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なかせっとHatena

漫画家「なかせよしみ」がちょっとまとまった文章を公開するためのブログ

COMITIA117「紙&電子同時発行」企画を始動

「COMITIA116」にサークル参加を申し込まれた方は参加証を受け取り、イベント参加の準備を進められている頃合いと思います。コミティア史上2番目の規模の「5400サークル」の「創作ONLY同人漫画イベント」が5月5日にビッグサイトで開催されます。それから3ヶ月後の8月12日~14日にビッグサイトコミックマーケットが開催され、その翌週の8月21日に開催されるのが次々回コミティアつまり「COMITIA117」です。

 

 まだ5ヶ月も先のイベントですが…

 

実はここ1ヶ月あまり、私はこの夏コミティアに向けてある「企画」のために動きはじめていました。

 題してCOMITIA117「紙&電子同時発行」企画 

 

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これはコミティアに参加している作家さんに漫画電子書籍の市場参入をお勧めする企画ですが、実は「パソコンを持たないアナログ作画の作家さん」も参加できるお話です。

 

     ↓ 詳しくはこちらをご覧下さい。

kami-densi-douji.jimdo.com




 以下にこの企画の発足までの経緯と企画の概要を説明します。

 

「企画」発足の経緯

2012年より漫画の電子書籍化に乗り出している私ですが、…2013年に「コミティアX3」にて「電子出版書店」企画で20サークルの本のPDFデータを預かり、それをダウンロードできる「チケット」を手渡し販売する企画を立てたり、その後5つの電子書籍ストアで30タイトルの漫画を配信したこともあり、即売会などで会う人からちょくちょく相談を持ちかけられます。

 

そんな中で、時々来るのが…

「有償でいいから、自分の漫画を自分の代わりに電子書籍化してストアで売ってくれない?」というご相談。これには私はどう対応していいかちょっと困ってしまいます。

 

 実は漫画原稿の電子書籍化と複数のストアでの販売を代行する業者はすでに世の中に存在します。

 

 最近は見かけなくなりましたが、少し前はコミティアでもそういう業者の営業がサークルスペースを一つずつ回っていました。彼らは机に置かれた本を一切買おうとも開こうともせずに「電子書籍に興味ありませんか?」と尋ねていました。

 

 私はそういう業者を活用することには否定的です。

 

電子書籍化作業は要領を得れば誰でも単純にこなせる作業ですが、トライ&エラーの繰り返しも結構あります。そんな作業のたびに「お金をかける」のは漫画を描くのにペンをインクにつけるたびに「お金をかける」ことと同等です。

 

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 自主配信の電子書籍においては電子化作業は「創作活動の一環」として作家本人がやるべきと私は考えています。だから、相談をして来た相手には心を鬼にして「電子書籍化作業の要領を習得して下さい」と言えばいいのかもしれません。しかし、電子書籍をとりまく現況もそれほど生易しくはありません。

 

 電子書籍の配信登録はPixivにjpegの画像ファイルをアップロードして画像の説明を書き込むのと要領は同じです。ただ「jpegの画像ファイル」の代わりに用いるのが「epub電子書籍ファイル」。(Kindleではepubを内包したmobiを使用します。)この「epubの書籍ファイル」は構造が複雑で簡単に作れないのです。

 

 実はすでに電子書籍を個人配信している多くの作家さんもepubを詳しくは理解していません。私はepubを作成ソフト等活用せずに「自作」していますが、まだまだ理解しているとは言い難い状況です。そのせいで、電子書籍をダウンロードするとしばしば「ファイル作成を失敗している作品」を見かけます。

 

 失敗の原因はepubというファイル形式が「漫画」にも「小説」にも用いられるものなのに「漫画本作り」に特化したepubを制作できるソフトが少ないことです。市販の「漫画制作用ソフト」にはepub出力の機能を備えているものもあります。しかし、廉価なソフトにはその機能はなく、epub生成だけを目的にソフトを購入する場合は高い買い物になります。

 

 漫画家の間ではKindle用にmobiを生成する「Kindle Comic Converter」が比較的簡単だという評判です。しかし、これを使いながらもファイルサイズが異様に大きい作品や、ページの「のど」と「小口」を逆にしてしまっている作品を見かけます。

 

 epub(mobi)を失敗せずに作れるには結構の知識と経験値が必要です。

しかし、その知識と経験値を習得して電子書籍を出せたとしても、その販売状況はどうでしょう?

