なかせっとHatena

漫画家「なかせよしみ」がちょっとまとまった文章を公開するためのブログ

「創作同人2024年3月」レビュー

2024年3月20日に第24回目の創作同人電子書籍いっせい配信企画「創作同人2023年11月」に今回は8名の作家さんによる11作品がエントリーしました。

togetter.com

私と砂虫さんの本を発行している「まるかふぇ電書」からの今回のエントリー作品はこちらです。

うさみみロール1ぐ選挙はなにがなんでも行くべきか? 茶店活 もっとも清潔なもの
画像クリックで作品詳細が見られます

 

今回も他の作家さんによるエントリー本の紹介文とレビューを書いてみたいと思います。

2024/3/23

<紹介>
「私が出した課題はペットにしたいアニマルタイプのロボットだ」
スプラウト教授に居残るよう言われたマイオ、ソイ、パダンの3人。教授は彼らが提出したロボットの問題点を指摘する。

少年とネコ(?)型ロボットのほのぼのレトロフューチャーファンタジーマンガ第2弾。2023年12月のコミケット103にてUMIN’S CLUBより発行の自主出版コピー誌を電子書籍化。(16p)

<なかせ評>
アニマルタイプではなくヒューマノイドタイプである証拠にビスケットは教授に衣服をひん剥かれる。しかし、裸にされたことより、知らなかった自分自身の体の作りに驚いて喜ぶビスケットがかわいい。

<蛇足>
話が短く、アニマルタイプとヒューマノイドタイプの線引きや教授がビスケットを欲しがる理由など少々の不明事項が保留で取り残された感がありました。発表は最近ながらも制作は2020年頃の作品とのこと。しかし、続きが描かれることを期待させる引きなのでこの後の展開が待たれます。

裏表紙には「episode.2 ソイとパダンと魔術師」とありますが、表紙には記載がないので、アプリの本棚にならべた時、どっちが1巻でどちらが2巻かちょっと混乱するデザインになっています。

ビスケット・プラネット

2024/3/25

 

<紹介>
"Aren't these a bit too nerdy for you age?"
The pawnshop was said to be run by a yokai . A samurai brought there a Shunga he heritaged from his father . He had it exchanged with a quarter koban he was going to use to celebrate his wedding , but ,,,

A collection of eight samurai drama manga works made for Comiket and Comitia from 2014 to 2016.
----Contents----
"Mujinaya, the Pawnshop in Edo"
"Call of Soba"
"A Saury of Meguro"
"I fear you."
"From Iroha"
"Watermelon"
"A Midnight Soba Stand"
"Kinuta Private Detective Agency: The Orge of the end of Edo"

 A digital published English translation of a self-published magazine by Kurobokuya at Comitia 115 in January 2016.
(131 pages/monochrome/right-to-left)

「お主 若いわりに数寄者さなぁ」
妖怪が営むという噂のある質屋に侍は一分の金と引き換えに父の形見の春画を預けた。その金で祝言をあげた侍は…。
2014〜2016年にコミケコミティアにて発表の時代劇マンガ作品を8編収録。
----収録作品----
「江戸の質屋 むじなや」
「蕎麦の呼び声」
「めぐろのさんま」
まんじゅうこわい
「てならひ」
「西瓜」
「蕎麦斬り」
「砧私立探偵社 幕末の鬼」

2016年1月COMITIA115にてクロ僕屋より発行の自主出版誌を英訳して電子書籍化。(131P/モノクロ/右綴り)

<なかせ評>
古典落語やお馴染みの妖怪噺のベースを自在な発想で拡張展開して情緒豊かな人情噺などを繰り広げる作品集。黒ベタとトーンの用法が独特で特徴的な作者の描画が物語にアート色と深い奥行きを加えています。

多分、海外の読者にとってもとても目をひき、読めば印象に残る作品群なので、この英訳への挑戦は意義深いものと思います。特に個人出版ベースでこのクオリティの作品が出されていることを海外の漫画ファンには是非知ってもらいたい。

<蛇足>
ただその分、日本のマンガを英訳するむずかしさを改めて認識させられました。
作者は英語をかなり勉強した上で、AI翻訳などを駆使してこの英訳をなされたと思いますが、英語的なニュアンスで作者の意図が多分通じない箇所が散見されました。
たとえば、辛味大根で蕎麦を食べる侍が顔を歪めて「辛い」という大事なシーンでは「Spicy」と訳されていましたが、ここは本来「Too hot」「Hot」等にしたいところ。Spicyは嗅覚的で受容的な言い回し、Hotの方が味覚的で拒絶的な言い回しですが、ここらはネイティブな英語圏の人間でないと分かりづらい感覚かもしれません。
できれば、そのような者に英訳の校閲をしてもらうことをお勧めしたいところ。作中の会話セリフももう少し端的でテンポのいい英訳ができると思います。

ちなみに「時代劇」を作者はHistorical Dramaと訳されていましたが、これは主に「大河ドラマ」みたいな歴史ドラマを指しますので、「Samurai Drama」(侍の時代のドラマ)という表現の方が通りがいいです。

Seventy-seven Nights of Edo:

2024/3/30

 

<紹介> 
「そういえばレッドがいない!何故?」
仮面がとれた全星皇ジワゾスが自分と同じ顔だったことに天馬(レッド)は動揺。ジワゾス軍と爆裂戦隊の戦いは遺跡の外に舞台を移していたが、全星皇を取り逃したレッドは参戦できずにいた。大詰めとなる五聖山での戦いに聖獣たちが加わり…。

父母兄弟妹の家族5人が地球を守るために戦う戦隊ヒーロー・アクション漫画の第5巻。電子書籍描き下ろし作品。

 

<なかせ評>
混戦と混乱を極めた五聖山での戦いが大詰めとなる中、五聖獣の力が合わさった爆烈戦隊の新戦力となるロボ「聖獣王」が登場。その演出描写にはあいかわらずの作者の「特撮戦隊モノ」愛があふれています。

全星皇ジワゾスと乗鞍家の謎の関係が今巻で解明されると思ったのですが、次巻に持ち越しました。終盤で謎の解明にむけて大きく前振りしている分、次巻の展開が大きく期待されます。

 

<蛇足>
今回のストーリー展開は天馬の内心の動きが大きく影響していますが、彼の迷いや決意に読者としてシンクロするのは少々難しく感じました。天馬はこれまで読者が感情移入する対象として演出されていなかったので(シリーズ初期ではむしろ弟の駆の方が主人公だった)、この流れにするならもっと天馬の心情を掘り下げて見せた方がよかったように思います。

登場人物や戦闘アイテム数が大幅に増えましたので、この内容を短いページ数でまとめるのは難しかったでしょう。それでも、個々の場面描写のかっこいい演出で読者を引っ張っていくことはできるはずですので、今後もさらなる「かっこよさ」を追求していっていただきたい。

爆烈戦隊チャレンジャーズ5話

2024/4/4

 

<紹介>
「…シャレイ姉さん。元気そうだね。」
空槽では12歳になると子供たちの多くが人魚になる手術を受ける。5年前に適応手術を受けた姉は月に1度、弟のゼニスに会いに来る。

地上と隔絶された海底施設を舞台に4編の短いエピソード描写で綴るSF読み切り小説。2024年3月に開催の九州コミティア8にて「すとれいきゃっと」より発行の自主出版文庫本をPDF化。(全年齢向け/本文30P)

 

<なかせ評>
「ゼニス」「アザー」「ホリゾン」「ナイル」4人の少年少女たちの短いエピソードを連ねて構成された作品。個々のエピソードの文章は読みやすく、美的で読者を物語世界に引き込みます。その技量と練り込まれた企みには高い作家性が感じられます。文章の構成から装丁に至るまで「青」色にまとめている配慮は美しく、ポイントが高い。200円という値段に見合う「読むべき1冊」に思えました。

 

<蛇足>
いくつかの謎をはらんだ設定のSF小説ですが、その謎は解明されずに終わりました。もしかしてこれはより大きな物語の冒頭部かパイロット版かと思いましたが、最後にエピローグがつけられていたので、どうやらこれで完成作品のようです。
冒頭に海底の「都市」という表現がありますが、以降この物語の舞台は「空槽」(空気で満たされた槽)の名で統一されています。ただ、この「空槽」に関わる空間描写の記述が「ガラスに囲まれている」こと以外まったくないので、都市内のどのような場所のことを指すのか読者には伝わりづらいことを難に感じました。私ははじめは「空槽」を小さな牢獄みたいな空間として想像してましたが、終盤になってこの都市機構全体を指す言葉だと理解しました。
作者の意図が小さな空間から徐々に大きな都市の存在に読者の視点を誘導することだったなら、その企みは成功しているとも言えますが、その過程での言葉の定義の変容は読者を苦しめます。

海底空槽のエチュード


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このブログ記事にはしばらく数日間にわたり「創作同人2024年3月」エントリー作品のレビューを書き足していきます。

 

 私のレビュー中の<紹介>の部分には、それぞれの本の電子書籍ストアでの「内容説明」の文章(=書誌)を「私ならこういう書く」と思う内容で書かせていただきました。電子配信をされている作家さんはよければご参考にして下さい。

第24回いっせい配信企画「創作同人2024年3月」

第24回いっせい配信

2024年3月20日春分の日)に創作同人電子書籍の第24回「いっせい配信企画」=イベント名「創作同人2024年3月」が実施されます。この企画は配信する電子書籍ストアを問わず、作品を自主配信してる作家さんが配信日を揃えて、配信情報を互いに広め合うオンラインのイベントです。

 

https://64.media.tumblr.com/423950da036faf28e6c2778ac09df1eb/34c387cdb80bdac0-89/s540x810/0a9f6e14285f7603bdbd8af40841fa6b64dfd020.pnj

「いっせい配信」企画は配信日より1〜2日の誤差内の期間(3月18日〜22日)は随時「飛び入り」可能です。まだ「電子書籍ストア」「電子データDLストア」で配信されていない自作のオリジナル作品があれば参加費無料、事前申請不要、「漫画」「小説」「イラスト集」「全年齢向け」「成人向け」等々のジャンルは不問なので、興味のある作家さんは企画サイトをご覧ください。

今回のいっせい配信では3月19日午前の時点では7人の作家さん&編者さんによる10作品がエントリーしています。

「まるかふぇ電書」の新刊は…

私(なかせよしみ)と砂虫さんの本を配信する「まるかふぇ電書」はあわせて現在、以下の4冊の本を配信します。

砂虫さんの「茶店活」は喫茶店について昨年の12月、「もっとも清潔なもの」は陶芸について今年の2月にそれぞれComitiaで出された本。私の「うさみみロール1」は昨年の年末のコミケに出された本。すべて、早い目にデータがそろえて、「いっせい配信日」に間に合うようBLIC出版にも提出しましたので3月20日には100近くのストアのどれでも入手可能となります。
一方で私の「選挙はなにがなんでも行くべきか?」は今年の2月のComitiaで出した本ですが、実験的なマンガでもあるので限られたストアから無料配信という形にしています。イベントで発表後はデータ登録まで猶予があったので、「読み易さ」を改善すべく一部を再構成しました。電子書籍は印刷と違って「偶数ページで作成しなければならない」とか「ページ数が増えると原価にひびく」といった問題はないので、意のむくままに作り直すことができました。
こちらのマンガは「いっせい配信」の時期にSNSで少しでも注目を集める方がいいので、直前の3月14日〜18日にかけてツイッター(現:X)で連載公開し、配信日の前日にまとめサイトでの披露も行いました。

togetter.com

実はまとめサイトに載せると、結構きつい目の批評がよくくるのですが、以前はよく言われていた「マンガとして読みにくい」という評を最近はとんと見なくなってることにちょっと胸をなでおろしていたりします。

