<なかせ評>

BL vs 近親恋愛の漫画。難解な恋愛関係の成立が妹の花耶の視点で分かりやすく描かれている。話を語るキーアイテムとして用いられているアナログレコードにちなんだ表現が詩的で味わい深い。
個人的には最後まで花耶が隆行へ言葉の上では否定しながらも寄せている想いを深読みしてしまいます。

フラジャイル

 

 2020/07/25                                                                                                                                                      

 

<紹介>

「おお 怖い怖い ヒュドラ姉の男嫌い発動」

異性同士で組む冒険者パーティでは相手との肉体関係を持つ習慣がある世界。男嫌いの女剣士ヒュドラは優男の重戦士ヤマタとパーティを組む。ヒュドラを異性と意識しつつも適度な距離を保つヤマタだが…。

RPG冒険ファンタジー世界観で展開するエロストーリー漫画。
2020年7月にイベント販売用のコピー本として作成した上下2巻作品を電子配信にて先行販売。

<なかせ評>

世間的な風習にどっぷり浸る2人と風習をよそに距離をとる2人の合計4人パーティという構成で状況がわかりやすい。
互いに適切な距離感を維持していた2人が惹かれ合うという展開は読者の期待を裏切らない。

露出度の高い「戦闘装束」の設定は疑問を呼ぶが、そのデザインは意欲的で面白い。 

ラスト・ファンタジー

 2020/07/26                                                                                                                                 

 

<紹介>
「コマとコマにの関係性には『瞬間』『行動』『被写体変更』『場面転換』『空気感』『メタ割』の6つの分類がある」

マンガをシーケンシャル・アート(連続した芸術)ととらえるスコット・マクラウドの著書「まんが学」を解説するとともに、作者自身の漫画表現に関する学術視点の研究を紹介。
2014年頃より公民館等にて実施のまんが講座での配布資料や、同人イベントにて「クロ僕屋」より配布のペーパーで発表のまんが研究記事を編成して電子書籍化。

<なかせ評>
漫画家が普段なにげなく用いているコマ運び等の意味論追求が興味深い。
「より読者の誤解を招かない表現」「ついつい単調で凡庸に陥りがちな表現からの逸脱」を求めて漫画に向き合う作者の真摯な姿勢が伺える研究本。
大元となっている書籍「まんが学」は滅多に手にできないもののようで、図解付きで解説してくれる本書はありがたい。

<蛇足>
用語が所々「?」。演劇での「演者=キャラクター、役柄=ペルソナ」と書いているが、私なら逆にする。
文章が中心の書籍だが、画像文字なので読者が「拡大機能」に慣れているリーダーを使えるストアで購入することをオススメ。
 

クロ僕屋まんが資料集

  2020/07/28                                                                                                                        

 

<紹介>
「勝手に連れてくなよ そいつはオレの妹だぞ」

アサギとイサギは軌道衛星都市「オリンピア」での研究に参加するため宇宙へと旅立つ。しかし、到着目前にオリンピアは爆発、2人が乗っていたシャトルも大破。瓦礫のなかでイサギが気付くと、異形の者がアサギを連れ去ろうとしていた。

どんな言語もすぐ習得してしまう天才双生児が宇宙と異世界で繰り広げるSF冒険漫画。 2017年8月のコミックマーケット92にて「空風館」より発行の自主出版誌を電子書籍化。

<なかせ評>
人類以外の描写は「ファンタジー」に近いが、宇宙の描写や2人が天才的な言語能力を習得する設定は文句なしの「SF」。
物語の時系列が前後していてとっつきづらく、1巻は事態がようやくはじまったところで切れている感があるが、重厚な物語展開を予感させる作り込みです。

CHAOS×COSMOS - LOST CHILD in the ASTROVEIN 01

  2020/07/29                                                                                                              

 <紹介>
「世界があまりに悲しいので ホッキョクグマと一緒に凍えてしまいたくなる」

地球を温暖化に追いやり、感染症拡大の困難を弱者にしわ寄せる「人類」の1人として作者は流氷の上で北極熊と対話する。

新型コロナ禍中の2020年4月〜7月にかけて作者が描いたweb投稿作&サークル「Rimland」のエアイベント用ペーパー用&書き下ろしの漫画集。百合モノ多目。1p〜12pの短編を計13編綴って電子書籍化。