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個人配信の電子書籍についてはいくつか華々しい販売成績が話題として流れてきています。

 

しかし、ほとんどの個人配信の漫画電子書籍に読者の手は伸びていません。「配信を開始して半年でようやく10人目の読者が購入」などという話もザラです。2012年以降に私が配信した漫画電子書籍は30タイトルにもなりますが、累計販売数が3桁になっているものは全体の半数ぐらいです。

 

 「電子書籍ユーザーは個人配信漫画にはあまり興味がない」

…というのが私の印象でした。

 

「多分、同人で私を知っている人しか私の電子書籍は買っていない」
「だとすると、電子書籍同人活動の補助にしか使えないかも」
…と思っていました。

 

 たまには同人誌の世界とは縁がなさそうな読者の好意的な感想をネットなどで見かけました。しかし、私の漫画電子書籍の市場に対するイメージはだいたい上記の内容で固まっていました。

 

 「しかし、それでも、それは同人活動の補助としては使えるぞ!」…と思い、先日の1月開催コミティアでは私はセルシスのスペースで「コミティア作家のための電子書籍」という題材で講演をしました。(講演の内容はこのブログの以前の記事で紹介しています)

 

 実はこの講演は昨年12月に私がKADOKAWA直営の電子書籍ストアのBOOK☆WALKERから依頼を受けたものでした。講演内容を12月初旬に担当者と打ち合わせて決め、1月30日まで準備をすすめて行きました。

 

 しかし、実を言うと…

講演当日は、私自身が持つ漫画電子書籍の市場のイメージはもはや上記のものではありませんでした。2016年の1月に私のそれまでの自分の「電子書籍の売り方」の間違いに気づく出来事がありました。

 

 それは「餅マンガ」企画への参加です。

 

 この「餅マンガ」についての話もこのブログの以前の記事で紹介していますが、簡単に説明すると…

 企画自体は「1月8日に『餅』がテーマの漫画電子書籍」を一斉に売ろうというものでした。私は冬コミの新刊としてそれ用に24ページ漫画を作成し、それを電子化して企画にエントリーしました。

 

冬コミで紙の本はいつもよりちょっといいぐらいのペースで売れましたが、電子書籍は2週間で冬コミでの販売数を越え、現在は累計販売数が1500です。1月のコミティアでもこの本を販売しましたが、2月も電子の販売数は冬コミの数量を越えて「3ヶ月連続のコミケ」状況になっています。

 

 この同人誌漫画を買って読みたい読者が即売会の読者より多く電子書籍の市場の中に既にいたのでした。市場には「即売会の補助」程度ではなく、あきらかに「即売会に並ぶ」ポテンシャルがあったのです。私は今までそのポテンシャルを引き出せなかっただけです。

 

その理由は単純でした。 

 

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たとえば、コミケの有名サークルがある日、街中の大きな書店の前で即売会の机を置いて新刊を出した場合、どうでしょう?通りには1日のコミケを超える人口が通過します。有名サークルの活動を聞きつけたファンがちょっとした行列を形成するかもしれません。それでも、コミケの1日に比べたら本の売れ行きはサッパリになるはずです。

 

 これがさらに有名でもなんでもないサークルだったら売れ行きの差はさらに顕著になります。どんなによい本でも多くの読者に手にとってもらうには読者が自ら足をそこに運ぶ「イベント」が必要です。それは電子書籍の市場の中でも同じだったのです。