ところで、この本のツイッター公開にあわせて実はKindle版は配信日の「誤差2日内」の18日に配信登録をしたのですが、「Kindel無料マンガ」ではどういうわけか配信開始日がその2日前の3月16日と表示されます。これは実は無料マンガのシステムができたころからあるKindleの謎な仕様ですが、なんでこんなエラーがおきて、なぜいつまでたっても修正されないのか、頭をかかえます。

 

「創作同人2023年11月」レビュー

2023年11月3日に第23回目の創作同人電子書籍いっせい配信企画「創作同人2023年11月」に今回は15名の作家さん&編者さんによる19作品がエントリーしました。 

togetter.com

 

私と砂虫さんの本を発行している「まるかふぇ電書」からの今回のエントリー作品はこちらです。

ねこねこくっきんぐ原爆はなぜ日本に落とされたか? フシギナハナシ 竜の飼い方教えます26
画像クリックで作品詳細が見られます

 

今回も他の作家さんによるエントリー本の紹介文とレビューを書いてみたいと思います。

2023/11/12

<紹介>
「小悪魔なワンコ小春ちゃんに翻弄される毎日です」
体重19Kg強の犬なのにラグや畳をひっかく、日向ぼっこやコタツが大好き、人の膝で丸くなる。もしかすると前世は猫だったのかもしれない。

ボーダーコリーの「小春」との暮らしを描いくシリーズの第4集。 
2021年〜2022年にかけて小春が2歳半〜3歳半の話の1ページ漫画を10編収録。 
2023年5月のCOMITIA144にてUMIN’S CLUBより発行の自主出版誌を電子書籍化。

 

<なかせ評>
愛犬との暮らしを絵日記風の1ページ漫画でつづる犬暮らしエッセイ。

温かみがあるスッキリした描画に作者が犬と家族とその日常に注ぐ愛が感じられます。先代の犬に比べて甘やかされてわがままに育っている小春ですが、家族に愛されてのびのび自由に過ごしている状況が微笑ましい。


<蛇足>
日常的なできごとを拾遺的に描写している作品。「漫画」として読むにはストーリー性やオチのインパクトに物足りなさもありますが、その分「作者をとりまくナマの日常」の感覚が伝わります。作者を他の作品で知ってる読者には作者当人の素の人となりを読み取ることができて、楽しみなシリーズなのではないかと感じます。

本日も小春日和。

2023/11/13

 

<紹介>
「楓先輩?幽霊か?ついこの前墓参りしたばかりだろ!」
登校中の一刀館高校の生徒たちにいきなり襲いかかる仮面の一団。斬り合い乱闘中に一団のリーダーと思しき剣客の仮面が落ちて正体が露わになるが…。

チャンバラシリーズ「ガールズ」「ヴァルキリー」の続編。女子高生剣客たちが斬り合うバトル漫画第3弾上巻。上中下巻の3巻構成予定。2023年11月5日サンクリ2023Autumnにて「電脳吟遊館」より発行の自主出版誌を先行して電子書籍配信。

 

<なかせ評>
登下校中も帯刀している女子高生がわりとカジュアルに刺客に襲われて乱闘する世界設定のマンガ。ストーリーの展開が早く、思いもしない方向へと転がる。

一部の者たちが持ち、彼らの強さに直結している「悟りの目」なるものがキーファクターとして物語は展開。多くの伏線を張り巡らせ、緊迫のあるシーンで締めくくって次巻への期待が煽られます。

 

<蛇足>
戦闘があることやクローンというものの存在があまりにもカジュアルなのでびっくり。刺客に襲われ散り散りになった翌朝の再会した仲間同士の会話は「無事だった?」「あれからどうなった?」となるであろうところ、「おはよう」→「その傷は昨日の?」→「(刺客たちの対処を)これからどうしよう」とほとんどクラブ活動のノリ。斬られて死んだ先輩(今回の話では生き返ってる?)もいる世界でこの日常感覚を保てているのがすごい。むしろ、この振り切れ具合がこの作品のいちばんの魅力かもしれない。

敵一団が正体を隠すため仮面の「目」をわざわざ縫い閉じているのは、「悟りの目」の持ち主であることを示唆いているように思えるのですが、そうしてる理由が気になります。本当に「悟りの目」を持つ者ばかりの集団なのか、あるいはそのように思わせるためのブラフなのか。

チャンバラ・ディーヴァ 上

2023/11/14

 

<紹介>
「オレを飼えばさみしくないぞ」
人語を解するフーテン風ののら犬「ちくワワ」。胴体が竹輪、尻尾は角切りきゅうり…「フード(食べ物)」と「犬(ドッグ)」が合わさった「フードッグ」だ。学校ではぼっちの内藤ケンジに通学路で「旅に疲れたから自分を飼え」と迫ってきた。

勝手に家の番犬となった「ちくワワ」が内藤家、おでん町の人々、そして他のフードッグたちとカンバセーションを繰り広げる4コマストーリーマンガ。

作者が新豊玉三郎の名義で広島の障害者向けB型作業所「サブカルビジネスセンター」のツイッターアカウントに掲載の連載作品の2022年7〜11月掲載分の10話を収録して電子書籍化。

<なかせ評>
「犬」と「食べ物」が合わさったキャラという設定インパクトは強いが、はじめはその要素を一切語らず、無関係な必殺技や会話のボケ&ツッコミで展開。しかし、他のフードクたちや町の伝説との関わりが加わり、徐々に「冒険アクション作品」へと変化していく。

「ブルきんちゃく」「ポメらーめん」「ドーベルまんじゅう」…フードクたちのダジャレ気味なネーミングとキャラデザインが楽しい。

<蛇足>
始終気になったのはフードックたちの「食べ物」部分。そこは実際に食べられるのか?美味しいのか?食べたらまた生えてくるのか?

会話ギャグの部分は「笑い」がちょっとあまい目。もっと強烈な笑いを持ってこれれば作品の読み応えがぐんと上がるはず。とくに「となみのちゅーりっぷばたけーっ!」というギャグは説明が必要。(掲載されていたツイッターアカウント上で流行っていたものなのか?)

当初は「高飛車なお嬢様」として登場する「鶴光路あやね」が意外にピュアな動機で行動していたことが判明する展開はなかなか泣かせてくれる。

ちくワワ1巻

2023/11/17

<紹介>
「水は空から降ってきて沼湖川に流れ地面に染み込み草や木の根から葉っぱへ空気の中へぐるぐる♪」
初めての生き物と人類の地球会議で出会った生き物や自分の身の回りをみて作った「ぐるぐるの歌」をトラさんは披露する。

地球環境問題や未来のことをテーマに一般公募して制作された一般公募マンガ同人誌の「第6号」。年2回ペースで紙&電子にて定期発行。
発行:「みらいみたいなマンガ集」制作部会 http://hitotu.main.jp/MMM/ 

 

<なかせ評>
エコロジーSDGsの問題は継続的に考えねばならない。なのでそれをテーマとした定期発行の「参加自由な一般公募マンガ誌」という立ち位置はとても大事だと思う。それは出版巻数を重ねることで重みも加わります。昨今ニュースに登る出来事が反映されているのもこのテーマの変遷記録を残すという意味でポイントが高い。

ただ連載の大部分が今回で最終回を迎えた模様で、それは同誌にこの後のどういう変化をもたらすか気になるところ。

 

<蛇足>
昨今のできごとについて取り上げているのはいいのですが、具体的な事象の「問題点」や受け手の側がとるべき「アクション」の示唆はなく、筆者の漠然とした「不安感」の吐露で終わっている部分が多く気になります。果たしてこれは筆者の意図する方向に作用するかどうか。
たとえば、原発事故の処理水の放出について「IAEAや国は安全だと説明しているが漁業者は反対しているから心配」だと書いてますが、受け取る人によっては「IAEAや国が言ってるのなら滅多なことはおきない。心配はいらないでしょう」と理解することもありえます。
共感と同意を得るにはもう少し論点を整理するか、とるべき具体的な行動を示した方がいいように思います。

Kindle版とB☆Wのスマホ版の二つを入手したけど、スマホ版のめくり方向が逆(左綴じ)になっているのは何か意図があるのだろうか?

みらいみたいなマンガ集2023秋冬号

2023/11/25

 

<紹介>
「湊様がおいでになる限り檜山勢が攻め込めるわけがない」
城を占拠した豊島休心は湊城主を人質にとり油断していた。しかし、息子の勘十郎は四郎を湊様の影武者として残し、湊様を逃がし、ともに城を出ていた。

戦国時代の羽後国秋田県)の郷土史をモチーフに描く創作歴史絵巻マンガ 「鎗留の城」シリーズの第5弾。元亀元年(1570年)のに勃発したお家騒動を描く「元亀湊騒動顛末」編第3巻。描き下ろし電子書籍

 

<なかせ評>
戦国時代の16世紀に出羽の北部を治めていた安東氏が檜山安東家と湊安東家に別れて争った湊騒動をモチーフに描いた作品。
おそらく地元の学生以外は触れる機会のない日本史上の出来事に創作を加えてドラマ仕立てで作り込んでいます。地方史に熱意を注ぎの長編物語を描く作者の意欲に脱帽です。
敵役として描かれている休心入道が表情豊かで人間臭く、とても魅力的なキャラクターで読者としてはむしろこの人物目線で物語世界にひきこまれました。

 

<蛇足>
表紙に描かれているのはこの物語の主人公格の5人…勘十郎、湊様、四郎、喜介、安東太愛季。いずれの人物も生きた人間としての意思を持ち、個々の目的意識で動いて物語を構成することが作者の意図だと思われます。
ただ、これだけの人物構成を48pのマンガに込めるのは少々無理があるように感じました。このページ数で語れるのはせいぜい30分のドラマですが、この構成には2時間の映画くらいが必要だと思われます。
結果的にそれぞれの人物の置かれた状況やエピソードの描写が不足して、読者が個々の人物に感情移入するのに十分な情報が伝わりづらくなっています。
実際に私も何度も読み返し、湊騒動についてweb検索して情報を集めて、ようやく作者の意図を読み取れた感覚でした。もう少し読者にとっつきやすい作品にするには、物語全体をいずれかの人物の目線で見た内容にしぼるか、あるいは大増ページ覚悟でそれぞれの人物の物語を数十ページ以上ずつ描くかの選択が必要だと感じました。

鎗留の城 四 元亀湊騒動顛末・下

2023/12/1

 

<紹介>
「光輝、君をチームのリーダーとして任命する。君達のチームには実戦部隊として活動してもらう」
31連敗を喫した女聖騎士マルグレットの率いるチームにヴァルハラの管理者ハーディンが下した罰はリーダーをマルグレットから連敗原因の白河光輝(コーキ)に入れ替えることだった。

様々な別世界で死亡した英雄、勇者、達人、賢者たちが不死身の「エインヘルアル」として転生して集められたヴァルハラ。彼らはチームに別れて命がけの戦いを重ね、研鑽を積む。《二十一世紀の日本で最強の殺し屋》を自称する光輝はチームリーダーとしてこれまでにない困難なミッションに立ち向かう。

「殺し屋」「女騎士」「幼女賢者」「竜の巫女」「凶獣人化少年」がバトルを繰り広げる異世界ファンタジー読み切り小説。2019年8〜9月「小説家になろう」「ノベルアップ+」にて連載のWEB小説を電子書籍化。

 

<なかせ評>
小気味良い笑いも織り交ぜた会話文と血湧き肉躍る戦闘描写を連ねながら意外な展開を重ねた物語の娯楽小説。
死をも超越した戦士たちが繰り広げる肉弾戦と魔法と頭脳戦を通して、逆に主人公たちは不死のデメリットや彼らの不死にしている世界構造に迫る筋書きも見事。
物語構造は完成度が高く、とても力量のある作家による作品だと感じました。

 