<なかせ評>
百合漫画はいつも通り。コロナに言及する作品はちょっと悲壮感を入れるが笑いの方向に転換。いまの状況下でも割といつも通りに(息を吐くように)漫画を描いている作者はすごいと思う。

<蛇足>
「ストレートに行こうぜ」の「漫画はこんなものでいい」論に説得力がある。チラシ裏書き絵のスマホ撮り画像でも電子書籍になる。

こんな時でも描いてた漫画

  2020/07/30                                                                                                

<紹介>
「あんたに『やっぱり結婚っていいかも♪』って思わせてあげる!」

友人の結婚式で気持ちが盛り上がる麻梨は、DV夫との別れを引きずる咲夜と温度差を感じる。妹がこんどこそ幸せな結婚を夢見れるよう麻梨は姉として一念発起するが…。

海の見える診療所を営む異母姉妹と周りの人々の人生模様を描く「"海"連作」シリーズ第4作&完結編。2019年6月の新潟コミティア51にてサークル「千秋小梅うめしゃち支店」より発行の自主出版誌を電子書籍化。

<なかせ評>
お互いを一番に想う姉妹の思い入れが交錯する。魅力的な人物たちが織り成す恋愛&人生模様が人の「弱さ」「強さ」を問いかけたシリーズが完結。 

<蛇足>
巻末見開きの集合絵には主要人物たち7人の数ヶ月後の姿が描かれているが、さらにもう少し先の未来も見せて欲しい気持ちが残りました。

青空の下、海原の上

 

  2020/07/31                                                                      

<紹介>
「海に行ったあの日から あなたの声が波の音に聞こえる」

夏を過ごすうちに「あなた」の話の「わたし」への伝わり方が変わったことに気づく。

夏を過ごす恋人たちの情景を描いた短編マンガ2編。
2002年「貝殻」 1992年「ひかげ」
サークル「突撃蝶々」より発行の創作同人誌よりの再録を電子書籍化。

<なかせ評>
詩的でリリカル。ベタ&トーン多めで言葉多めの92年作品と余白多めで言葉少なめの02年作品。少女漫画家の「進化」が伺える2作品の比較が面白い。

<蛇足>
個人的には盛んに言葉のキャッチボールをしながらも肝心な言葉は隠している2人が好き。

貝殻

  2020/08/01                                                                      

<紹介>
「どこにでもいる ごく普通の 悪の組織です!」

「悪の組織」を名乗る黒いかぶりものの3人組が街中に出現。彼らは「悪」とは、「正義」とはを問いながら、基本的にはなにもしない。

物語展開等は特になく、作者が思いついたこと、考えたことをつらつら描く随筆的漫画。 2015年8月より漫画投稿サイトとnoteにて連載の(カラー4コマ漫画×4本&解説)×20話および雑誌投稿のプロトタイプ第00話を収録。

<なかせ評>
ポップでリズミカル、キュートで哲学的。 基本的に黒かぶりもの3人、市井の女の子1人(青髪とオレンジ髪の2バージョンあり)、悪の組織代表の「スメラギもと子ちゃん」の合計5人が「悪の組織って何?」を問答するだけの構成なのにそのバリエーションが豊かで驚きます。

悪の組織サンダー 1: 誕生
   2020/08/02                                                      
<紹介>
シリウス カノープス フォーマルハウト 頭文字をとってこの昆虫たちは『SCF特異昆虫群』と呼ばれている」 同じ形の昆虫が遠く離れた別々の惑星で発見された。
幼少の頃その発見を関わったマユコは後にその研究に携わるが…。 宇宙で進化する昆虫とその驚きの研究に携わる 少女と機械人間の教授の活動を描く読み切りSFストーリー。
2011年5月のComitia96にてサークル「人類圏」より発行の冊子を英訳して電子書籍化。(日本語版電子書籍は2015年に配信)
<なかせ評>
美少女と異形の教授が奇想天外な研究を繰り広げる八木ナガハルSFの真骨頂が詰まった掌編。宇宙の背景に描かれる巨大昆虫や少女たちの姿はファンタジックで絵画的。
<蛇足>
英訳はコンテンツビジネスの会社に委託されてようですが、その訳がところどころ「?」だったり、冗長だったり。タイトルの英訳も私なら「SCF Isolated Insects」と訳すると思う。
 
                                                        
<Intoruction>

SFC” stands for “Sirius” ,“Canopus” ,“Fomalhaut”. Those are the stars of the planets where the insects were found . We call them “The SCF Isolated Insects”.