 

 「餅マンガ」企画にエントリーした電子書籍はわずか8タイトルでした。しかし、その8タイトルが「電子書籍市場」の「イベント」を形成、コミケコミティアに並ぶ購買ポテンシャルを引き出しました。私の本を買った読者は私の既刊の電子書籍にも手を伸ばして下さり、今までに見ないペースで売れています。これも即売会イベントで話題になる本を出した時の動きと同じです。

 

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個人出版電子書籍は「好きなタイミングで配信できる」ことも魅力の一つですが、個々人がバラバラに販売していては市場のポテンシャルを引き出せません。市場の中で「イベント」を作り、参加者全員でその「イベント」について広報することで読者を集め、購買をまとめる必要があります。みんなで足並みをそろえられる「イベント」を構成すれば電子書籍市場のポテンシャルを呼び起こせます。

 

 そんなわけで、電子書籍参入を周りの作家さんにオススメするには二つの課題があることに私は気づきました。

 

1)「多くの作家にとって漫画電子書籍は作るのが難しいこと」
2)「市場のポテンシャルを引き出す『イベント』が必要なこと」

 

 この2つの課題をコミティアに参加している作家さんたちで克服できないか考えました。コミティアの作家さんたちが揃って電子書籍配信できるコンテンツを持ち寄せられる日はいつか。

…それは間違いなく「コミティア当日」です。

 

 しかし、コミティア内には電子書籍に興味があるものの、技術的に難しいという(中にはパソコンさえも持ってない)作家さんも大勢います。そこで私はこの件をBOOK☆WALKERに相談してみました。

 

 BOOK☆WALKERは個人での電子書籍配信に自社ストアを使う作家さんを大募集しています。私は以下の3点を伺いました。

 

1)夏のコミティア直前に大人数の配信を受け入れ可能か?

2)集まった作品群をストア内でまとめてプレゼンテーションすることは可能か?
3)「Pixivでの画像登録なみに簡単」な漫画の登録システムを装備できないか?
(できればコンビニコピー機のスキャン画像とスマホだけでも登録できるシステム)

 

BOOK☆WALKER側はこれらのことが「可能」だと言われたので私は今回の「Comitia117『紙&電子同時配信』企画」を発足する決意をしました。


企画概要

企画はCOMITIA117で「新刊」を発行するサークルなら誰でも自由に参加できます。

 

以下の5つのステップに従って下さい

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
STEP1
COMITIA117にて発売予定の「新刊」を電子書籍のストアでコミティア当日(2016年8月21日)発売開始になるよう配信登録してください。

 

STEP2
電子書籍の書誌には「サークル名」「当日のスペース配置」そして『COMITIA117紙&電子同時発行企画』の文言を入れてください。

ー<実例>ーーーー
(書名)「でもくらの糸場3」
(著者)なかせよしみ
(書誌)
「なんで思った通りに動かないんだ?」。マーコとトーコが練り上げた秘密の糸繰り作戦はいきなり暗礁に乗り上げた。大正9年の「糸場」での少女たちの日常を描くコメディ漫画シリーズ第3弾。2016年8月のコミティアにて「まるちぷるCAFE」より発行の自主出版誌。(本文40ページ)

「COMITIA117紙&電子同時発行企画」参加作品。会場内スペース「お16a」。
ーーーーーーーーー

 

STEP3
電子書籍の「検索キーワード」または「タグ」に『COMITIA117新刊』と記入してストア内の検索で登録書籍がその言葉でヒットするようにしてください。

 

STEP4
ご自身のTwitterFacebook、Pixiv等のSNSやブログなどで新刊情報を発信する際には「COMITIA117紙&電子同時発行企画」参加の情報と企画サイトへのリンクを書き添えてください。「企画サイト」は現在準備中です。

 