<蛇足>
はじめの25ページを読むのがとてもつらかったです。
ストーリーが3つの時代を行き来しながら、それぞれの舞台設定や多数の登場人物設定の服飾に至るまでの説明が連なり、読者の記憶キャパシティを大幅に越える分量でした。(なので、私自身も実際に各章の要約メモを取りながら読み進めました。)
ディテールへの拘りはを読者に見せたい場合はストーリー展開で読者興味を引く流れを見せながらもうすこし小出しに織り込んでいく、あるいは挿絵イラストレーターに指示して絵図に描いてもらった方がいいように感じました。

ずっと《二十一世紀の日本で最強の殺し屋》を名乗る主人公はてっきり中二病の転生者の自分設定と思って読んでいたのですが、随分後でそうでないことが判明して少し混乱しました。ここらの説明はもっと前倒しに出してもよかったのではと思います。

永劫なるヴァルハラの

2023/12/2

 

<紹介>
「『地球文書』なら見せてもかまわんが」
入院中の涼子との合流を図る美由とニュートの前にはフル装備の戦闘ドローンが立ちはだかった。リカオンの協力でこれらを撃退できたが、訪ねた病室には涼子はおらず、三人を出迎えたのはインフェニット社のスティックス本部長だった。

「無限工作社」の謎を追い宇宙を駆けるジャーナリスト鎹涼子を描く長編ハードSF「人類圏」シリーズの「氷の惑星」編の第21編。

2023年9月コミティア145にて「人類圏」より発行の自主出版誌に付録解説「奇跡の一万年」も収録して電子書籍化。

 

<なかせ評>
前の第20巻では始終アタフタしていたリカオンが今刊の冒頭ではなんかかっこいい。涼子と無限工作社のそれぞれの思惑が絡み合い、反乱軍までが関わってくる緊迫の展開で続きが気になります。

「地球文書」と「確率操作装置」の関係性が見えてきましたが、巻末の付録解説とともに読むと一層興味深い。

 

<蛇足>
正直に言うと話全体が複雑で私も完全に理解できたとは言えず、ここ数刊の流れを何度も読み返してようやくおぼろげな全体像がつかめた感じですが、魅力的なキャラ描写と彼らの掛け合いやアクションが楽しくて、このシリーズからは目を離せません。

善き人々

2023/12/8

 

<紹介>
「あなたの人生を見てエンマ大王がお決めになったことだから」

ろくに働かず大酒飲んでギャンブル三昧で人生を全うした「五武力之介」。それでも生まれ変わって家族とともに過ごせることになった。ただし家の中を這い回るゴキブリとして。

ゴキブリに転生した爺さんが孫の命を救うべく奮闘するアクション・コメディー漫画。電子書籍描き下ろし作品。

 

<なかせ評>
自業自得で前世より厄介者だった爺さんが小さく非力で更に嫌われ者なゴキブリに転生。それでも家族を思い、孫を守るために奮闘する姿の共感力は高い。

ボディのデザインはちょっとスマートで、特に飛行モードのデザインは変身ヒーローみたいにかっこいい。嫌悪される小さな虫でもできることを見つけて問題解決していく展開には安心感があります。

物語はコンパクトで無駄がない構成。それでも、豆知識を披露しつつ意外な展開もはらみ、作者の持ち味の戦闘アクションと仏教的要素も織り交ぜてあって見事。

 

<蛇足>
完成度がとても高い作品なので口を挟む余地などないのですが、強いてなにか難を言うなら、息子の千太郎の言動が幾分都合が良すぎる点と、この物語のヒロインでもある孫娘の小花ちゃんの表情や動作の描写がステレオタイプなことが気になりました。双方とももう少し「生きた」の存在を感じるさせる工夫が欲しいところ。孫娘についてはより感情が込もった表情描写やゴキブリ目線のアングルといった工夫などが加われば、もっと「この孫を救わねばならない」という主人公へ感情移入しやすかったように思います。

走れ!Gじいさん

2024/1/21

<紹介>
「オレが地べたを這い回ってるうちに…」
労働者たちが相変わらずこき使われているギンガが初めにいた採掘場。 そこから「反逆者」が出たことを咎めて天府軍がは労働者たちを鞭打つ。しかし、空に投影された反天府軍の顔写真を目にした労働者たちには服従とは別の気持ちが湧き上がった。
天府側の「星霊」はさらに巨大化。「人類、動物、幽魔」連合の反天府軍はこれらを一体ずつ迎え撃つ。

天府が支配する死後の者たちが集まる世界で目覚めた少年 ギンガは反天府軍に加わり戦う。数話ごとのまとめ本を描き下ろし電子書籍配信にて展開するSFテイストの長編ファンタジー・バトル漫画シリーズ。今巻は第37話〜第42話を収録した第7弾。(全年齢向き:本文108p)

<なかせ評>
文字通り天文学的な勢いで攻勢をかける天府軍。しかし、反天府側はやや余裕を見せながら個々が持つ必殺の技でこれを退けていく。クールな八ヶ浦龍之介、ストイックなジョゼット・ベル、スタイリッシュなバネ足ジャック。それぞれの性格を前面に押し出す独創的な反撃で戦いは盛り上がる。そして、ついに彼らは天府側の最終兵器と対峙!

巻末で戦いはいよいよ終盤の様相を呈しているが、今巻の冒頭の労働者たちによる戦いへの関与はまだ披露されていない上に、今巻ではシリーズ全体の主人公であるはずのギンガがほとんど描かれていない。そのことが、おそらく最終巻となるであろう(?)次巻のクライマックスへの期待を膨らませます。

<蛇足>
あきらかに書き間違いだと思われますが、最終ページの次巻予告で「MYMYTH8をお楽しみに」と表記されるはずの文字が「MYMYTH7」になっていました。

MYMYTH 7 ーマイミス 7ー

2024/1/22

 

<紹介>
「我、玉となりけり」
玉のように美しいグッドボーイのグローリー様は丸まり、転がり、万物に衝突してはじけさせる。

転がるアクションを軸に展開する「チェーンリアクション」スペクタクル漫画。2023年9月開催のCOMITIA145にて「まり王」より発行の日本語&英語併記の自主出版誌をフルカラー化して電子書籍化。本編(22P)と「サクラカー編」(5P)を収録。(全年齢向き:本文36p)

<なかせ評>
ストーリーと呼べるものは特にないのに物語性を感じさせる奇妙なマンガ。

とりとめのないアクションが連続するのみの展開なのに読者の目線をつかみ、最後のページまで離さない。「玉のように美しい」だから「転がる」と言い切る無理くりの理屈が逆に心地よく、読み手の心ににストンと収まる。
読み終えると一つの交響曲を聞かされてような気分になりました。

紙書籍版でも十分にこの楽しさを味わえましたが、カラー版で描かれる風景には更に魅了されました。

<蛇足>
宇宙の起源は自分であると言うグローリー。でも、はじめにグローリーを
投げて転がしたのはルーコなので、「万物の創造主」はむしろルーコかもしれない。

ファイアー・スパーカー: 魔王のホライゾンシネマシリーズ

 

2024/1/23

<紹介>
「その花束はアンタを想像しながら作ったなんて、口が裂けても言えない」
花屋に勤める田淵君に会いに加賀という男が訪ねるようになった。当初は加賀のことを「感じが悪い失礼な男」だと思う田淵君だったが、なぜか気にかかり、仕事中に彼のことを思い出す。そんな加賀は田淵君のことを前世から知っていると言い出した。

江戸時代に愛し合った二人が現代で再会するリンーカーネーションBLイチャラブ小説。(成人向け:性行描写あり 本文:140p)

<なかせ評>
花屋の店員とヤクザ者。別の時代から生まれ変わって再会する恋人たち(男同士)のストーリー。主人公は当初、相手のことを覚えておらず反発するが、思い出したら怒濤のように互いを求め合い愛し合う。

理性的には警戒しながらも何か気になる相手に徐々に心と体を奪われていき、最終的には身も心も許し合う状態に至るまでの過程がストーリーの中で段階的に描かれていて、二人が交わる描写は写実的で緻密。
自分はおそらくこの作家が意図した読者層からはずれていますが、本来の読者層にとってはとても娯楽性の強い一冊に仕上がっているように思います。

<蛇足>
ストーリー作品として見た場合、少々説明不足の点が気になりました。一番気になったのは過去から現代に生まれ変わって前世の記憶を持つ人間が複数いるにもかかわらず、主人公だけが前世の記憶が欠落していたこと。なぜそうなったかの説明は特になく、主人公は記憶を取り戻し、現世の心配事などを他所に時代を超えた交わりを再開しているのは少々腑に落ちませんでした。

また、過去と現代の人物設定(例えば主人公は元警察官だったとか、元女郎だった看護婦が登場する設定)で「これは後のストーリー展開のための作り込みか?」と思わせながら、最後まで特に活かされた風情がない内容がちらほらありました。なにやら履修していない作品の二次創作を読んでいる感じで私は読みましたが、あるいはこの作品の対象読者層にとってはありふれた「味付け」なのかもしれません。

花屋のバラッド

2024/1/25

 

<紹介>
「わたくしはあなたの最後の女 なんて優しい胆魂(きもたま)の味」
骨董屋の女主人の硝子(しょうこ)さんに引き取られた少年、玻璃(はり)に蔵の奥に仕舞われた生きていると見紛う美しい人形が話しかけてきた。人形に言われるままガラスケースから人形を解き放すと、人形は少年に口づけして胆魂を吸い取った。

骨董屋を舞台に繰り広げられる怪奇アクションバトル&グルメ(?)マンガ。シリーズ第1話。本編の日本語版40p&英語版40pを収録(全年齢向け:モノクロ91p)

<なかせ評>
前半は主に骨董屋の女主人と胆魂を食らう生き人形が繰り広げるオカルトバトルの展開ですが、後半は同じ二人がモツ焼きを食しながら酒を酌み交わす焼肉飲み会。また、全編通して食事描写の多い作品なので四捨五入するとこれは「グルメ漫画」に分類されるのではなかろうと思われます。

中二ごころをくすぐる設定、キャラデザ、画面校正で展開する意外とほのぼのとしたストーリーの新シリーズ。どのような軸でこれを今後展開するかが楽しみです。

<蛇足>
本当にグルメマンガとして描く意図であれば、もう少し食べ物描写に力を入れてほしいところ。作中で一番美味しそうに見えたのは玻璃君の胆魂でした。
英語力を鍛錬中の作者さんは今作も英訳版を収録していますが、今作で「胆魂」をどのように英訳するのかを確認しにわくわくして英語ページを開いてみたら、ローマ字で「Kimotama」と書かれていてちょっと拍子抜け。この言葉は作品の要でもあるので英語的にも素敵な表現を見つけていただきたいところです。
英訳は全体的にまだまだ2〜3ページに一つの割合で訳語選びの不自然さがあります。たとえば孤児となった玻璃君を「引き取る」という意味では「take charge」と訳してますが、これは担当や職務に就くことを意味する英語で、人間を含む生物の面倒を見る場合は「take care」と訳する方が適切です。全体的に、作品を一度ネイティブの方に見てもらって校正してもらう手順を経た方がよいように思います。

花骨董屋の生人形

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創作同人2023年11月」にエントリーした電子書籍のレビューをこのブログ記事に書かせていただきました。今回はエントリー期限ギリギリに間に合わせた自作の作業や、翌月予定の会場イベントの参加準備、更に私事ながら身内の急死が重なり、レビューを書き揃えるのに翌年の1月下旬までかかってしまいました。申し訳ありません。次回以降の「いっせい配信」ではもっと早くエントリー作品へのレスポンスを返していきたいと考えています。

私のレビュー中の<紹介>の部分には、それぞれの本の電子書籍ストアでの「内容説明」の文章(=書誌)を「私ならこういう書く」と思う内容で書かせていただきました。電子配信をされている作家さんはよければご参考にして下さい。