 

The same insects were found on different distant planets . Mayuko as a little girl took part in it’s discovery , and grew up to participate the study of their species .  But,,

 

A Sci-Fi short story manga , featuring the evolution of insects in space , and the amazing experiment done by a girl and a machine-human professor . 

 

Digital release of a translation from a Japanese self-published book released at a manga convention “Comita96”  held in May 2011. (Japanese version digital released in 2015)

<Note>

 One of the best of Nagaharu Yagi’s  Sci-Fi manga featuring an outstanding research by a girl and cybernetic people . The composition of girls and huge insects drawn on a universel background is both picturesque and fantastic .

SCF Distinct Insects

 2020/08/06                               

<紹介>
「警告。実行中の限定術式[傀儡回し]の対象が失われました」

桐生の呼び出しを受けた襲の護衛に、伊月は傀儡として操る黒姫奈で同行。しかし、桐生が連れてきた異能の子供の強力な一撃を黒姫奈は喰らい潰される。

9歳の少女と彼女を前世から溺愛する最強の吸血鬼の2人を中心に皇国の守護たち、自動人形たち、異能者たちが繰り広げるアクション・ファンタジー・ストーリー。 WEB連載の長編小説「ろくでなしの花嫁とひとでなしの吸血鬼」の第94〜103話に加筆の上でまとめた第4巻。
前世の黒姫奈時代のエピソード2編、及び成人後の伊月のエピソード1編も収録。 TSリバ(性転換攻受逆転)の性交描写を含む。

<なかせ評>
「俺様パワハラ野郎」として伊月が(黒姫奈としての記憶で?)毛嫌いする速水宿の桐生との初の対面からいきなりのバトル。桐生に操られていた異能者の弥姉弟のこれまでの経緯と今後の活躍が気になる。

<蛇足>
この作者の文体は無駄がなく、話の展開はスピーディー。しかし、ややもすると説明を省きすぎて、「場面状況」や「誰が誰に向かって言ったセリフか」を理解するため同じ文を繰り返して読み返すはめになり、読むのに時間がかかります。今回、私は1〜4巻まで通して読むのに4日かかりました。

(黒姫奈時代のエピソードの1つ目はこの読みにくさを逆に利用して意外な結末に誘導する展開が面白かった。)

個々の登場人物の呼称としていく通りもの名詞が単独に表記される点も読みづらい要因ですが、今回は読みながらそれらをメモ帳で箇条書きすることで幾分解消されました。ただ、現時点で私のメモに列記されたキリエの呼称は「グレード1」「混ざりもの」等々含めて27通りも並んでいます。

プライベイト・ヴァンパイア RE094-103

 2020/08/07       

  • <紹介>
    キャノピー付きの前方2輪の電動トライシクル(三輪車)に乗った女性が竹林を抜けて訪ねた先は竹材を扱うお店だった。店の主人は彼女に竹製の合板を紹介するが…。
    牧歌的ながら少し未来感のある日常風景を切り取った未来エコファンタジー漫画。本文6pフルカラー作品。
    10数年前に構想した案を電子配信用に製作。構想時のラフ案も収録。

    <なかせ評>
    景色の見晴らしに定評のあるリカンベントスタイルの乗り物で走り抜ける竹林の情景は爽快。ラフには表記されていた説明セリフを本編では一切排し、音楽シーン以外はサイレントに仕上げて、「音」要素の純度を高めている。どんな音色が奏でられているのか興味をかき立てられる。

    <蛇足>
    ラフもラフなりに味のある作品なので、併録はよかったと思う。ページ数を増やしても印刷費のかからない電子書籍ならではの構成。

    竹の音

     2020/08/09       

    <紹介>
    「しょんぼりしたりもしてるけど、今のところ元気です」

    2020年の3月〜7月をあまり外出せず、知人友人ともほとんど会わず過ごす作者。 ステイホームの日常を4コマ漫画や1ページ漫画、描き下ろしのカラーイラストで綴る近況紹介を電子書籍で配信。

    <なかせ評>
    浮かない日々にもちょっとした笑いを見出し、前向きに過ごそうとするあちこさんの姿勢が好印象。マスク姿の女性(自画像?)を描いたカラーイラストにはファンタジー要素が加えられていて、本の中のよいアクセントになっている。