STEP5
コミティア当日のサークルスペースで「紙&電子同時発行」ロゴを表示してください。

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ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「STEP 5」を実施するかどうかは各人の自由とします。
ロゴを使用する際のサイズは自由です。サークルで発行のペーパーや本の表紙や本文内や宣伝用web画像内やサークルのサイト内画像およびサークルカットなどでも自由にお使い下さい。

 

 

BOOK☆WALKERの企画協力

この企画に使用する電子書籍ストアの選択は各人の自由ですがKADOKAWA直営の電子書籍ストアBOOK☆WALKERからは以下のような協力が得られる予定です。

 

 1)BOOK☆WALKERに登録された企画参加本が一覧できる特設ページの開設。

8月18日までに登録された書籍の書影が表示されます。19日以降に登録された作品は配信準備が整い次第の表示となります。また、18禁作品の書影閲覧には年齢確認が必要なので全年齢向け作品とは別ページになります。

 

 2)電子書籍のノウハウがなくても利用可能な「epub生成システム」の装備。

epub生成システム」を使えば出版社が配信しているものと同様の漫画電子書籍を配信できます。パソコンがなくてもコンビニコピー機のスキャン画像とスマホだけで利用できます。使用法についてBOOK☆WALKERはわかりやすいマニュアルを用意する予定ですが、この企画サイトの方でもデジタル苦手の方でも簡単にこなせる形に紹介させていただきます。

 

<追記:7月26日のブログ記事でepub生成システムについて紹介しています>

→「漫画の電子書籍の作成に最適システムが完成
http://y-nakase.hatenablog.com/entries/2016/07/26

 

さらにBOOK☆WALKERは作家側で閲覧ページを指定できるサンプル閲覧機能を装備しています。こちらに書籍登録すれば、特設ページはWEB上のコミティア「見本誌スペース」として活用できます。

 

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 中には「紙と電子を同時に発行すると、紙の本の売れ行きが落ちるのでは?」と心配される方も多いと思われます。しかし、コミティアの読者さんは紙への嗜好が強いのでそれほど心配はありません。むしろ、電子書籍が新たな紙の読者を獲得する経路として機能することも期待できます。

 

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 また8月コミティアコミケの翌週で「2週連続で東京には行けないよ」という読者さんも多いです。そんな読者さんのために新刊本をコミティア当日に買える経路を確保できます。


企画応援の「部活動」発足

この企画の情報をより広く知ってもらうためにCOMITIA内の「部活動」を展開します。COMITIA117「紙&電子同時発行」企画 応援部

 …です。

 

 この企画はより多く「電子書籍」に興味のある作家さんに参加いただくことに意義があり、より多く参加いただくことで大きな成果が得られます。

 

この企画は8月21日の実施まで「企画サイト」や「チラシ」等での広報を行う予定ですが、「部員」はこれらの広報活動に各人ができる範囲で協力します。また、それ以外にも「企画」や広報活動についての様々なアイデアを出し合って、検討・実践できればと考えています。

 

応援部はこのような「部活動」に興味のある「部員サークル」を募集します。

 

 企画自体はCOMITIA117に新刊がある作家さんなら誰でも自由に参加できますが、企画情報の拡散活動等に興味のある方は是非、応援部の「部員サークル」としてご協力下さい。入部をご希望のサークルはエントリー・フォームよりご連絡下さい。

 

 なるべく多くのコミティアの作家に漫画電子書籍の配信に乗り出す「機会」を作り、さらに電子書籍市場の持つ購買ポテンシャルをみんなで享受するための企画です。

 

 どうぞ、ご協力をお願いします。

 

 なかせよしみ

 

 ※COMITIAコミティア実行委員会、BOOK☆WALKERは株式会社ブックウォーカー登録商標です。当企画はコミティア実行委員会、及び株式会社ブックウォーカーの了承を得て実施しています。

 

 

 追記:2016年4月1日 企画の公式サイトをオープンしました。

kami-densi-douji.jimdo.com