第23回いっせい配信企画「創作同人2023年11月」

第23回いっせい配信

2023年11月3日(文化の日)に創作同人電子書籍の第23回「いっせい配信企画」=イベント名「創作同人2023年11月」が実施されます。この企画は配信する電子書籍ストアを問わず、作品を自主配信してる作家さんが配信日を揃えて、配信情報を互いに広め合うオンラインのイベントです。

 

https://64.media.tumblr.com/f6fec42722e90c2d101ef4b48e1825b3/d37429860dc88c5e-1d/s540x810/32e175475a7347d3d250a48261033270c55659a3.pnj

「いっせい配信」企画は配信日より1〜2日の誤差内の期間(11月1日〜5日)は随時「飛び入り」可能です。まだ「電子書籍ストア」「電子データDLストア」で配信されていない自作のオリジナル作品があれば参加費無料、事前申請不要、「漫画」「小説」「イラスト集」「全年齢向け」「成人向け」等々のジャンルは不問なので、興味のある作家さんは企画サイトをご覧ください。

今回のいっせい配信では11月2日午前の時点では12人の作家さん&編者さんによる13作品がエントリーしています。

 

 駆け込みで作業をされている作家さんの情報もいくつか補足していますので、11月5日までにはこの数字はもう少し伸びそうです。…かくいう私も5日までには配信できる見込みで、さらに追加の新刊1冊ぶんのマンガを現在ツイートに公開しながら製作中です。

「まるかふぇ電書」の新刊は…

私(なかせよしみ)と砂虫さんの本を配信する「まるかふぇ電書」はあわせて現在、以下の3冊の本の配信準備が整いました。

このうちの「 フシギナハナシ」と「 ねこねこくっきんぐ」はともに、9月のComitiaで出された本で、早い目にデータがそろっていたので「いっせい配信日」に間に合うようBLIC出版にも提出することができました。
「竜飼い26」は10月31日の午前に 書籍データがようやく全て揃った ため 、まずは それだけで 登録可能なストアでの配信申請を行って、ぼちぼち書籍ページが 公開されてきているという状況です。

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20231107   追記

11月5日のエントリー期限ぎりぎりの滑り込みにもう1冊間に合わせました。内容は以下の通りです。

 

 

 

「創作同人2023年7月」レビュー

2023年7月17日に第22回目の創作同人電子書籍いっせい配信企画「創作同人2023年7月」に今回は12名の作家さんによる15書籍がエントリーしました。 

togetter.com

 私と砂虫さんの本を発行している「まるかふぇ電書」からの今回のエントリー作品はこちらです。

徒歩で5分の別世界2 金魚と暮らす タバコはなぜ20歳から? 竜の飼い方教えます25
画像クリックで作品詳細が見られます

今回も他の作家さんによるエントリー本の紹介文とレビューを書いてみたいと思います。

2023/7/20

<紹介> 
「お前らが戦い勝った者に… 我らの力を貸してやろうわい!」
ビッグチャレンジャーに代わりうる戦力を求めて戦隊の5人はゴールドチャレンジャーに連れられて五聖山へ。しかしそこでは全星皇ジワゾスとその配下たちが待ち構えていた。互いに一歩も譲らない両者がにらみあう最中に五体の聖獣の一つ聖麒麟が現れ…。

父母兄弟妹の家族5人が地球を守るために戦う戦隊ヒーロー・アクション漫画の第4巻。電子書籍描き下ろし作品。

<なかせ評>
乗鞍家の家族は五人。全星皇ジワゾスとその配下はあわせて五人。五聖山の聖獣も五つ。そして、聖獣を取り合う5つの戦いがはじまる。5つの戦いの展開や新たに登場した3人のジワゾス配下たちのバリーエーションは豊かで面白い。

どうやらこの両者の主要な戦闘はこの巻で山場を迎えた模様。しかし、前巻から引き継ぐ謎はまだ解明されていません。一方で読者が第1巻より気になっていた伏線がこの巻の最後で取りざたされました。これらが解明される次巻(おそらく最終巻)への期待が大きくふくらみます。

<蛇足>
毎回このシリーズは作者の「特撮戦隊モノ」に寄せる思いがよくつたわってきます。ただ反面、どうしても登場人物が多くなる分、短いページ数の中での展開は難しい作品で、この巻は特に描写の不足感が出ていました。5つの戦いの顛末は本来はもっと多くのページ数を費やすストーリーとして見せる方が、読者的にも満足が得られ、作者的にも目的に添ったように思います。

シリーズを通して個人的に気になっている点は以下の3つ
1)ヒーロー側と敵側の双方が披露する「戦う理由」。言葉の上で考えると敵側の方が「まっとうな目的」を持っている感じがします。
2)このシリーズの初期は戦闘ロボットの「ビッグチャレンジャー」の存在がコアいなっている展開でしたが、前巻で壊れたままで終盤を迎えるのか。
3)作者はこの作品の中で5という数字へのこだわりを隠そうともしてませんが、5という数字になにか大きな意味が込められているのか。

これらの気がかりが次回の第5巻(あ…これも「5」か)で解消解明されれば、シリーズ全体はすごい作品として完成するように思います。

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爆烈戦隊チャレンジャーズ4話

 

2023/7/21

<紹介> 
「さあ…私にお命じください 王様。雨を降らせろと」
ただ一つの仕事が国に雨を降らせることの王の座についた新王。言われた通り彼は「祈りの塔」を登ると頂部で待っていたのは泣くことで雨を降らせられる人魚とその番人だった。

人魚に苦痛を与えずに雨を降らせようと画策する若き王の顛末を描く読み切りファンタジー漫画。王の視点で描く「Sweet」編と番人の視点で描く「Bitter」編の2編で構成。

 2015年8月のコミックマーケット88にて「UMIN'S CLUB」より発行の自主出版誌を電子書籍化。(全年齢向け:微エロ)

<なかせ評>
「王の視点」編で一番疑問に残る部分をちゃっかり「番人の視点」編で補完している構成で、読者としては見事に「やられた感」を味わいました。

巻末に「ある日突然降りて来たこの物語を鮮度の落ちないうちに描きました」とありますが、言われてみればいくぶん構成に荒削りさを見せながらも、40ページに及ぶ美麗な物語絵巻に仕立て上げる作者の技量には舌を巻くばかりです。

<蛇足>
欲を言うと、更に「人魚の視点」で描かれた第3話を読みたいところですが、なにせ3人の中で最も長命なので、それを描き切るには「葬送のフリーレン」ばりの大長編が必要かもしれません。

「番人」編の物語は番人本人にとっては救いでしたが、この結末を王や人魚が知ったら…と考えると、ちょっと複雑な気持ちになりました。

人魚と王と番人と

2023/7/22

<紹介> 
「いつまでこんな望みもしないものを見なくてならないのか」
ノートをコピーするために学生が列をなすコピー機はその繰り返しに飽き飽きいていた。空の光景に憧れた彼は小さな反乱をひきおこし、プリント出力に空模様を写し込んだ。

日常的な生活感の中にふと幻影のような光景が入り混じる。作者が学生時代や商業連載以前に同人誌で描いた作品中心にまとめた短編マンガ作品集。各作品に作者のコメントリーを添付。

2022年9  月に開催の関西コミティア65にて「メタ・パラダイム」より発行の自主出版誌を電子書籍化。

収録作品初出一覧
「あぶくのゆくえ」(同人誌「ドラマティックねこまんま」vol.1 1985年)
「記憶喪失」(個人誌『アクアリウム』1986年)
「コピーマシン」(京都市立芸術大学漫研誌『黑煮达13』/1987年)
「touch」 第1〜5話/展覧会はひとりで/予算折衝( 「ノンストーリーマンが集ひとつ|詩情編」1997-99年)
「思い出話」( 「ノンストーリーマンガ集ひとつ16号」 2000年)
「赤んぼ遠近法」( 「叙情派ひとつ1号」 2001年)
「アクア」( 「叙情派ひとつ3号」 2003年)
「目と目を」( 「叙情派ひとつ2013」)
「タイム・レコーダー」( 「叙情派ひとつ12号」 2002年)
「プロジェクトの終わり」( 「叙情派ひとつ14号」 2004年)
「レング飛行物体」( 「ガールズジャンプ(Gジャン)」1号 2010年)
「盆にかえる」( 「叙情派ひとつ2012」)
「いちじくジャム」( 「叙情派ひとつ2016」)

 

<なかせ評>
白井さんは日常的な空気感とダイナミックな幻影的光景の双方を描ける作家さんで、その2つの対比とその双方を流れるように行き交う演出に読者は圧倒されます。表題作の「赤んぼ遠近法」は特にその持ち味を余すところなく駆使した快作です。

これらの作品のほとんどが掲載された「ひとつ」誌に私も参加したいたので、懐かしく読み返しましたが、どの作品もまだ新鮮な味わいでした。特に「touch」 の連載は白井さんがCGを駆使して今の独特な作画手法を獲得していった頃の作品として記憶しているのですが、鮮度は保たれたままに感じました。

 

<蛇足>
2010年に小学館より発行された「白井弓子初期短篇集」と「touch」 第1〜5話/予算折衝、「赤んぼ遠近法」「アクア」「タイム・レコーダー」「プロジェクトの終わり」が重複に収録されており、双方の本ともこれらのページ数が過半数になっている。重複に気づかず双方を買った読者は損したと感じる可能性もあるので書誌には十分な注意喚起と、双方書籍の違いを明確に示した方がいいように思います。

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赤んぼ遠近法: 白井弓子短編集2

2023/07/23

<紹介> 
「キミは忘れてしまったのか?ミケロスピリットを!」
窮地に追い込まれた総理大臣に語りかけてきたのは執務机の横に飾っていた子供の頃から好きだった玩具「ミケロマン」だった。

70年代に玩具メーカーサクラが販売したアクションフィギュアシリーズ「ミケロマン」にまつわる空想ストーリー短編マンガ集。2023年5月にマンガ投稿サイトおよびKindleインディーズ(無料マンガ)にて公開の作品を総集。「ミケロマン総理」「ミケロマンを作った男」「小さな友人ミケロマン」の3編収録。フルカラー設定イラスト(5p)およびマンガ制作過程のネーム(11p)を巻末に添付。

<なかせ評>
1970年代にブームを起こした玩具…という設定の「ミケロマン」を題材にしている3編の漫画。しかし内容や方向性はそれぞれが違う。

「ミケロマン総理」は子供のころの玩具に思いを馳せるうちに空想と現実の境界が崩れるファンタジー
「ミケロマンを作った男」は「プロジェクトX」的な玩具の開発秘話紹介。
「小さな友人ミケロマン」はミケロマンたちが玩具の設定世界内で活躍する冒険アクション漫画。

特に3編目の「小さな友人…」は玩具会社が玩具の対象年齢層の読者に提供した販促用漫画のように描かれている。扉絵の作家名は「藤森ひろよし」(今木先生の別名義?)になっていて「大人気連載!」という触れ込みも書き添えた演出になっている。

実在はしなかった玩具にあたかも「昔あって、一大ブームだった」ような演出をあらゆる方面から繰り広げる様相は、NHKが「タローマン」を作るのにとった戦略をマンガ作家が1人で展開している感があって、なかなか愉快です。

<蛇足>
私は今木先生と同じ世代なので、これはタカラ玩具の「小さな巨人ミクロマン』」のパロディだとすぐわかりました。ただその原典の紹介は一切なく、電子書籍の読者にはこれを知らない世代も多いので、予備知識なしで読む読者には幾分不親切ではないかと心配になりました。