    <蛇足>
    とり方によっては「ただの日記漫画」ですが、こういう時期の「日常」をちゃんと描いて読者に提示することにはとても意味があると思います。 この時期は歩行量が減ったというあちこさんに対して、私自身はむしろ増えている。私たちは何が正解かわからない生活の中で個々人が己の判断を懸命に引き寄せている状況を改めて実感。

    あちこさんステイホーム1話: 「家にいるよ」

    ーーーーーーーーーーーーーーー

    以上で「第13回のいっせい配信」に参加された全作家さん作品を紹介させていただきました。複数作を配信された作家さんもいますが、個々の作家さんにつき1点ずつ紹介です。

    ごらんの通り、今回のいっせい配信もバリエーション豊かなラインアップになっています。コロナで創作活動が不自由な中、新作を用意された方も旧作の掘り起こしに着手された方もいる状況でした。こちらのレビューを見て興味のあるタイトルを見つけられたら幸いです。

    私の書いたこれらのレビューは他の方も書いたレビュー(主にクロ僕屋さん)とともに「いっせい配信」の企画サイトの「レビューページ」にも収録していますので、同じ本についての違った視点を見たい方は是非ご参考にしてください。

    できればこの企画参加本のレビュー紹介の活動には他の方にも加わっていただき、「いっせい配信」企画の一環としたいところですが、各人の無理のない範囲でご協力いただければ、と思っています。

    ちなみに、私のレビュー中の<紹介>の部分には、それぞれの本の電子書籍ストアでの「内容説明」の文章を「私ならこういう書く」と思った内容で書かせていただきました。電子配信をされている作家さんはよければご参考にして下さい。

    また逆に、書籍の説明内容として「自分ならこういう情報をこういう表現で必ず盛り込む」といったご意見などありましたら、是非お教え願いたく思います。そのようにしてノウハウの集合知が形成できれば、電子配信の活動をさらに進展させられるのではないか、と思っています。

     

     

     

第13回いっせい配信企画「創作同人2020年7月」

第13回いっせい配信

2020年7月23日海の日)に第13回目の創作同人電子書籍の「いっせい配信企画」=「創作同人2020年7月」が実施されます。この企画は配信する電子書籍ストアを問わず、作品を自主配信してる作家さんが配信日を揃えて、配信情報を互いに広め合うオンラインのイベントです。

 

https://66.media.tumblr.com/25e0f0c0f6a2261177464ef291ea4144/d37429860dc88c5e-3c/s1280x1920/a772e98af98172fae7e96750daab0801a78adc83.png

   配信日にあわせて現時点で11人の作家さんによる16作品の予約購入および購入用チェック(お気に入り指定)が可能です。

 

「まるかふぇ電書」の新刊は2冊

私(なかせよしみ)と砂虫さんの本を配信している「まるかふぇ電書」はそれぞれ1冊ずつ計2冊の本を配信します。

 

 「竜飼い16」は鈴子が巻き起こした波乱の顛末を描いたお話、「りる」は「夢見が丘のりる」シリーズのエピソード0(ゼロ)です。

https://pbs.twimg.com/media/Edbr6umU8AM7kAT?format=jpg&name=medium

 

企画サイトの改変

前回3月の以降の変化として企画サイトの改変があります。

以前より「いっせい配信」の配布チラシを見ても「誰が何をすればいいのかよく分からない」という指摘があったので、順序立てた企画エントリーの手順書をビジュアルに作成してみました。

<クリックで画像を拡大できます>
https://64.media.tumblr.com/5ebc9aa00c270b13b9d87db9ed0b23e2/d37429860dc88c5e-b2/s540x810/5d37e62b78834eb66c47b47a0f296212117f660e.jpghttps://64.media.tumblr.com/f7c8fc56e791f3d0aad0121bb0fa5740/d37429860dc88c5e-79/s540x810/e81616f9e035a9dbcef6eef201489b7f8a76d2d4.jpg

企画サイトでは、手順の一つづつに関わるFAQページへのリンクが貼られ、細かい疑問にも対応する形にしました。 これで「いっせい配信企画」をはじめて知った方にもわかりやくなったのではないかと思います。

 

コミケがなくなった2020年

しかし、今回の「いっせい配信」は、まだ飛び入り参加で増える可能性は残っているものの、「初めて参加した」という作家さんはまだおらず、エントリー書籍数も通常の半分くらいです。
前回の「第12回いっせい配信」では「オンラインのイベントは異変に強い」と思ってましたが、どうやらオンラインでの創作活動にも先行きが見えない新コロナが影を落としているように感じます。

