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なかせっとHatena

漫画家「なかせよしみ」がちょっとまとまった文章を公開するためのブログ

「餅マンガ」企画とKindle攻略

何度かこのブログにてレポートしています「餅マンガ」企画について、そろそろ最終的なまとめを書きたいと思います。

 

電子書籍情報のまとめサイト「きんどるどうでしょう」の「きんどう」氏による呼びかけで「『餅』がテーマの漫画電子書籍を1月8日に一斉に発売」という企画にうちのレーベル「まるかふぇ電書」からは、私と砂虫さん(私の嫁さん)が「餅がたり」と「もちもちのもち」でエントリーしました。そして、1ヶ月が経過。双方とも想像以上に多数の方々にご購入いただきました。

 

本当にありがとうございます。

 

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うちでも初めての試みとして同人誌即売会用の「紙書籍」と「電子書籍」がほぼ同時の発行としましたが、紙書籍版の「餅がたり」はA5サイズの冊子で200円、「もちもちのもち」はB5サイズの冊子で500円。100円で販売する電子書籍に購入が流れて紙の売れ行きが落ちるという懸念もありました。しかし、蓋を開けると紙の本は即売会での売れ行きがむしろ好調。そして、電子は2~3週間で累計販売数が双方とも紙書籍の発行部数を上回る…という思わぬ結果となりました

 

こちらが2冊の本の一ヶ月間のKindleでの販売数です。

 

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双方の本とも販売開始日の初動数が2桁という記録でしたが、…これは2012年より展開の「まるかふぇ電書」でははじめてのできごとでした。さらに、2日目以降の販売も好調を維持…ほぼ横ばい状態で1ヶ月間(徐々に変動幅が大きく、変動周期が長くなっていますが)いままでにない販売ピッチを記録しました。

 

ちなみに、「餅がたり」と「もちもちのもち」で販売数に2倍以上の落差が生じたのは電子書籍の登録ときの手違いのせいと思われます。「餅がたり」は2015年中に電子書籍データが揃い、年末から予約販売が開始されました(グラフのデータは予約数を差し引いた数値)。他方「もちもちのもち」はぎりぎりまで電子書籍データはそろわず、予約販売はできず、1月6日に事前登録したデータを手動で8日から販売開始という形になりました。

 

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このため「餅マンガ」企画のエントリーの中で「もちもちのもち」のみが1月6日付の記載になり、企画エントリー本として検索にひっかかりづらい状況が発生しました。

 

 

企画に参加した作家さんたちも全員また、この日の販売でいままでの電子書籍の記録を塗り替える結果を得た模様です。この初動数値の要因は「ネットでの情報の波及」だと思われます。まずは、企画を立てたのが電子書籍界では注目度が高い「きんどるどうでしょう」だったことは大きい。しかし、同サイトで作品を過去に紹介された作家さんたちもまた、今回は販売記録の塗り替えでした。

 

功を奏したのは「複数の作家」が「同時期」に「同企画」についての情報を発信した点にあると思われます。

 

個々の作家さんたちにはSNSやブログで個々のフォロワーの輪を保有しています。

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今回の企画はその作家たち全員のフォロワーに対して同時にアピールが行われ、企画への注目度をあげ、フォロワーの輪の外側にまで情報を広げる結果となったのでしょう。

 

作家さんたち漫画製作に掛かる長い期間中、「企画参加の決意」「漫画の製作過程」「企画エントリーの状況」「その後の販売状況」といった段階ごとにツイートしたりブログを書いたしていました。その繰り返し情報が「企画」の存在を周知させ、ネット上の話題となり、発売当日に大勢の読者を呼び込んで、大きな初動数を作り出したわけです。

 

参加した作家さんたちはこれで「ネット広報の威力」を再認識する結果となりました。

 

しかし、実は…

この企画がネット上で話題になっていたのは販売開始3日目くらいまで。それ以降は企画の参加作家さんたち販売状況報告以外でのネット上の取り沙汰はほとんでみられませんでした。

 

それなのに、その販売の影響はその後も1ヶ月間も維持されました。少なくとも、2週目でこれらの電子書籍を買われた方々はネットで「餅マンガ」企画の情報にその頃になって気づいて買ったとは考え難いです。これには別の要因が影響したと思われます。

 

おそらく2週目、3週目の時点で今回の「餅マンガ」の情報を読者に手渡したのは「Kindleそのもの」です。

 

Kindle電子書籍を読み終える際にはこんな画面が表示されます。

 

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本を読んだ印象を☆の数で入力する欄とオススメの図書情報が並んでいます。

 

評価の☆数を入力すると感想の記入欄が現れ、文章を記載するとアマゾン内の本のレビューに反映されますが、多くの読者は☆数をなにげなく入力してレビューは記載せずに閉じているでしょう。ところが、その際の☆数もアマゾンはデータとして蓄積している模様です。この画面に並ぶオススメ図書は、その蓄積データより推測される購入者が「次に購入しやすい本」のラインアップです。

 

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この「評価」と「オススメ」の連鎖が次の読者を生み、アマゾン全体の売り上げを増進させるわけです。

 

おそらく、1月8日前後に「餅マンガ」企画とは関係ない本を買われた読者が、後日この画面に到達し、買った日に販売好調だった「餅マンガ」のオススメ情報に接したのでしょう。そして、読んだ結果また好評価をつけて、オススメ情報を次の読者につないでいるわけです。

 

この連鎖に乗るにはそれなりの初動数が必要で、また連鎖の効果は初動数値に比例するものだと思われます。実際に「餅がたり」も「もちもちのもち」もこの連鎖の恩恵に預かれたようですが、初動の差がずっと維持されたことは上記のグラフから読み取れると思います。

 

以上より

Kindle電子書籍の購買を伸ばすにはまず「初動数値をあげる」ことが重要。そして、そのためには…「多くの作家が並行して同一の企画に参加して広報する」ことが有効な手段であることがお分かりになると思います。

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より、多くの作家が参加しやすい「電子書籍企画」を立てること、あるいは、そんな「企画」に参加することが、個々の作家さんがKindleで販売数を伸ばす近道となるわけです。

 

個人発信の電子書籍は何物にしばられず、自由気ままに発信できるのが大きな魅力ですが、たまには、他の作家と歩調を揃えた「企画」への参加も損はないと思われます。企画に参加して読者の目をひければ、すでに登録の他の電子図書にも手を伸ばす読者も増えます。

 

よければこの話を今後の電子書籍での活動の参考にしてみて下さい。

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