開発秘話については「ミクロマン」にまつわるエピソードをそのまま移し替えたようで、当時のブームを知る者としては面白かったです。ただ、置き換え前の原型がわからない部分が幾つかあるのが気になりました。…開発者「賀間アキオ」の本名は何?今年の3月に亡くなったというのは本当?「ミクロマン」の改名前の名前は何?
(「雷神サイノーツ」はもとは「変身サイボーグ」だということはネット検索でなんとか調べる子ことができましたが、他の疑問は謎のままです)

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ミケロマン物語

2023/07/24

<紹介> 
「おかえりくださいごしゅじんさま」「え?帰れ?俺は知らずに迷惑ムーブをしていたのか?」

VR空間の「英語を学びたい日本人と日本語を学びたい海外の人が」集まる学習ワールドで開催される英会話イベント。訪れた主人公「犬」(キャラ名)を出迎える案内役のメイドは思いもよらない第一声をかけてきた。

妄想美少女と会話しながら身の回りの出来事を漫画描写と解説で綴るエッセイ漫画シリーズ第9集。 2023年5月5日に電子書籍にて描き下ろし。英訳版も収録。
(これまでこのシリーズの漫画絵はドット絵(ピクセルアート)での描写がメインでしたが、今巻は全編3DCG描写となっています。) 

<なかせ評>
(作画)「デジタル手書」→「3DCG」
(他者との交流)「イベント会場」→「VRイベント」
(翻訳)「手翻訳」→「多言語生成AI」
時代の変化が漫画の題材にもなり、同時に作品の表現手段自体にも反映。今ここでしか生まれない題材が時代の変化を如実に盛り込んで繰り出される状況はエッセイ漫画として最上の形ではないかと思います。

以前から気になっていた作者の「英語」に対する取り組みやスタンスがつぶさに分かり、「表現者」として必要な英語を改めて考えさせられました。

VRイベントの参加にはなかなか踏み出せない自分ですが、その気になったなら揃えるべき機材やそれらの使用上の注意などがこの漫画を通してよく分かり、将来的に有用な知識を仕入れられたように感じます。

<蛇足>
今回の「いっせい配信企画」で配信された本はこの「ピクセルデイズ」シリーズの総集本(上下2巻)でしたが、私自身はこれまでこのシリーズの電子書籍はバラで入手していたので、これを期にいままで入手しいていなかった巻を選んでコレクションをコンプさせて(3、7、9を購入)、最新の第9巻のレビューを書くことにしました。

総集編を出したのは、もしかして漫画表現が「ドット絵(ピクセル)でなくなった」ことを機にシリーズを畳むつもりなのか?…と危惧を抱いてますが、「ピクセルデイズ」という名称はもはや「表現手段」よりは「作品内容」の名称として定着した趣もあるので、気にせずに今後もこのタイトルで続投されることを一読者としては望みます。

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ピクセルデイズ Pixel days 9

2023/07/25

<紹介> 
「奇妙な言葉は世界を救うぜ 奇妙なリズムは大地にとどろけ」
「労働」「マリトッツオ」「果肉エキス」…様々な題材で歌い踊るいちごちゃん。
いちごちゃんが歌い踊ればなんでもあり。

言葉のリズムで展開するギャグ短編マンガ集。
2023年5月関西コミティア67にて「まり王」より発行の自主出版誌を中心に電子書籍化。2022年11月〜2023年6月にかけてTwitter、Pixiv、ブログ等でWeb連載の漫画をカラー化収録。

<なかせ評>
リズミカルな言葉の繰り出しとポップな描画のコマ運びで、時には哲学的に、時には不条理に展開。先が読めないのにリズムに乗ってどんどん引き込まれる感覚は絶妙。そして、ときおりドキッとするようなセリフや超展開に出くわすのでたまりません。

作者の「動作に富んだアートセンス」「音楽的な言葉のリズムセンス」「奇特な道徳哲学センス」の3つが集大成されたシリーズが新たに生まれたように感じます。


<蛇足>
「マリトッツオ」の自己紹介や「たったひとりでは取り残される」への反論にはめちゃめちゃ不意を突かれて笑ってしまいました。

「青雲」や「デビルマン」は自分はすぐにわかりましたが、Z世代の読者はこれを見てすぐにメロディが脳内再生されるかどうか、ちょっと気になります。

あと、活躍が少ないけど35ページ目で生まれた新たなキャラがめちゃめちゃかわいい。

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アルファンベルトいちごちゃん 1

2023/07/26

<紹介> 
他人の血でダイモンを呼ぶのが正しいやり方と思ってんすか?」
召喚の儀式中に現れたのは物憂げな雰囲気の美少女だった。彼女は生贄の血で描いた魔法円にケチャップをかけ散らして儀式を妨害しはじめた。

鳥のダイモンとの契約で黒い翼と鉤爪を持つ女子高生ウイッチ:烏丸町子(からすまるまちこ)がダイモンを悪用する者を成敗。オカルト・バトルアクション・マンガ。
Twitter、LINEマンガ、PIxiv、PIxiv FANBOXにて連載のマンガを2023年前半公開の第1〜7話まで収録。巻末にキャラクター作成時の設定資料メモを6p添付。

<なかせ評>
ペンネームを「粉骨堂」と改めた斉所さんの真骨頂のオカルトアクション漫画の新シリーズ始動。
ストーリー構成、キャラクター配置に無駄がなく、転がるように物語は進行して読者をぐいぐい作品世界内へと引き込んでいく。全体的にシリアス展開な中で随所に笑いの要素が盛り込まれ、エンタメ性の高い作品に仕上がってます。
蜘蛛のダイモンのヤソメ様が恐ろしい外見と裏腹にキュートなリアクションを時折見せて、キャラクターとして魅力的。
ストーリーの流れはダイモンと契約した二人の女子高生ウィッチ(鳥ダイモンの烏丸町子と蜘蛛ダイモンの四ッ辻吟子)の出会いの話という感じなので、今後の二人の活躍に期待。

<蛇足>
いままでオカルトアクションものをいく通りか展開してきたこの作家さんですが、この作品ではどこかしら今までより商業ベースでも成り立ちうる領域へ一歩前進したように感じました。何が功を奏しているかを考えて見ると、どうも四ッ辻吟子がこの系統の作品ではこれまで以上に感情移入しやすいキャラに仕上がっていることのように思います。
彼女は読者もよく知ってる世界で足場を固めて、そこからの観点で烏丸町子に導かれて新しい世界に一歩踏み出したところ。これからの彼女たちの物語へ期待を膨らませずにはいられません。

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Daemon in the Witch World

2023/07/27

<紹介> 
「落ち着け… 動いてはいけない…」
寺にこもって座禅を組む野良之介は真剣に瞑想しようとしている。
しかし、寺を外から見ている群衆の目に映ったのは…。

主人公が「野良之介」であること以外は一切ルール不要の2ページ構成の時代劇(?)ショートギャグ漫画集の第4弾。
2017〜2018年のイベントにて無料配布ペーパーに掲載の8編と描き下ろし1編を収録。
2019年1月に「電脳吟遊館」より発行の冊子を電子書籍化。


<なかせ評>
毎回荒削りながらもひらめいたネタを即時に読者に提供している新鮮味が感じられるシリーズ。「試し斬り編」のオチの表現など斬新さが光ります。

なんらか支障が生じて決闘を取りやめるネタが2編ありましたが、個人的には「寸止め編」の優しい落ちも「睨み合い編」の超展開も双方とも最後のコマが好きです。


<蛇足>
今回の「いっせい配信企画」で配信された本はこの「野良之介」シリーズの総集本「総集編二」でしたが、私自身はこれまでこのシリーズの電子書籍はバラで入手しているので、「総集編二」に収録の中でまだレビューしていなかった2019年3月配信の第4巻のレビューを書くことにしました。

改めて読み直すと「まだ決闘ネタが多かったころの野良之介」という印象でした。

素浪人・野良之介 巻之四

2023/07/28

<紹介> 
「きれいな顔してるでしょ」「死んでないもんな」「ちょっと笑ってるし」
オポッさんのとくぎは死んだフリだが、じぶんの能力を過信しているためうすら笑いですぐバレてしまう。

死んだフリ状態のオポッさんに遭遇した森の動物たちが繰り広げる会話コメディ漫画シリーズ第一弾。8コマ漫画2本を縦スクロールで展開。KindleFliptoon描き下ろし作品。

<なかせ評>
「きれいな顔してるでしょ」という誰もが知ってる漫画の名台詞で始まる作品。
「でも安心してください!生きてますから!」と切り返すのが「明るい藤村」さんの流儀。

星柄の青いナイトキャップをかぶって笑いながら死んでるオポッさんのビジュアルはこの上なくコミカル。遭遇した森の動物たちも困惑するが、オポッさんが死んでないことはとうにに知っていて、むしろ幸せな会話を繰り広げる。

ついつい口元がほころんでしまうようなショート漫画2本。シリーズはまだ続くとのことで、エピソードを重ねることでさらに光を放つ作品に仕上がることに読者としては期待せずにはいられない。

<蛇足>
Amazon KIndleが最近力を入れて展開している「縦スクロール漫画:Fliptoon」にて投稿の作品です。アマゾンが「Fliptoon」投稿作に分配金として配るため毎月用意してる総額は最近好調で2000万前後で推移している「Kindle無料マンガ(インディーズ)」の分配金総額をも上回っているので、その力の入れようもうかがえます。
ただ実のところ、「いっせい配信」の企画運営側としてこれを「電子書籍」「データ配信」に含めていいかどうか迷いました。Fliptoonには読者が気に入った作品を自分が後々読み直せるように永久にキープできる機能はない模様で、もし作者がネット上でこの作品を削除してしまうと読者はその後作品を読む機会を永久に失います。これは「電子書籍」「データ配信」よりむしろ「LINEインディーズ」「ジャンプルーキ!」「COMICO」などと同じ「電子投稿」の系統に入ります。
ただ、今回は以前から「電子書籍」「データ配信」の活動をされている作家さんが「いっせい配信」企画の配信日にあわせて投稿されたうえで、ご本人から企画参加の意図が発信されたのが確認できましたので、エントリー作品に加えさせていただきました。この後のFliptoonの扱いは今後の状況を見て改めて考えたいと思います。

オポッさんは死んでない

2023/07/29

<紹介> 
「この時代 じゃんけんの勝者はすべてを得るが敗者は何も得られなかった」
環境の変動により生存競争がじゃんけん勝負に置き換わった第三紀から第四紀。
あらゆる生物がじゃんけんに勝つための器官「じゃんけん器官」を発達させ、それに適応できない生物は絶滅した。しかし「じゃんけん期」が終わると…

特殊な生存法則の期間が地球史に存在した仮定で描かれた空想進化論マンガ。
2023年7月にKIndle無料マンガ(インディーズ)にて描き下ろし電子配信。

<なかせ評>
「じゃんけん期」の存在によって塗り変わった地球史。カニのハサミは5本指を獲得した「じゃんけん器官」へと変貌し、「じゃんけん期」が終わると別の目的に転用されてカニ文明を創出する。他方で人類は…。

「『ぱー』を獲得したカニ」という設定からその背景とその後の影響へと想像を膨らませ、科学解説の体裁をとりながら散文的に情報を連ねて構成された空想科学マンガ読本。
作画労力を軽減する一方でカラー彩色を部分的に導入して、作者としては短期間作成の実験作品だったようですが、奇想天外な設定のSFを作者が創造する着想メソッドの一端を見るような感覚で読ませていただきました。

<蛇足>
もっと詳細な情報が欲しいような箇所や時折首をかしげる記述を発見。
たとえばクモについての言及で「『クモ』と呼ばれる昆虫」との記述が。「クモ」は「昆虫(胴体が3節で6つ足の生物)」ではないことを知らない作者ではないはず。あるいは、そのような記述を気にする読者に対して「そのレベルの情報が気にならないくらい軽く読むように」と促すためにわざと置かれた「つまずきやすい石」なのか?…などと想像を掻き立てられました。