私自身も毎回の「いっせい配信」には多ければ3冊の配信をリリースしているに、今回は過去の本をリメイクした一冊のみのエントリーです。5月のエアCOMITIAに出した本を紙&電子同時配信で早々とリリースしたこともありますが、自分の生産ペースが下落していて、ちょっと愕然としました。

https://64.media.tumblr.com/d143d4e5f3f59538793392ddb7a9680a/d37429860dc88c5e-51/s500x750/4db5f268e5852284c91706538579a683097a4fe6.jpg

自分としては毎日サボらず、意欲的に作品作りに向き合ってきているつもりですが、健康維持に生活の重心をとられていることに加え、「修正がきかない印刷物」を「何月何日」まで用意しなければならない、といった切迫感のなさは作業をずるずると長引かせているようです。

7月12日にはコミックマーケットの運営からメールで今年の冬に開催予定だったコミケ99は来年のGW開催にリスケジュールが通知されました。数千人クラスのイベントは現在9月の開催に向けて動いてますが、新型コロナの感染者数が大都市中心に再び増加に転じている昨今、これらに積極的に関わるべきかどうかは迷います。

当面は大きなイベントの存在を創作ペース上げの特効薬にはできません。この状況で何をすべきか、何ができるかが今は大きな課題です。

 

 

 

エアComitia132extra

エアコミティアが開催されました

先日、2020年5月17日は創作オンリー同人誌即売会「Comitia132extra」の開催日でした。

年に4回、有明ビッグサイトで開催され数千人の作家が本を手売りする「コミティア」。その中で毎年5月5日前後にに開催される回が最大。今年はオリンピックの開催予定で8月から5月に変更の「コミケ」に押し出される形で「コミティア」は5月17日の開催予定でした。

しかし、新型コロナの影響でコミケコミティアをはじめ、大人数を集める漫画イベントがことごとく中止。代わりにその開催予定日にはtwitter上でイベントの公式アカウントや参加予定だった作家たちが「あたかもイベントが実施されている」という程(てい)で書き込みをする「エア開催」がつぎつぎと実施されました。

「#エア春コミ」「#エア名古屋コミティア」「#コミケ」のハッシュタグをつけた「会場に移動中」「設営完了…本日のスペースはこんな感じ(写真つき)」「開会しました〜」等々。もちろん、実際の会場には誰1人足を運んでいないわけですが、twitterの上ではあたかもイベントがにぎやかに開催されているかのように見えます。つまり「イベントを開催していますごっこ」です。

しかし「ごっこ」ながらも、これらの「エアイベント」あわせに作品の新刊を出すサークルは多数あります。ちゃんと印刷所に原稿を入稿してイベント期日に刷り上がった本を確保。そして、その新刊の「通販を開始しました情報」をエアイベントのハッシュタグつきツイートで開催時間中に発信。
 イベント中止が相次ぐ中で大きな打撃を受ける同人印刷の会社の経営を少しでも助けようと、少部数でも印刷しようと作家さんたちは頑張っています。5月17日の#エアコミティアでも多くの作家が新刊を用意した模様です。

エアイベント

まるちぷるCAFEの新刊

かく言う私もエアコミティアあわせで新刊を出しました。現在、その通販をBOOTHにて受け付けています。

nakasette.booth.pm

内容がこれなので、当然のようにこの本は電子配信も同日に開始しました。

エアイベント合わせに新しい本を出された作家さんもそのコンテンツを活用して少しでも資金を回収して今後の活動の一助とするため、その参考にでもなればと思ってまとめた本でした。

「いっせい配信企画」サイトの特設ページ 

しかし、エアイベントに参加してあらためて感じたのは作品の「売り難くさ」でした。エアコミティア当日に通販の依頼が来ましたが、その数はイベント会場で本を買っていく人の数には遠く及びません。「イベント会場に人が集まる」ことで発生する「購買力」は大きく、それこそがイベントの真髄。現物の書籍を目にした読者が「買いたい」と感じる衝動をオンラインではなかなか再現できません。

作品は読まれないことには評価はされず、買われないことには読まれません。まずは読者の購買意欲を後押しするものが必要です。イベントでは「人が集まる」ことがその役目を果たしましたが、オンラインでは「オンラインなりの販売戦略」が必要です。