パーが出せるカニ

2023/07/30

<紹介> 
「何か…見える… 子供の手…」
真上に来た半月村が宗一郎の腕から「返しの魔獣」を引き起こした。魔獣を木久屋君が魔道義手でなんとか抑え込んだが、宗一郎は遠のく意識の中でフォースの記憶をたどる。

異形の人々や魔法が入り混じった日常空間で展開する長編ファンタジーの第25話。2018年2月11日のCOMITIA123にて「乱痴気事虫所」より発行の自主出版誌を電子書籍化。(全年齢向け)

<なかせ評>
全体的にかなり入り組んだ設定のファンタジーです。

空中都市「半月村」の機能維持のために生み出された13人のホムンクルスの「ムーンチャイルド」たち。彼らの生命の核でもある「引力の卵」はムーンチャイルドが死ぬと大爆発の後に彼らの肉体を再生させるため、彼らは「とても物騒な不死者」である。
「引力の卵」を体から分離すればムーンチャイルドも「死ぬ」か「普通の人間になる」ことを選べるが、分離するには別の「引力の卵」保持者が必要。13人目のムーンチャイルドである「宗一郎(ラスト)」はファーストを除く11人の「引力の卵」を分離させる役割を担ったが、サードを除く10人は全員が普通の人間になることより死ぬこと選んだ。
残された宗一郎は「半月村の維持」を最優先とするファーストと反目しあいながら、普通の人間になるため単独で自分の「引力の卵」を分離する方策を探り続ける。そんな中で、すでに死んでいるフォースが死後もなんらかのパワーソースを残していることに気づく。それが何かを探るべく、フォースが残したメッセージに従い宗一郎たちは彼らの父の墓所に赴くが、ファーストと半月村もそれを察知して接近してきた。

これが前回までの概要。

今回はファーストが仕掛けた術の反動で宗一郎が昏倒し、その意識がフォースの記憶を辿ります。そして、後に半月村を崩壊させるであろう、フォースが残した仕掛けの存在を宗一郎は知る…というお話。

かなり時系列が前後しているので読者にはちょっととっつきにくいかもしれないですが、内容が理解できれば今回は派手なアクションもあり、すごいデザインの魔獣なども登場するので楽しめるお話になっています。また、徐々に明かされるムーンチャイルドたちの性格や言動、そして彼ら同士の人間関係や軋轢が物語を味わい深くしています。

<蛇足>
これまで、このシリーズについては私自身は配信する側なのでレビューは控えていましたが、実際のところ私は完成した作品の誤字脱字を校閲したり、たまに話の筋が通りにくい部分を指摘して改善を提案するレベルで、制作にはほとんどタッチしていません。ほとんど、電子書籍でシリーズを追っている読者の皆さまと同じ目線で見ているので、今回はレビューを書いてみることにしました。
実はシリーズの紙版は2019年に出た26巻以降まだ出ていませんので、次回の電子化配信ではいよいよシリーズ最新話に追いつくと思われます。これでいまのところ世の中に存在する「竜飼い」ワールドの全貌を知ることができるので、私も一読者として楽しみです。

竜の飼い方教えます25


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創作同人2023年7月のレビューあとがき


創作同人電子書籍の「いっせい配信」企画にエントリーした作品のレビューをこのブログで書く活動は2020年の3月のコロナ禍初期の頃からはじめました。実はそれ以前は「いっせい配信」企画の広報チラシを刷ってコミティアなどのイベントのチラシ置き場で配布していましたが、コロナでその機会がなくなりました。

そのロスを補う広報手段はないかと思ってはじめたのがこのレビュー活動です。実はチラシを印刷するために少々の経費を費やしてましたが、その頃は同じ金額でいっせい配信にエントリーしている作品を全購入して読むことも可能だと気付いたのがきっかけでした。
読んだならレビューは書けるし、それを順次ネットに公開していけばその作品に興味を持って読んだ人は同時に「いっせい配信」企画の存在を知ってくれるチャンスになるかもしれない。


「いっせい配信」企画の設立意図については私が書いてきたものを読んでご存知の方も多いと思いますが、もともとは「自分の本を売るための広報力をアップする」ためでした。つまり、自分が電子書籍を配信するタイミングにあわせて他の作家さんにも各々の本を配信していただき、一緒に広報すれば互助的に広報力をアップできる。そんな目的の企画に参加いただいている作家の皆さんには日頃より感謝の意は絶えないので、エントリーした作品はちゃんと読んで、レビューを返すことがせめてものお礼にもなるのではないか、という思いもあります。


ちなみにレビューを書く際には作品を読んだ上での観点で、その作家さんの今後の活動への期待を伝えることが大事だと思っています。ただ、その際には、どこまで作品に立ち入るべきか毎度迷いもあります。作家自身が意図しない方向への期待を過度にアピールしてしまうと、今後の作品を歪めてしまうのではないか、という危惧を抱きながら、実は毎回おっかなびっくりでレビューを書かせていただいてます。


そんなわけで、1日1作品に向き合ってレビューを書くのがやっとで、エントリーした全作家さんの分の作品を網羅するには長い期間かかってしまいます。ただ、その期間は「いっせい配信」企画の広報をいろんな情報を交えて長い期間続ける形にもなるので、それはそれでいいのかもしれません。そして、どうやらこのレビューを書く活動を始めたら、それを楽しみにあえて「いっせい配信」企画参加用に書籍を用意してくださる作家も出てきた模様です。


この活動をやっていて思い出したのは今は亡き、創作同人オンリーイベントの「そうさく畑」の武田圭史代表のイベントパンフでした。彼も毎回「そうさく畑」で提出される見本誌に目を通し、全ての作品にひとことでもコメントをつけて次回のパンフに載せる活動にこだわっていました。時折その活動はパンフ印刷に間に合わず、発行した追加チラシをパンフに織り込む作業が発生して、イベント当日にスタッフの手を煩わせることが度々ありました。しかし、そういういった活動が多くの参加者を魅了して当時の「そうさく畑」の愛される空気感を作っていたように思います。


いろいろ結果がかみ合っているようでもありますので、今後とも私はこのレビュー活動はなるべく続けたいと思っています。(企画へのエントリー作品数が今後多くなった場合は難しくなるかもしれませんが、その時はその時で考えます。)

 

私のレビュー中の<紹介>の部分には、それぞれの本の電子書籍ストアでの「内容説明」の文章(=書誌)を「私ならこういう書く」と思う内容で書かせていただきました。電子配信をされている作家さんはよければご参考にして下さい。

第22回いっせい配信企画「創作同人2023年7月」

第22回いっせい配信

2023年7月17日(海の日)に創作同人電子書籍の第22回「いっせい配信企画」=イベント名「創作同人2023年7月」が実施されています。この企画は配信する電子書籍ストアを問わず、作品を自主配信してる作家さんが配信日を揃えて、配信情報を互いに広め合うオンラインのイベントです。

 

https://64.media.tumblr.com/f6fec42722e90c2d101ef4b48e1825b3/d37429860dc88c5e-1d/s540x810/32e175475a7347d3d250a48261033270c55659a3.pnj

「いっせい配信」企画は配信日より1〜2日の誤差内の期間(7月15日〜19日)は随時「飛び入り」可能です。まだ「電子書籍ストア」「電子データDLストア」で配信されていない自作のオリジナル作品があれば参加費無料、事前申請不要、「漫画」「小説」「イラスト集」「全年齢向け」「成人向け」等々のジャンルは不問なので、興味のある作家さんは企画サイトをご覧ください。

今回のいっせい配信では7月17日午前の時点では11人の作家さんによる12作品がエントリーしていました。

 

 

しかし、19日までにこの数字はもう少し伸びそうです。…というのはエントリーを確認する午前の時点で、私も砂虫さんも今回のエントリー新刊を1冊ずつまだ配信開始待ちの状態だったから。

「まるかふぇ電書」の新刊は…

私(なかせよしみ)と砂虫さんの本を配信する「まるかふぇ電書」はあわせて以下の4冊の本が配信開始します。

このうちの「金魚と暮らす」と「徒歩で5分…」はともに、5月のComitiaで出された本で、早い目にデータがそろっていたので「いっせい配信日」に間に合うようBLIC出版にも提出することができました。
反面「タバコはなぜ…」は16日の晩にデータが揃い、配信登録を済ませたのですが17日午前はまだ配信が開始していませんでした。そして「竜飼い25」は17日の午前にようやく原稿が全て揃ったという塩梅です。

「竜飼い25」は配信先がこれから増えていきますが、いまのところは配信の手配をして即日に配信を開始できる4ストアのみからの配信でエントリーです。

もう少し計画的に…

「タバコはなぜ…」は実は今回の「いっせい配信」の時期に少しでも注目を集められないか、という作戦で「いっせい配信日」の1週間まえからツイッターで連載した漫画でした。この連載はもう少し前倒しに準備を完了して最終日までのカウントダウンとしてのんびり使う予定でした。しかし、意外に制作に時間がかかり、電子書籍配信に必要な素材の準備はぎりぎりまでもつれ込んで、「いっせい配信」に伴う企画運営作業まで圧迫してしまいました。

おかげで、自身の新刊の広報活動に手が十分に回らず、本来は新刊予告として機能すべきこのブログ記事も、配信日の夜更けに文章を練っている状況になってしまいました。

もうすこし、全体作業の割り振りを考えて、もっと余裕を持って配信日を迎えるようにすべきだというのが、今回の反省点です。

 

 

 

「創作同人2023年3月」レビュー

2023年3月21日に第21回目の創作同人電子書籍いっせい配信企画「創作同人2021年3月」に今回は現時点(3月24日)で12名の作家さんによる14書籍がエントリーしました。 

togetter.com

 私と砂虫さんの本を発行している「まるかふぇ電書」からの今回のエントリー作品はこちらです。

竜飼いの読み方教えます 人道爆弾ができる頃 いちご畑でもぐもぐ 竜の飼い方教えます24
画像クリックでサンプルページが見られます

今回も他の作家さんによるエントリー本の紹介文とレビューを書いてみたいと思います。

2023/3/24

<紹介>
「主様の匂いだ!」
主様の帰りが遅いと寂しがる白兎は、昔はよく主様の袍にしがみついて寂しさをまぎらわせていたことを思い出す。懐かしくなって主様の袍を取り出す彼だが…。

「人喰いの魔物」と「魔物に飼育される少年『白兎』」の暮らしを描く中国風ファンタジーBL「魔物の晩餐」シリーズのほのぼの番外編第1巻。2018年3月開催のJ.GARDEN44にてUMIN'S CLUBより自主発行のコピー誌を電子書籍化。
(健全BL/本文:モノクロ/8ページ)

<なかせ評>
自分の留守中の少年の行動を覗き見る魔王。ストーリーはオーソドックスながらも、少年のかわらしい言動や表情で読者が寄せる期待を確実に満たした展開。

<蛇足>
このシリーズではこの話しか読んでないのですが、最後の魔物のセリフは他の話を読んでるかどうかで印象が違うかもしれません。(私は「ルーとソロモン(三原順)」の決め台詞のように感じました) シリーズ自体は成人向けな中で、この一編は健全BLなので切り分けたように思いますが、単体の独立した読み物としては少々成り立ちにくいようにも思いました。
2018年にPixivなどで流行した「魔女集会」の創作活動から派生した作品群かな?と思ったのですが、調べてみたらそれ以前から描かれていたシリーズだったので、ちょっとびっくりしました。

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魔物の抱擁

 

2023/3/25

<紹介>
「でも、働かないと生きていけないし」
急に映画祭のボランティアをやめた母に代わりその穴を埋めに来た娘の神西妙(じんぜいたえ)は館長たちと意気投合。しかし、母の明菜はエルカンの不法就労SNSで暴露。映画祭は窮地に追いやられた。

中東の映画の映画祭を開催する映画館に関わる人たちの4日間を描くシリーズの「3日目」第1部(全3部)。2022年11月開催の新潟コミティア55にて「千秋小梅うめしゃち支店」より自主発行の冊子を電子書籍化。(全年齢向け/本文45p)

<なかせ評>
在留外国人の就労問題に言及する今回のお話。ストレートな物言いの妙(たえ)が問題点にダイレクトに切り込みます。さらに彼女が加わることで登場人物たちの対話が進み、個々が抱える諸々の問題の共有されていく過程が面白い。とくに館長の百合に昔の自分を思い出させようと龍太郎がとった行動の一幕が ドラマチックな展開でした。

<蛇足>
作者さんは当初このシリーズを1日=1冊の4日分ストーリーとして計画されてる様子だったので、「この複雑なストーリーを4話でまとめられるの?」と心配していたのですが、3日目を3話構成にする計画に変えられたようで、ちょっと安心。魅力的な人物配置で繰り広げられているドラマなので、あわてずじっくりと取り組んでいただきたい。

14Pでエルカンは「仮出所」と言ってますが、ちょっと気になって調べてみたらこれは刑務所に収容された場合の言葉で、エルカンは多分入国管理局に収容されていたので、この場合は「仮放免」と言うみたいです。ちなみに入管施設に収容された外国人の「仮放免」には保証金(数十万円程度)と身元保証人が必要のようです。

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東の果ての映画祭3日目AM

 

2023/3/26

<紹介>
「数百個の小型核爆弾を起爆させて前進する」
核パルス推進船「イッパツカマセ」はあらゆる陸地から最も離れた地点から打ち上げられ、搭載質量1万トンの補給物資を軌道上まで送り込む。広報を兼任するせ整備員の私はこの宇宙船に乗り込んでレポートします。

現代技術の延長上で宇宙への大量輸送を可能な「核推進」を紹介する単発読み切りSF漫画。付録コラム「核パルス推進船」も収録。2023年2月に開催のCOMITIA143にて「人類圏」より発行の自主出版誌を電子書籍化。(全年齢向き/本文:29P)

<なかせ評>
多分日本初の「核パルス推進船」をメインに出した漫画とのこと。核爆弾の起爆で推進するシステムの図解がわかりやすく面白い。描写は絵画的でもあり、いつまでも眺めていたくなる。「核推進」の実用化に際しての最大のネックは技術的な面より「核」に対する現代人の不信感をどう克服するかにあると導く展開も興味深い。中核は技術設定の紹介漫画なのに、かわいい女の子の登場をきっちり組み込む構成は八木まんがファンの期待を裏切りません。
今作には長編ハードSF「人類圏」シリーズの主役の「鎹涼子」も登場するが、設定は「ジャーナリスト」ではないので、外伝というよりパラレルワールドもしくは「前史」かな?

<蛇足>
たまたま今回の「いっせい配信」で私も八木さんと同様に「一つの科学技術を中核にした読み切り漫画」をエントリーさせていて、双方とも「その技術をとりまく社会や情報のありよう」に話がシフトしていたのでびっくりしました。それぞれの題材を双方がどういう漫画に昇華させたか、という観点で見るのも面白いかもしれません。

個人的には核への不信感を「核アレルギー」と記述してる点が少し気になりました。核の安全性不信は論理を超えた域にあるという評は確かに否めませんが、その不信感を掻き立てた過去の「事故」は現実に起きてますし、不信感を払拭するための関係者側からの過干渉や情報隠蔽も明るみになっています。これらは不信感を抱く側の一方的責任とは言えないので、それを「精神的な拒絶反応」のように揶揄する用語には少々抵抗を感じます。

核推進の実用化が人類にかけるであろう負荷は「たとえば現代の自動車技術によるものに比べても軽微」という論理はわかります。ただ核推進の場合は「最もうまく運用できた」際の「理想論理値」であり、実際には大幅な誤差が生じ得ること、他方では自動車技術における「理想論理値」は「将来交通事故死亡者数0」であることを考えると、少々ずるい論法のようにも思いました。

<蛇足の蛇足>

私個人は核技術は将来的には人類にとって大きな躍進の要になると思っています。ただ、情報処理技術の発展との兼ね合いなどを考えると、核技術の進展には人類のとっては「100年ほど早かった」のではないかと感じています。

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ポイント・ネモ

 

2023/3/27

<紹介>
"Why isn't this lovely book selling?"
Riding the Inter-”Id” Railway that connects  floating cities "Id"s, Miu continues selling her boyfriend Kagero's doujinshi at various comic markets. However, as the books fail to sell, her journey continues. 

A fantasy manga series of interconnected stories that depicts Miu's encounters with various people and places during her railway travels while she continues to sell her deceased boyfriend's final work alongside his former friends. The book includes two story manga, a four-panel comic version, and commentary. 

Originally published from "Kurobokuya".
 "Kagero" (32 pages, Comitia110, November 2014).
 "Fancy meeting you here " (42 pages, Comic Market 88, August 2015). 
 four-panel comic  ( 7pages ,Comitia112, May  2015).
 
This is the English version of a Japanese  e-book released in November 2015.
Manga in right-to-left reading format.
(Suitable for all ages/ Main text : monochrome 102-page)

<上記の英文は以下の和文をChatGPTに英訳させたものに修正を加えて作成>
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「なんでこんな素敵な本が売れないの?」
浮遊都市「異土」をつなぐ異土間鉄道を乗り継いで美雨は影郎の同人小説を即売会で売り歩く。本は売れないので彼女の旅は続く。

恋人のかつての友人たちに同行して彼の遺作本を売る鉄道旅をつづけるヒロイン。その道中に訪れる場所やすれちがう者たちとの出会いを描くファンタジー連作漫画。ストーリーマンガ2編と4コマ版と解説文を収録。
初出一覧 「クロ僕屋」より発行
「かげろう」32p 2014年11月 Comitia110
「合縁奇縁」42p  2015年8月 コミックマーケット88
4コマ版 7p 2015年5月 Comitia112
2015年11月に配信開始の電子書籍を英訳。
右綴じマンガ/
(全年齢向け/本文モノクロ102p)
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<なかせ評>
作品自体は地方の同人誌即売会遠征の道中記をファンタジー世界に置き換え。その設定の上で展開する人間ドラマです。売れない本を抱えての行脚の悲哀や道中の待ち時間をつぶすのに使ううらぶれた施設の描写は現実を如実に反映しています。また、8年前のまだ描画スタイルを模索中の作者のこの時期の筆致も、挑戦的で力強く、色あせることはありません。思いもよらないストーリー展開は何度読み直しても面白いです。
8年ごしに改めてこの作品に向き合って英訳された意図は理解できました。

<蛇足>
ただその結果できた英訳版が果たして英語圏読者に届くかどうかについては、ちょっと厳しいものを感じました。文法の間違いや前置詞の誤用が頻繁にあり、英語的な理解が随所で阻まれていました。
AIの自動翻訳を用いれば文法間違や用語誤りはクリアできますので、こういう新しい技術の活用をお勧めしたいところです。

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Hawkers' dead stock

 

2023/3/28

<紹介>
「恐ろしい夢を見て目が覚めた。」

八尋瞳治は友人と二人だけの空間で対話しながら脈略もなく急に彼の首を絞める。そのさ中に八尋は目を覚まし、それが夢であることに気づく。

多重の夢の中での友人との対話を経て主人公の内心を解明していく短編読み切り小説。
2023年3月に開催の九州コミティア7にて「すとれいきゃっと」より発行の文庫本をPDF化。
(全年齢向け/本文30P)

<なかせ評>
はじめから4〜5ページを読み進めると読者は八尋が夢から「覚めて」別の夢に移行しているというストーリー構造に気づきます。夢の中の「友人」との対話で八尋の暴力的な衝動と彼が抱える閉塞感の関係が解明されます。ただ最後まで閉塞感の理由解明はなく、もしかするとそれは作者自身もかかえる「漠然とした閉塞感」なのかもしれません。

また主人公たちがいる「場所」が特定できない部分もあるので、何回夢を移行しているかは少々不明瞭。一度だけ「目を閉じる」ことで次の場面に移行しているので、その部分は「現実」だったという解釈もできますが、確信できません。そのために、最後の場面も夢なのか、現実世界で夢を再現したのか識別できません。

もしかするとこのお話は最後まで主人公の夢の話で「夢オチ」なのかもしれません。

<蛇足>

「他人の夢の話を聞かされるほどの苦痛はない」と言われますが、あえてそれを地で行く小説。話の中では主人公は自分を理解してもらうために「友人」に苦しみを与えてますが、それと相似形の苦しみを再現するために作者は読者にこの文章を読ませているとすれば、その企みは成功です。

ただ、その企みに最後までつきあってくれるのは、よっぽどの理解者か、あるいはそれこそ「職務的に付き合う立場に置かれたカウンセラー」しかいないかもしれません。

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夢堕落な日々

 

2023/3/29

<紹介>
「みかんがおいしいので色々かいてみました」
デコポンズ、柚子、金柑、レモン、晩白柚フィンガーライム。柑橘類をテーマに描いた少女絵。

2022〜2023年に開催の創作同人即売会にて「くだん書房出張所」よりで発行のテーマイラスト折本を5冊合本のうえ電子書籍化。(全年齢向け/本文フルカラー40p)
収録タイトル
シトラスガールズ 〜柑橘少女〜」2022年2月20日 COMITIA139
「Silent Flowers」2022年5月5日 COMITIA140
Ribbon oRibon リボン折本」2022年6月12日 MGM2-37
「Magic mushrooms」2022年11月27日 COMITIA143
「とけやつぼみの花の紐 母校制服あれこれ」2023年3月19日 MGM2-39

<なかせ評>
自由奔放な発想をカラフルでかわいい少女絵で繰り出すイラスト集。テーマのくくりかたラインアップの並びが楽しい。
母校制服がテーマの巻の注釈やトークも興味深い。作者が女子高生時分に参加されていた商業雑誌の愛読者だった自分としては、当時のご本人の日常の一端が伺えて感慨深かった。在校時はださいと思っていた校章入りアイテムを卒業後に惜しがったり、セーラー服にあこがれていたのに着れなかったりというエピソードも面白かったです。

<蛇足>
8枚の絵をA4用紙にカラー出力、これを1/8に折ればA7サイズのフルカラー本が完成。
同人イベントでお目当てのサークルスペースにあれば手を伸ばしたくなるが、小さい本は家に持ち帰ってからの 「保管場所を迷う」という難点が。しかし、この本のように電子化されればスマホでいつでも持ち歩ける、印刷とほぼ同じサイズで鑑賞できるので、コレクターにとっては嬉しいはず。
小さい本のもう一つ難点は、イベント会場で存在がついつい見落とされること。実は今回の電子化ではじめて小杉あや先生がこういう本を毎回出していたことに私は気づきました。次回以降のイベントでは見逃さないよう注意したいと思います。

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折り本合本

 

2023/3/30

<紹介>
「現在 反天府軍による全気環規模の攻撃が行われています」
天府側の惑星級「星霊」をつづけさまに2体退けた「人類、動物、幽魔」連合の反天府軍。天府は「声(テレパシー放送)」を使って民衆の間に反天府軍への反感を広めるという手に出る。しかし、天府のこの企みは民衆にまぎれて暮らしていた幽魔「泣く赤鬼」の「呪い」を呼び覚ます。天府の姑息な攻撃は反天府軍の結束でつぎつぎと跳ね除けられる。

天府が支配する死後の者たちが集まる世界で目覚めた少年 ギンガは反天府軍に加わり戦う。数話ごとのまとめ本を描き下ろし電子書籍配信にて展開するSFテイストの長編ファンタジー・バトル漫画シリーズ。今巻は第31話〜第36話を収録した第6弾。(全年齢向き:本文94p)

<なかせ評>
めまぐるしく展開する天府と反天府の攻防。天府側はプロパガンダを広めたり、不意打ちを狙ったり、人質をとったりとつぎつぎ姑息な手段を取る。しかし反天府側はそれらの策をはねのけて天府を徐々に追いつめていく。今巻では主人公ギンガも圧倒的なパワーを発揮してで反天府の反撃の一助となります。

天文学的スケールの「星霊」からの多様な攻撃も「ものともしない」反天府軍の面々が頼もしい。特に全身の中でコアを移動させて致命傷をさけて再生を繰り返す「天王星霊」を打ち倒すステップマンモスのディーバの戦い方が圧巻。天府側の総指揮 をつとめる星系長の悪役ぶりが徹底しているので、それだけに反天府軍に鼻を明かされた時の表情が痛快で笑えます。

天府側は惑星霊の残りを全部投入してきたので、戦いもいよいよ大詰めかな?