オンライン用の戦略として私が考えたのは、オンラインで購入できるうえに「入手した手応え」を購入者が即時に感じられる「電子配信作品」にスポットをあてること。また「人を集める」ことができない今は、代わりに「情報を集める」ことでした。

 そこで思いつきですがエアコミティアにあわせて作成したのが「創作同人電子書籍いっせい配信」企画のサイト内の特設ページです。

 

 

 こちらのページに現時点で36点の電子配信作品が紹介にのぼっています。まだまだ、情報を募集しながらページに情報を追加しているので、よければこのブログをごらんの皆さんも「#創作同人電子書籍」のハッシュタグをご活用いただければと思っています。 

twitter.com

エアコミティア作品レビュー 

実は「エアComitia132extra」の「出品作品」を名乗る電子配信作品はBOOK☆WALKERでは13作品BOOTHでは892作品もあります。これらの中で私自身も数点買った作品の紹介を以下に書き綴ろうと思います。

 

2020/05/22記                                                                                    

<紹介>
「今年こそは嘘つくのやめて 好きって言いたい」

悠里は小学生の時についた「異性の唾液を摂取しないと死ぬ病気だ」という嘘で幼馴染の大志と毎日のキスを以来5年間つづけている。いまさら「嘘だった」と明かせない悠里は悩みながらも大志とイチャらぶな日々を過ごす。

「月刊まんがくらぶ」連載で竹書房より単行本化の漫画の追加エピソードを「おでんランチ」より自主出版発行するシリーズ4弾目。 中学3年〜高校入学にかけての過去エピソード「中学3年生のバレンタイン」「もうすぐ入学式」の2編、及びおまけ漫画&カットを収録。

<なかせ評>

客観的にはラブラブはっぴーな2人だが、自分の「嘘」で築いてしまった壁に苛まれる悠里の心情描写が細やかで惹き込まれる。シリーズ全体は「イチャらぶな幼馴染カップル」の小学生〜高校生エピソードに読者をほんわかニヤニヤさせながらも、ときおり悠里が見せるフェチ趣味や大志が見せる独占欲で読者をたじろがせる。その絶妙なバランス感覚こそがこの作者さんの真骨頂だと思う。

となりのバカと続く嘘 中学3年生の悠里ちゃん

  

2020/05/23記                                                                                    

<紹介>

「この家にいる動物は昔からこうでね」

13歳の少女の日毬は極端な人見知り。

彼女は父とともに犬2頭と猫2匹と一緒に暮らす祖父の家を訪ねるが、その家の動物たちは人に変身することができた。

「動物は好きだけど大きい人は恐い」な内向的な少女と犬猫たちの交流を描くコメディ4コマシリーズ。

2015年〜17年にかけて「夏草生産農家」より発行のシリーズ4冊子に加えてweb限定公開漫画、シリーズ開始前のラフ漫画、創作過程を綴るメモ等も収録した総集本。

<なかせ評>

基本的に1人でいることが苦にならない主人公であるながらも、時々「人見知り」を克服しようと見せる積極性に好感が持てる。キャラクターごとに書かれている最終設定に至るまでの過程の解説に創作時の作家さんの思考が垣間見えて興味深い。

女の子が行きずりで遊び相手になった犬と猫

 

2020/05/24記                                                                              

 

<紹介>

「自分が当事者になる可能性なんて まるで考えてなかった」

軽い気持ちで「同性愛?あたしは『アリ』だなー」と発言した とも子 はその直後に親友のサチ子に「好きです」と告白されてしまう。美少女の親友とこれからどう接していけばいいかとも子は悩む。

実際の同性愛に直面した女子高生の葛藤を描くコメディ漫画。2015年2月のComitia111に「馬鹿星人」より発行の自主出版誌をエアComitia132extraにて電子化。

<なかせ評>

軽はずみな発言で思わぬ事態を引き起こす展開がとてもリアル。

告白されたことはちょっと嬉しいながらも「親友としてどう対処すべきか」悩む とも子は真摯で好感が持てる。サチ子もまた親友思いのいい子。

話の展開はスムーズで描画も丁寧。100点満点の「百合漫画」。

もしも私が百合ならば

 

2020/05/25記                                                                               

<紹介>

「冗談じゃないわ もしアレがアメリカの街なかに降ってきて ニュースにでもなったら…」

地球付近に出現した宇宙戦艦は侵攻作戦を開始。

そのころ女子高生の芹沢理香はおじーちゃんが作った「全自動洗濯機」が洗濯物を空高く放出してしまい、彼女の下着はジェット気流に乗ってしまった。

作者が20歳前後の1992年に定期発行同人誌「MOON」に連載されたストーリー漫画(第2話で中断)。巨大ロボが出現するまでのストーリーと設定資料を収録。

<なかせ評>

90年ごろの同人活動を経験している者なら身に覚えのある作風と制作経緯。

しかし、その頃の自分の力量を考えると、この作家さんの描画も設定の作り込みも「ただならない」と気づくはず。

巨大ロボットが活動するまえに話が終わってしまっているのが残念。

爆裂電脳ドデガイン!1

 

2020/05/26記                                                                              

<紹介>

「いつまでも同人活動を楽しめたら良いなって思います」

AI技術の発展、出版の未来、電子決済、作家の高齢化。 10年後という「ちょっとリアルに近い未来」の同人活動を描いた4コマ漫画集。

2019年8月のComitia129にて「猫忍荘」より発行の自主出版誌をエアコミティアにて電子配信。

<なかせ評>

新型コロナ以前に書かれた本で、同人活動の未来像がぼんやり、のほほんと描かれています。 わずか6ページですが今あらためて読むとこれが描かれた1年前の起点がなつかしい。

このような「何気ない時代の何気ない思考」を残ることがある意味、自主出版活動の醍醐味。

2030年の同人活動

 

2020/05/27記                                           

<紹介>

引っ込み思案で都会の学校があわず田舎に転校してきた沙姫(さき)。

彼女に真っ先に声をかけてきたのは方言丸出しのみゃーこだった。

8編の1ページ漫画でつづる2人の女子高生の出会いの1日。

 

2019年5月のComitia128にて「APRICO*」より発行の自主出版誌をエアコミティアにて電子配信。

<なかせ評>

「連載の第1話のみで本編はこれから?」のような物足りなさはあるものの

百合少女漫画のエッセンスは十分につまっている。

人見知りの沙姫と人懐っこいみゃーこの対比がよいバランス。

絵も可愛く、みゃーこがまくしたてる方言は「声に出して読みたい日本語」。

都会JKと田舎JK【創作百合】

 

2020/05/28記                                           

 

<紹介>

「クリーニングしたばかりのシャツが形を崩したクリームとスポンジで肌と混じっていく」

クリーニング屋店員の日高さんは異様な汚れのスーツを持ち込んだ不動さんと知り合う。

互いに惹かれ合う2人は度々ともに食事(不動さんのおごり)をする仲に。

日高さんの誕生日に不動さんは手作りのケーキを用意するが…。

(18禁表現無しで)淫らな行為へと進展しいく2人を描く読み切り百合漫画。

2018年2月のComitia123にて「おおきめログハウス」より発行の自主出版誌をエアコミティアにて電子配信。

<なかせ評>

フェチズム漂う着衣エロ漫画。

物語の時系列が前後しながら進行するので因果関係が読み解きにくいが、淫靡な雰囲気がそれでむしろ増している。

作者のツイッターに全ページ掲載されているので内容はそれで十分読めるのですが、あえて手元にとっておきたいと思って購入しました。

あれは蜂蜜じゃなかった

 

2020/05/29記             

 <紹介>

「90年代の同人誌の熱気のようなものを少しでも感じていただけたら幸いです」

三蔵法師の一行は悟空の不在中に山中で縛られている女を助ける。その夜に三蔵は具合が悪くなり床に伏すが…。

西遊記をモチーフに描かれたバトルアクションの短編漫画集。

1992年〜1994年に合同誌サークル「ハーベストホーム」発行の「鉛の飛行船」に掲載されたシリーズ3作を収録。

<なかせ評>

緻密な筆致で描かれた圧巻のバトル漫画。 大友克洋先生、士郎正宗先生を敬愛する作者が20代の情熱を注ぎ込んで描き上げ、作者ご本人も「もう描けない」とあとがきに記すほどの至高の作。 特にイルカとして描いている沙悟浄のキャラデザインが独創的ですばらしい。

<蛇足>

この力作の存在をご存知だった方は結構いるようですが、私は知らずにいて「よくそれで創作同人を語れたなぁ」と気恥ずかしくなりました。さらにはそんな作品に100円で出会えたという驚き。電子でなければ有りえない値段だし、「エアコミティア」という機会がなければ発行されなかったであろうと思うので、いろいろ考えさせられます。

西遊真詮