<蛇足>
この分量の原稿を描き下ろしで発表し続ける執筆体制には毎度圧倒され、敬服します。

第5巻は昨年7月に「Kindleインデイーズ」の無料マンガでの公開でしたが、9月にこれを通常のKindle販売に移行させ、今回の第6巻は通常Kindle販売で公開されている模様。勝手が想像ですが、Kindleで専売されているようなので、価格を200円を250円あげた上で「セレクト」を選択して「Kindle Unlimited」登録にした方がむしろ作家さんが望む購読が得られるのではないかと思います。

ちょっと気になったのは天府軍の人数が多く、もはや名前のあるキャラクターがどれだけの人数いて、誰が誰でどこにいるかを把握するのが難しいレベルになっていること。そんな中なので主人公ギンガが今回活躍があったのにもかかわらず存在感がすこし薄らいでいる気がします。むしろメガロドンの「ブルー」やゴリラの「ガル」が表情豊かで感情をあらわに登場するシーンが多く、存在感が強くて、主人公に代わりにストーリーを牽引している感じですが、それはそれでいいのかもしれません。

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MYMYTH 6 ーマイミス 6ー

 

2023/3/31

<紹介>
「私の楽しみに 水をさす思春期の『私』」
もらったチケットで行ったライブをきっかけにアイドルにハマる会社員の越高さん。会場で買ったペンライトは彼女の心を支える「魔法の杖」になる。しかし魔法の杖は「悪魔」をも呼び覚ました。その「悪魔」とはアイドル嫌いだった「昔の自分」だった。

大人になってから「推し活」にハマった社会人が、過去の自分と対峙する「心象ファンタジー」の読み切り短編少女マンガ。2022年11月開催のCOMITIA142にて「突撃蝶々」より発行の自主出版誌を電子書籍化。(全年齢向け/本文32p)

<なかせ評>
アイドルの「推し活」がテーマの作品は方々でちょくちょく見かけるようになりましたが、これはその中でも群を抜いてよくまとまった掌編だと思います。

ペンライトを「魔法の杖」に見立てた描画を盛り込みつつ、同時に「魔法」をキーワードにストーリーを展開させる巧みには圧倒されました。主人公をとりまく「アイドル好きな同僚」や「おたく仲間の若者」といった人物配置や彼らとの会話も絶妙。エンディングの着地点も見事で「王道の少女漫画」を読まされた気分です。

<蛇足>
商業誌用に手掛けられたネームなのに掲載には至らなかったとのことですが、複数の編集部にかけあってくださった編集者さんの気持ちがよくわかります。「商業雑誌」の限界(?)を感じるとともに、この作品に日の目を見る機会を与えた「創作同人」の世界があったことがよかったと思いました。

大人になるにつれ、何かしらの「若気のいたり」や「やらかし」を見た際に、それがかつての自分だと気づく機会は誰しも増えてくるのではないかと思います。批判的な目で見ようにも、当時の自分が真剣だった記憶もあり、「今」と「当時」の板挟みになって、のたうちまわります。そんな「大人になる(必ずしも「成長」ではない)」ドラマを端的に描き上げた作品だと思います。

<蛇足の蛇足>
2023年第一季に深夜放送されていた女子柔道アニメ「もういっぽん!」のOP曲で「邪魔しないでよメモリー、暇じゃないから」というフレーズが「聴いててやたらに心に刺さるなぁ…」と思ったのはこういうことだったのかもしれないなぁと、思い出しながら読んでました。

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まほうのつえ

 

2023/4/1

<紹介>
「来訪回数が千回を超えると辿り着く、 それが裏京都です」
久々に京都を訪れた魔女のルーコは歩いてるうちに異様な光景に囲まれている自分に気づく。訝しがっていると「案内人」が現れ、ここは「裏」の京都だと教えてくれた。「裏京都」では「地面を無限に埋め尽くす賀茂茄子」や「全長10kmを超える無限の森」などが見られる。

魔法使いのルーコが様々な人々と出会って対話する連続4コマ漫画シリーズ「魔法使いのお時間よ」第101話。2023年1月に開催の関西コミティア66にて「まり王」より発行の自主出版誌「魔法使いのお時間よ〜裏京都とまれびと〜」の前編を電子書籍化。(紙版は後編の第102話も収録)
(全年齢向け/本文モノクロ(一部フルカラー)18p)

<なかせ評>
現実の京都とはかけ離れた「幻の京都」。そこで見られる風景の「発想」と「描写」が楽しい回。

表の京都から裏に通じる通路配置や経路描写がなかなかのファンタジー(「キングクロス駅9と4分の3番線」みたい)。京都の四季を堪能できる「裏糺の森」は「お得感」がある上に圧巻の光景。「初心者にはキツくてヤバい」場所があると聞けば速攻で行ってしまうルーコには共感しかない。

この京都に行ってみたいが、京都を千回訪れないと行けないらしいので、なかなか厳しい(笑)。

「前後編」の「前編」のようで、どういう「後編」に続くのか、とても気になります。

<蛇足>
「京都の町並みとか描くのが面倒臭い」から「裏」にしたとのことですが、いやこっちの方が描くの大変では?と思う。でも「これなら描写のミスなど指摘されることもない」という考えにはなるほど納得。

<蛇足ついでの校閲情報>
16pのあとがき文
関西コミティアの開催日が「2月」になっています。→「1月」
キンドルの英語綴りが「kidnel」になっています。→「kindle

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魔法使いと裏京都 魔法使いのお時間よ

 

2023/4/2

<紹介>
「鏡かと思ったら他人だったってパターンは初めてだ」
級友とファッション誌のキャミを見て「カワイイ」とはしゃぎ、通販でそれを取り寄せて、週末の待ち合わせに着て行くと、級友も同じものを着て来てドッペルゲンガーの出来上がり。でも、せっかくだから…髪型もメガネももっとお互いに寄せて遊んじゃえ!

街中、学校、家庭内、ファンタジー世界などで展開する人間模様マンガ、大阪万博公園「太陽の塔」訪問レポート漫画、参議院選あわせの「投票奨励マンガ」など2〜8pの短編マンガを合わせて22タイトルを収録。2016年、2018〜2020年初頭の創作同人即売会にて「Rimland」よりで発行ペーパー掲載用に毎回描き下ろしの漫画等を集めて電子書籍化。
(全年齢向け/本文135p)

-収録作品初出一覧-
「コンストラクション・タイム・アゲイン」2016年1月31日 コミティア115
リヴァイアサン」2019年1月20日 関西コミティア54
「むずかしい雨」2016年8月24日 みちのくコミティア
「ダディーズ・オールライト」2016年6月12日 新潟コミティア45
「まちのあかり」2016年10月2日 関西コミティア49
風が吹くときどき。」2016年10v23日 コミティア112
「運命の人」2018年2月11日 コミティア123
「OK,GO.」2018年5月5日 コミティア124
ドッペルゲンガー」2018年7月1日 新潟コミティア49
「コード進行を変えてみる試み」2018年8月19日 コミティア125
「太陽と太郎と無理と無謀と」2018年11月25日 コミティア126
「『たった一票』じゃない話。」2019年7月14日 みちのくコミティア5
「屋上の姫」2019年2月17日 コミティア127
「憂悶の魔法おじさん」2019年3月24日 名古屋コミティア54
「泳げない人魚」2019年6月30日 新潟コミティア51
「その指のかたちで。(目が覚めたとき君がそばにいてほしい)」2019年5月12日 コミティア128
おまけ(をの1)(その2)描き下ろし
エコロジーバッカーズ」2019年8月25日 コミティア129
「10月12月」2016年11月3日 名古屋コミティア46
「彼女と彼女と酒と古本と彼女と。」2018年10月21日 新潟コミティア50
「私が元・魔法少女と知ったうえでの無茶ぶりですか!?」2019年9月29日 関西コミティア56
「松本REVISITED」2019年11月23日 コミティア130
「Answer」2020年2月2日 第2回一次創作エア同人誌即売会

<なかせ評>
多彩な人物たちがあたかも実在で生きているように言葉を交わし、想いをぶつけ合う。リアリティのあるドラマ1シーン「切り取り」のショートストーリーが「これでもか」というほど詰め合わされてます。「1シーン」では物足りない読者へは同じ人物たちが活躍する別の「本編ドラマ」への誘導がある話もあり。
個人的には「泳げない人魚」のショートヘアの子の「勢いの止まらなさ」が好き。

<蛇足>
64pの欄外に記されている「ニコチン依存症の仕組み」について私が描いた漫画はこちらです。
「タバコはどうしてやめられない?」 https://www.pixiv.net/artworks/6716170
「ニコチン・ラプソディ」 https://www.pixiv.net/artworks/6712915

www.pixiv.net

短い作品がいっぱい詰まってるのは嬉しいですが、作品ごとの切れ目が認識しづらいのを少し難に感じました。「この続きはこの先どうなるの」と思いながら読み進めたら「さっきのページで終わってて、次の話に入っていた」という状況が何度も発生。個々の話の終わりにはエンドマークをつけた方がいいです。

また作品の付加情報や解説が数編分作品の前にまとめて書かれていますが、読者的にはこれは作品を読んだ後で読みたいですし、一個ずつが個々の作品の直後配置されている方が「どの作品の情報か」を確認するのにページを行ったり来たりしなくて済むので、ありがたいです。
電子書籍はいくらページ数を増やしても読者の負担にはならないので、最初からずっと同じ方向にめくって最後にたどり着く読み方での印象を大事に考えることをおすすめします。

サブタイトルのカタカナ表示に迷っている記述がありましたが
「EcologyPackers」なら→エコロジーパッカーズ
「EcologyBaggers」なら→エコロジーバガーズ 
…になると思いますが、レジの詰め作業の話なので
「EcologySackers」→エコロジーサッカーズ が一番適切だと思います。

<蛇足の蛇足>
「『たった一票』じゃない話。」では「JUST DO IT」と「投票」奨励していますが、
選挙について私は個人的に若干の異論があります。

基本的に国民の大多数は「政治に興味がない」「興味がないから知らない」。
誰に投票すべきかわからない者の票は「周りが推す候補」「悪目立ちする候補」に流れます。
むしろ彼らの票はいいように利用され、かえって政治を悪化させます。
また、有力な候補とその対抗馬を見抜いて投票しないと「死に票」になります。
選挙についてはまずは「政治に興味を持つ」こと、
興味を持つにはまずは自分と意見が異なるものと「対話する」ことを私は勧めます。

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RIMpack2016・2018・2019±

 

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私のレビュー中の<紹介>の部分には、それぞれの本の電子書籍ストアでの「内容説明」の文章を「私ならこういう書く」と思う内容で書かせていただきました。電子配信をされている作家さんはよければご参考にして下さい。